火事 その2

 小学4年の時に、教室が火事になった。
 その日は、土曜日で午前中で授業は終わり。家で昼ご飯を食べてから、学校の校庭に集まって、みんなでサッカーをして遊んでいた。
 突然けたたましい消防車のサイレンの音がどんどん近づいて来た。みんなはサッカーを中断し、「火事だ、火事だ。」と騒ぎ出した。
 数台の消防車は、迷うことなく校門から入り、こっちに向かって直進して来た。今風に言うと、「はぁ?」「聞いてないよ~。」「どゆこと?」という感じ。
 振り向くと、2階の4年2組の我が教室の窓から煙が出ていた。「ええ~?」だった。
 何本ものホースから、窓を突き破り放水が始まった。みんな呆然と見上げていた。
「うちの教室じゃん。」
女子の中には泣いている子もいた。
 消火活動も空しく、教室はすべて焼けた。
 テレビの漏電が原因だったとのこと。次の日の、新聞の地方版に小さく載っていた。

 
悔しかったのは、途中だった工作のお面と祖母が縫ってくれた雑巾が燃えてしまったこと。それと自宅から持って行って飼育していた2羽の文鳥が犠牲になったことだった。
 私は工作が大の苦手だったが、どうしたわけかその時のお面は、快心の出来だった。色を塗れば完成だった。
 雑巾は、祖母が新品のタオルで縫ってくれた。薄い水色の肌触りの良い雑巾だった。使いやすいように、縫い目を走らせてあった。(大人になってから、私はそれを真似て雑巾を縫った。)
濡らすのがもったいなくて、からぶき用にしていた。それも燃えてしまった・・・。
 
 火事の後、生徒たちは4階の空き教室に移った。授業が終わると私は友達と燃えた教室を見に行くのが日課になった。
 大工さんたちが、修理をしている様子を眺めるのがおもしろかった。何日経っても、独特の焦げ臭さが残っていたのを覚えている。
 あの教室は、今も使われているんだろうか・・・。
 
 




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?