てんぐのノイエ銀英伝語り:第42話 銀河帝国正統政府~ノイエ制作陣の空間把握能力が高すぎる
今週のノイエ銀英伝は、本当に楽しみにしてたというか、劇場で見た時も「こんなに地味な回なのに内容が濃すぎる!」と震えが走った回でした。
端的に言っちゃうと、ノイエのスタッフって、作劇的な意味での空間把握能力がべらぼうに高いんですよ。
ひとつひとつに意味を見出せる各シーンでのキャラクターの振る舞いや立ち位置もそうですが、もうひとつはイゼルローン要塞の立地環境の意味。
小野不由美が徳間文庫版の解説で提示した「ラインハルトかトリューニヒトか」というテーゼを連想させる、トリューニヒト議長の幼帝亡命(なお、ナレーターはついに“誘拐”と明言しちゃいました)と正統政府樹立宣言、そしてラインハルトの「歴史の反動勢力」に対する宣戦布告演説、それを等距離で聞くイゼルローン要塞は、まさにオーディンとハイネセンの狭間に立っているんです。地理的にも精神的にも。
そして、この狭間に立つ魔術師の城をホームとするヤンファミリーが、この後の歴史において果たす役割にまで思いを馳せると、ノイエスタッフの作劇的な空間把握能力には恐れ入ります。
それやこれやを改めて見て出てきた言葉が、「ここでグダグダ感想書いていても仕方ないな」でした。
なので、Tverのリンクを貼りますんで、まだ見てない人は今からでも見ましょう。幼帝誘拐と正統政府樹立による同盟社会に生じる分断やラインハルトが得たものの巨大さなどは、惰眠から目覚めたヤンがめっちゃシブい鈴村ボイスで過不足なく解説してくれています。
とまあ、ここで終わらせちゃっても良いんですが、それだとちょいと寂しいので、小ネタも少々拾っていきます。
イゼルローン要塞の日常あるいは平穏な日々
それこそ麻宮騎亜さんのサイレントメビウスの「日常あるいは平穏な日々」、あるいは速水螺旋人さんの作品(個人的には大砲とスタンプがノイエ銀英伝ファンにはオススメ)を彷彿とさせる、遅れてきた春眠をむさぼるイゼルローン要塞の面々、これもなかなか面白かったですね。
絶不調のヤン提督、それは論文でなくエッセイだ
いや、あの駄文を論文の書き出しだって言い張る時点で、ヤン提督が完全に絶不調であることがわかります。ちなみに、原作によると、ユリアンからのダメ出しを受けて開き直ったのか、司令部のデスクに私物の本を積み上げて勤務時間中の読みふけってるという状態になります。
もはや尻で椅子を磨くどころじゃありません。多分、背中に近い腰あたりで磨いてそうです。
というか、ここまでグダグダされてるのを見ると、「いっそハイキングにでも行かれたら?」と言いたくなりますね。
例えばそうだな、今なら鬼歿之地とかどうかな、オーベルシュタイン参謀長のガイドで。(絶対死にます)
で、司令官が「よく言って給料泥棒」(by.ポプランと死ぬほどこっぱずかしい朝のエンカウントをした不良中年)になってる間、司令部の事務処理は誰がやっとったかというと、「(ヤンに関する限り)怠惰を美徳の一種に数えかねない」と評判のフレデリカと、ヤン艦隊の“秩序”の体現者であるはずのムライ参謀長です。
ノイエ銀英伝で知る生きた英語
カスパー・リンツ画伯の似顔絵では、ムライ参謀長の顔には目鼻ではなく「秩序」とのみ書かれている、とは原作の記述にもありました。
で、銀英クラスタの間では、この「秩序」はLawまたはLawfulと解釈されてましたが、画伯の絵にあった単語はOrderでした。
そうかー、こういう時は、そっちの単語を使うんだー。
ちなみにそのMr.Order、アホと不良中年の朝のエンカウントについては「困ったものだ」で済ませて、正統政府承認演説の後の会議で始まった無言の酒盛りも咎めるどころか自分も酒を注いで酒瓶回してた節があります。Order is なに。
イゼルローン要塞のスポーツ新聞
外伝2巻「ユリアンのイゼルローン日記」によると、イゼルローン要塞在住の民間人の間で、独自の新聞を作ろうという声が上がったようです。
こういう動きは、イゼルローン要塞の独立した社会化の象徴ともなりそうですが、実際の紙面はスポーツ新聞的になりそうな感じがしますね。
ユリアンも活躍してるヤン・ファミリー各部署対抗のフライングボールリーグ戦の勝敗なんかは一面を飾りそうですし、ゴシップ記事なんかも割と事欠きそうにありません。というか、下手するとイゼスポまたはデイリーイゼの編集長って、アッテンボローが務めてたりしないかな。もともとアイツも記者志望だったし。
とまあ、今週は少し短めの銀英語りの時間でしたが、来週はついにユリアンに大きな転機が訪れます。放送時間が深夜2:25~2:55にスライドしますので、録画設定に注意しつつお楽しみに!