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「タンスターフル」という言葉の正しさ

 最近は立憲党内や支持層からも「税負担なく高福祉を」という安易で強固な減税論に流されてる人が増えてきて、ポピュリズムへの抵抗を求める身としては大変憂慮しておりました。それだけに、この声明を挙げた野田さんが代表選に勝って良かったと思います。まあ、枝野さんや泉さんが勝ってても同じことを言ったでしょう。はるみさんだとちょっとあやしいところはありますが。

 さて、この減税ポピュリズムの是非を論じる際に、てんぐが意識するのが「タンスターフル」という格言です。

 要するに、社会の中で受けられるサービスすべてには相応の代価が必要になるし、自分が代金を払ってる意識はないサービスであっても実は別の形で(大変細かくではあっても)支払っているということなんです。
 飲食品を例に挙げれば、ファミレスのドリンクバーなんかわかりやすいでしょうか。あれは、割安な価格でソフトドリンクを飲み放題ではあっても、実はその分の代価はセットで注文すべきメニューの代金に付加されているわけです。
 また、地上波民放テレビ番組の視聴もそうです。テレビ局にスポンサー料を払ってる企業の商品、日用品や乗用車、あるいは旅行やリゾートなどのサービス代を支払うことで、間接的にではあってもテレビ局に視聴者は代金を払ってます。

 こうして見ると、我々の社会において、本当の意味で無料のランチ=サービスというものは存在してないのがわかります。
 そして、この仕組みはそのまま社会や公共というものを、広く浅く集めることで維持するのが税金だとも言えるわけです。なので、税負担なく高福祉という論調は、端的に言えばワガママです。
 少なくとも、立憲民主党の理念からは、相反するものだと言えますし、党の理念や綱領を逸脱した発言や行動は、政党政治に対して不真面目だと申し上げます。

追記:タンスターフルとコンテンツ業界の特典商法

 この記事を書いてるときに頭によぎったのが、もう最近のコンテンツ業界ではお馴染みとなった、ソフト化に特典を付属させて購入意欲を高めるという特典商法でした。
 これも、タンスターフルの観点から見れば、「より多くの代金を支払った人には、より多くの満足と体験を与えられる」という適切なサービスとなります。旅客機のファーストクラスや客船の一等客室を利用できることが利用者間のステータスとなる、という構図が妥当であるのと同じようなものです。
 一方で、この商法に業界全体が依存することは、特典付きソフトまで手を出すくらいの特定層、狭い層のみに業界を買い支えさせることになるわけです。その点においては健全な、あるいは将来性のある商売とも言えません。また、肝心要の作品作りの方向性も、その特定の層ばかりを意識したものになり、より広い世間から乖離したものになってしまいます。そもそも、その層を構成するコアなファンたちがいつまで買い支えることができるのか、少数の割合が離脱したことで、残ったファンの買い支える負担は更に増大するのではないか。
 コンテンツ産業とは不特定多数を対象とした商売であり、この商売の王道はあくまで薄利多売、お客さんの数の多さこそが生命線です。
 特典商法とはあくまで、不景気の中で業界が生き延びていくための非常手段であるということは、忘れないでほしいものです。

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