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ミサンガちゃんとの出会いが世界の〇〇を教えてくれた

なんだかんだ、もう4年間仲良くしてくれている友達がいる。彼女は、「ミサンガちゃん」。僕は彼女が大好きだ。

ミサンガちゃんは高校からの友達で、今は大学も同じ。彼女とは高校3年間同じクラスだった。クラスは6クラスあったから、偶然だとしたら、凄い。

…今思い出してみれば、高3のクラスに関しては、高2の時プチ不登校や自傷、拒食(拒食症ではない)などやらかした私に対し、教師からの配慮があったのかもしれない。

彼女と仲良くなったのは、そのプチ不登校から登校開始した頃の9月中旬で、学校は文化祭準備期間中だった。

クラスの“ワイワイ”に馴染めず、僕は教室の端っこでポツンと体育座りをしていた。クラスでアウェイなガリガリで根暗な女の子。そんな根暗女に、突然、その子は話しかけた。

「ミサンガつくろう」

なんでミサンガ?うちのクラスの文化祭の催しはカフェで、ミサンガは全く関係ない。

高1も同じクラスだったから、一応その子のことは知っていた。スポーツが得意なショートカットの明るい子。彼女は友達も多い。僕とは全然違うタイプだし、ほとんど話したことはない。むしろ少し苦手なタイプ。しかも謎のサボりの誘い。

呆然とする僕の顔は気にしない様子で、ミサンガちゃんは彼女の手をパーにした。水色や黄色が入った綺麗な1本のミサンガ。

僕はものづくりが好きだ。警戒心は解けないままだったが、そのミサンガを見た僕は内心少しわくわくして、「うん」と頷いた。

ミサンガちゃんは様々な色の糸を持ってきた。

「まずはこの中から4色選んでね。んー、うちももっかい作ろうかなー。何色にしよう」
僕はなんとなく、組み合わせのよさそうな紺、赤、白、ピンクの4色を選んだ。ミサンガちゃんはまだ迷っている。「まって!全然決まらんー」しばらくたって結局、オレンジなど暖色系4色を選んだようだ。

ミサンガちゃんは丁寧に作り方を教えてくれた。1度工程を覚えてしまえばあとは単なる作業の繰り返し。単純作業は僕にとって、周りを忘れて没頭できる楽しい行為だった。

隣でミサンガを編みながら、彼女は時々僕に話しかけてきた。

「文化祭準備めんどいねー」「うん」「編むのうまいねー!その色いい感じじゃん」「ありがとう」「うちさーこの前○○があったのよ、それでさ、そんときさー…」

気さくに話す彼女が、僕には不思議でうらやましい。ミサンガちゃんが話したことに対して、僕はなんと返せば良いのかわからない。無難な返事しかできなかったが、全く気にしない様子で話し続けてくれた。

そんなミサンガちゃんのマイペースさは、僕にはとっても心地よい。今まで「こうしなきゃだめだ」「こうするべきだ」という考えに縛られていた自分に気づいた。

知らず知らずのうちに警戒心も解けてきていて。

教室の隅、僕たち2人の周りだけ別の世界がある気がした。それは「クラスみんなが文化祭準備をする中、2人でミサンガを編んでサボる」という(正直)ろくでもない行為だったけれど、お互いだけの時間を共有していることが僕にとって嬉しかった。

ミサンガちゃんは友達が多いから、途中で僕らに「何してるの」と話しかける女子もいた。でも皆優しくて、咎めることは無く「かわいい!すごいね!」とか言ってくれた。一緒に隣でミサンガを編み出す子もいた。

プチ不登校だった僕はこの時、あぁ世界って僕が思ってたよりずっと優しいのかもしれないって。

ミサンガちゃんを通じて思えた。

その後僕が学校に徐々に行くようになったのも、クラスにミサンガちゃんがいたから。以降不登校は再発しなかった。

ミサンガちゃんが教えてくれた世界の優しさと、広さと、暖かい時間。

それらが詰まった1本の4色ミサンガが、僕の足首にあったから。

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