立憲民主党は「社会安定勢力」としての単独政権を樹立させよう
兵庫県知事選の結果に対する上記の上久保氏の論考は、ネット左派の「民主主義の危機!」というヒステリックな叫びを鎮静させる役割がありました。
まあ、この論考を読んだ時点では、その兵庫県知事選にこんな展開が待ってるとは思ってもみませんでしたが。
都知事選や総選挙、アメリカ大統領選挙などの結果を受けて、「もう従来の電話掛けやポスティングなんて選挙戦術に効果はない! ネット社会に適応しよう!」なんて叫ぶ人もいます。でも、そのネット社会の声で選挙に勝ったとされる人の頭上に暗雲が早々に垂れ込めています。
そもそも、ネット社会の声なるものの危うさについては、多くの人が指摘するところです。そもそも構造的にネット社会は言論空間として危うさを持っているんです。特にSNSのような回転速度の速すぎる媒体では。
むしろ、その従来の選挙法の積み重ねで政治と社会を接続させる方が確実に生き残るのではないでしょうか。
というより、いま安易にネットでの選挙戦を唱える左派界隈って、実のところは現実社会とそこに暮らす大衆への傲慢かつ独善的な憎悪に陥ってるだけにしか見えないんだよなあ。
さて、上記の記事でてんぐが特に注目したいのが、末尾にあった「社会安定党」VS「デジタルイノベーショングループ」という対立構図です。
実のところ、いま普通選挙制に基づく議会政治を行う国々では、従来の左派右派、あるいは保守とリベラルといった対立軸から「社会安定勢力」と「イノベーター勢力」の対立軸に変化している、そう考えた方が実像に合致しているように思えます。
そして、アベノミクスの失敗による10年の痛手を受けた日本に必要なもの、政治と社会の結びつきを回復してその痛手を癒すことができるのは「イノベーター」ではなく「社会安定勢力」ではないでしょうか。
この「社会安定勢力」と「イノベーター」の対立軸を頭に入れて日本の政治報道を見ると、立憲民主党が、どんな世論の声に合致した政策を提示するなどしても、どうにもメディア受けしない理由にも説明がついてきます。
自民党は、安倍晋三という強烈なポピュリストを喪って以後は急速に求心力を喪い、石破政権下で連立体制を組む公明党ともども生き残ることに汲々としている有様です。とても「社会安定勢力」か「イノベーター勢力」かを自らに問える状況にありません。
また、全国知事会からの非難をよそに減税ポピュリズム路線をひた走る国民民主、相も変わらず「身を切る改革」を唱え続ける維新、そして極左のれいわ新選組、極右の参政党や日本保守党もまた、現状の社会を否定することが出発点となっている点で「イノベーター」です。では共産党はというと、まさに元祖「イノベーター」。ただし、党員や支持層の高齢化による党勢退潮は隠しようがありません。自己の生存が最優先課題とせざるを得ないという点では自公と何ら変わりません。
つまり、いまの日本政界で、明確に「社会安定勢力」と言えるのは、立憲民主党くらいしかありません。そして、メディアというものは、昔から「イノベーター」やそれに付随する表現が好きなものです。
例えば、スポーツ報道でも「攻撃的」とか「攻めの姿勢」いう表現が好まれます。
これらの表現と親和性の高い「イノベーター」という立場が生み出す「派手なドラマ」をメディアは欲しているし、だから「イノベーター」から最も遠い存在である「社会安定勢力」の立憲民主党を評価できない。
また、他の野党が全て「イノベーター」であることを捨てない以上は、首班指名投票であれ連立政権であれ、立憲がこれらを束ねることも不可能に近いです。
だからこそ、立憲民主党は、社会の分断を忌避し安定の回復を望むサイレントマジョリティの支持のもと、衆参ともに単独過半数を取った単独政権を樹立させる。かつて自民党が担った役割を、これからは立憲民主党こそが担う。これを大目標としましょう。