イーハトヴ回想録 Ⅰ
あなたはどこから来たの
と訪ねてみれば
日本岩手縣ト答へ
透き通った風が吹き
光原社から花巻を通りすがって
相模国横浜ヘト吹キ抜ケル
降雪に怯える不安は不安を呼び
雪降る原野に立つものを でくのぼうと呼び
風は澱む
都人よ おぼつかない足元は雪のためではない
下を向いてばかり歩いては
野に咲く草や花に頭を垂れ
風の袂を仰ぎみれば
北上川にコハクチョウが往き
早池峰の優しく豊かな雪化粧
涙ぐむまなこは心象に宿る
小さな石ころに蹴躓いても
石っころとの睨めっこじゃ前に進めねんだ
石っころだってふだつどして同ずものはねんだ
いれんな石っこさそこらじゅうに在って道さできとるんだ
さういう道さ石っことゆっぐり歩いてると思えば
どごまでもどごまでも
お前が思ふより もぉっどひろぐ
この道さ続いてくんだべ
「いまやわれらは新しき道を行き
われらの
美をば
創らねばならない」と云ふ君
この道の彼方、
いつかの理想を心に刻む
February 6th 2024