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てんぐのノイエ銀英伝語り:第32話 査問会~ド低能の裁判ごっこ開幕(なお魔術師はブチギレ)

査問会開幕(このド低能がーーーッ!)

 信じてもらえる自信は全くないんですが、この時点でも実は、同盟は戦略的には帝国よりも優位に立ってます
 なんでかって言えば、「自国の領土を戦火に晒す可能性」があるのは、一方的に帝国側だけで、同盟にはその危険はないんです。現時点においてはですが。
 では、アムリッツァでの大敗の後に内戦騒ぎ、しかもこれによって社会保障システムも政府と軍と市民で構成される三位一体の信頼関係も崩壊状態でありながら、なぜ同盟は優位に立ってられるか。
 それは、イゼルローン回廊という(これまた現時点においては)唯一の通行路を同盟が完全に掌握してるからです。
 では、どうやって回廊を掌握してるかと言えば、それはイゼルローン要塞を同盟が保持してるからで、その要塞を司令官として管理監督してるのがヤン提督で、そのヤン提督を同盟の安全保障をただ一ヶ所で担ってる最重要拠点から往復二ヶ月もかかる首都星まで呼び出して不在にしてくれたのが、ネグロポンティ国防委員長とノイエでは名前が省略されたエンリケなんとかオリベイラ学長ら査問会なわけです。

 もうこの時点で頭脳が間抜けすぎるんですが、その詰め方もアホすぎる。
 だって、「アルテミスの首飾りを全部吹き飛ばしたのなんで?」って、それヤン艦隊が首都を解放した後に報告書出して、とっくに説明してません? それを今さら蒸し返すって、この時点で「難癖付けて吊るし上げしたいだけ」ってのが、当のヤンにすら見透かされてるでしょ。

 この査問会に対しては、本当に、旧地球時代にイタリアにいたというギャングのように「このド低能がーーーッ!」と言いたくなります

 ……まあ、腐れ脳ミソでも良いですけどね。

 ちなみにこの査問会、ヤンやフレデリカは知らないようですが、シェーンコップら薔薇の騎士連隊の士官組は全員経験してたりします。
 以前に書いた薔薇の騎士に関する記事でも、ちょっと言及しております。

 シェーンコップが護衛部隊を自ら率いるなんて物騒なことを言い出したのも、それがあるからじゃないかなあ。

 ところで、ホワン・ルイ議員はなんでこの場にいるんでしょう?
 この人、人格的にはネグロポンティ水準とは思えないんですが、政治的な立場がよくわからないんですよねえ。党派的にはトリューニヒトと同じところに属してて、それで呼び出されちゃったのかな。

銀英世界のWhat if……?

 査問会のスタート時点では割と揶揄うモードでしたし、士官学校時代の成績をダシにされてたちょっと「もしもWhat if?」の世界を想像する余裕もありました。
 ちなみに、What if……?といえば、MCUでもアニメ作品にもなってます。てんぐはキルモンガー回とひとりっ子ソー回が好き。スターロード・ティ=チャラ回は、特別賞ってところかな。

 銀英世界のWhat ifがあったら、どんな感じになるのかなあ。
 例えば、職業軍人にならない代わりに歴史学徒となり、その後にクーデターを起こして市民派政治家ジェシカ・エドワーズを殺害した救国軍事会議に抵抗する運命を辿った「革命家ヤン・ウェンリー」がいる世界なんてのはどうかな。
 あとは、同じく軍人ではなく刺激を求めて決闘代理人やアウトローの道を選んじゃった「決闘者ロイエンタール」や、「フリードリヒ陛下はペドじゃねえんだよ!」という宮内庁職員の常識によって寵姫になる運命から逃れて大人になってから隣家のジークが徴兵され戦死した怒りから銀河そのものを覆すことを弟と誓約した「女元帥アンネローゼ」、核の炎が飛び交う13日戦争と植民惑星軍の復讐による大破壊によって怪獣惑星と化した地球へ潜入し生還した「探検者ユリアン・ミンツ」
 てんぐが思いつくのは、ざっとこのくらいかな。

魔術師ヤン、ついにガチギレ

 上記のように割と余裕な態度だったヤンですが、ネグロポンティがフレデリカのことを持ち出した瞬間に声のトーンが明らかにガチギレモードに入ってました。どのくらいかって、イゼルローン攻略時にゼークトの玉砕宣言を聞いたときと同レベル。めっちゃ怖かったですよ。
 この段階では、フレデリカに対して個人的な愛情があったのかどうかはユリアンやシェーンコップ同様ちょっと測りかねるところがありますが、それでも彼女の立場の危うさへの理解、そして自分が彼女の父を死に追いやったって自覚はあるでしょう。
 ユリアンはヤンに関して「内心を知られるのを嫌がる」と評してましたが、ではその嫌がることをされたらヤンはどうなるか。その回答を査問会はやっちゃったわけです。そして、ゼークトに対してもそうでしたが、魔術師ヤンは自分をガチギレさせたものは絶対に許さないですからね。
 ここから先のヤンは怖いぞー。

 ちなみに、これ以上のガチギレ領域は、「救国軍事会議のクーデターはローエングラム侯の差し金だって証言しろ」とバグダッシュ中佐に命じる前、入室を許す際の「入りたまえ」。この人はいだてんの田畑政治と同じく、「極限まで真剣にキレると口調が紳士的になる」ってタイプだと思ってるので、あれには心底震えましたよ。

ヤンのラインハルト政権評

 首都星へ向かう道中でのヤンのラインハルト独裁政権評については、「どうにも理屈先行になってないかな」とも思いました。
 ラインハルト政権による統治によって平民階層の多くは利益を得てますが、これは民衆の努力によって得られたものではありません。
 それこそ、ジョジョ5部のあのアバッキオの同僚の言葉をなぞるなら、ただ「結果」だけが上から与えられたもので、努力や譲歩による社会的なすり合わせという「過程」を経由した「真実に向かおうとする意志」によるものではないんです。

 こういう政治を「民主的」と言い切ってしまうヤンには、クーデター鎮定時から燻ってる同盟の現体制に対する絶望感はずっと残っているんでしょうか。でもこれって、「隣の芝生は青く見える」ってだけかもしれないんですけどね。
 彼の不在時に回廊に侵入したガイエスブルグ移動要塞の正面からの姿は、それこそLotRのサウロンの目を連想させられました。
 このサウロンの目じみた帝国軍の新兵器は、ラインハルト政権の銀河帝国とはどのような勢力であるか、ヤンが本音を言えば目を背けたい側面であるとも言えるかもしれません。

 ただ、その一方で、「これから先、ラインハルト政権を敵に回すということは、帝国人民250億すべてを敵に回すことになる」というヤンの懸念は、実にもっともな話です。
 同盟との戦争が本格化して100年以上が経ってはいますが、その帝国は貴族と平民と農奴の身分差や、あるいは貴族同士の確執などなどで常に分断されていました。太平洋戦争時の日本陸海軍じゃないですが、それこそ「他の派閥や勢力と相争い、余力をもって同盟と対峙する」といった有様だったでしょう。だから、総人口でいえば6割程度、しかも回廊を長らく抑えられ自国領土を戦場にされ続けてきた同盟が帝国と対峙できたわけです。

 でも、帝国が総人口250億人を完全に一致団結させるだけの、理念や利害関係を確立してしまったら?

 これはヤンにとっては、もはやWhat ifもしも?の領域ではなく、将来必ずそうなる事実です。
 それと対峙する事態への危機感は、流石は最前線に立つ名将と言えます。

声優ってすごいなあ

 キン肉マン完璧始祖編での宮野真守の演技が凄い、完全に「あのキン肉マン」の声だったって話は前にもいたしました。いや、本当に凄いんですよ、ラインハルトとは全く違う声になってました。

 今週の鈴村社長も、査問会でフレデリカのことを持ち出された瞬間に「この人、いま完璧にブチギレしてるぞ」って瞬間でわかる演技でした。

 で、早川書房から今日発売のファンタジー小説「フォース・ウィング」のPVのナレーションをしてる梶裕貴くんも凄いんですよ。
 聞いていただければわかりますが、ユリアン(平常時)とも、ジョジョの康一くんとも違う、低くて鋭い声でした。

 つくづく思いますが、声優って凄いんですよねえ。

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