栞葉るりさんの誕生日に作った「推し短歌」のこと

先々月、VTuberの栞葉るりさんの誕生日に初めて「推し短歌」を作りました。
そこで、今更ながら個人的なアーカイブも兼ねて作歌のテーマや考えたことの備忘録をnoteに書き残しておくことにしました。
これが初めてのnoteなのであまり勝手が分かっていないのですが。

きっかけ

9月20日、にじさんじ所属VTuber(バーチャルライバー)である栞葉るりさんの誕生日を祝うために、有志の方が合作動画を企画、参加者を募集なさっていました。
この企画の中で、栞葉さんが古典文学がお好きな方というのもあってか、お祝いイラストやメッセージの他に短歌・俳句の募集というユニークな枠がありました。
(是非動画をご覧ください。動画やイラスト、メッセージ等どれも大変素敵な作品ばかりです)

https://youtu.be/7gjZqkHtxhQ?si=eSgExAKKgXJt045m

私自身は数年前から下手の横好きで短歌をちょっとした趣味にしていました。またVTuberをテーマとした短歌や詩歌作品をオンリーイベントなどで度々拝見していて、そういった作品への憧れもあったところでした。
そんなところへSNSで偶然この企画を知り、結果として、ファン目線で誰かのことをテーマに作歌する「推し短歌」に初めて挑戦する機会をいただきました。
ちなみに、推し短歌という呼び方はいくつかのnoteや以下の書籍に倣っています。

方針

どんな形式にしようか考えた結果、「栞葉さんに関するエピソードを並べた連作」と決めました。
連作というのは、複数の短歌をまとめて一連の物語のようにしたためた作品のことです。音楽でいうミニアルバムみたいなものです。
理由は色々ありますが、「誕生日のお祝い」という活動の総括的な短歌を一首にまとめる力量がなかったのが大きいです。代わりに連作でこれまでの足跡を描くことで、全体としてお祝いと応援になればと考えました。
大まかな方針としては、
・なるべく現代口語で。
・一首目は配信開始を、最後は配信の締めをテーマに。
・二首目以降は初期エピソードから最近のものへ大体時系列順に並べる。
・ネタはにじさんじファンなら知ってるかなくらいのライトさで。
とざっくり考えました。
そうやってあれこれ捏ねくり回して出来上がったものがこちらです。

画像はProcreateとイラレで作っています。

各短歌と考えたこと

第一首 麗かな言葉の波で明けていく電子の海の深い瑠璃色
配信冒頭の挨拶「ご機嫌麗しゅう」から。最後の歌に「栞」を入れることは決まっていたので、こちらには「るり」を入れました。コメントが流れる瑠璃色の待機画面から海を着想したつもりだったのですが、もしかすると寿司に引っ張られたのかも。

第二首 だしぬけにラピスラズリが導いてハングドマンの道連れになる
初配信にて自らをリスナーもろとも宙吊りにしたエピソードから。ラピスラズリは瑠璃のことで、身につける人に試練をもたらすとされるそうです。またタロットカードのハングドマンにも修行や試練といった意味があるらしいです。

第三首 焼き目とか甘いタレとか付け合って肩を寄せてるみたらし団子
同期ユニット「みたらし団」から。ただひたすら仲睦まじく微笑ましく可愛らしい情景にしたかったのでなるべく砕けた言葉選びにしました。無限にお互いを弄ったり甘やかしたりし合ってて欲しい、みたらし団。

第四首 幼子はポプラの枝のように手を月へ伸ばして兎に会った
デビューのきっかけとなった月ノ美兎委員長との遭遇からデビューして邂逅を果たすまで。バーチャル北の大地要素を取り入れたくてポプラを詠み込みました。

第五首 混沌のるつぼで拡声器を取れば秩序の声もまたさんざめく
「拡声器」「秩序」といった語彙を入れつつ、にじさんじで賑やかに活動する様子。るつぼの中で拡声器で喋ったら秩序も何もなくやかましそうだなっていう。「さんざめく」はにじさんじオリジナル曲「Wonder NeverLand」の歌詞から。

第六首 眼に宿る星も涙もリビドーも隠せないほど透き通る青
ブルーアーカイブから。ほぼ中盤なのでネタ枠寄りなのを置きたかった。「リビドー」に全てを託しました。あと栞葉さんの眼に星のようなハイライトがあることとも少しかけています。

第七首 現実と仮想が混ざり合う虹のふもとで友も兄も増えゆく
にじさんじスマブラ大会のエピソードから。これもネタ寄りです。もとより仮想(バーチャル)と現実(リアル)の狭間で活動するライバーに更に仮想の兄ができるという流れが面白かったです。「虹のふもとには宝が埋まっている」という言い伝えがあるそうで、不思議な縁を宝物に見立てました。

第八首 清らかに咲く藤花へ白百合へ上擦る声で誘う犬の子
枕草子(と百合)への造詣の深さから。"清"少納言と"藤"原定子(中宮定子)を詠み込む構成にしつつ「鼻が利くために人に知られていない花の在処を教えてくれる賢い犬」といった情景を詠みました。

第九首 行間を揺蕩うようなお喋りの中で世界は一冊の本
動画企画「行間ラジオ」から。個人的にこのラジオが栞葉さん発のコンテンツで一番好きかもしれないです。「世界は一冊の本」は同名の長田弘氏の詩にかけたものです。世界の様々な事柄に目を向け、味わい、楽しむ栞葉さんのラジオ企画にこの詩の情景と通じるものを感じました。

第十首 お話に続きがあるということの温かさごと栞をはさむ
配信終わりの挨拶「今日のお話はここまで。続きはまた次回」から。実はずいぶん前に作ってあった歌で、この歌をゴールに据えて他の九首を作りました。VTuberに限らず活動者が「続きあるよ」と言ってくれるのって嬉しいことです本当に。

感想

もっと詠みたかったテーマはあったのですが、私の技量ではこのあたりが限界でした。虫とか打ち首とか他ライバーや他箱のVTuberさんとの関わりとかも詠みたかった…。
推し短歌初挑戦でしたが、普通の作歌と勝手が違うというか、詠嘆の種類やアプローチの違いみたいなものを感じました。
あまりストレートに個人的な感動を出してしまうと読み手がオタクのテンションについていけないなとか。狭い界隈だけで伝わるある種の内輪ノリ的な描写や表現がむしろ活きるの面白いなとか。この辺のこともできたら後でメモしておきたい。
難しかったですが、そのぶん試行錯誤がとても楽しかったしまた挑戦してみたいです。
蓋を開けてみたら連作にしたのは私だけでした。恥…。
末尾にはなりますが、合作動画を企画してくださったやさい様、素敵な企画と挑戦の機会をくださりありがとうございました。
そして、今更ではありますが、改めて栞葉るりさんお誕生日おめでとうございます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?