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奥信濃への道 第24走:道は続くよ、どこまでも

頭に手を伸ばし手探りでヘッデン(頭部につける前照灯)のスイッチを押すとLEDの無機質な白い灯が足元の先を照らす。ここからはこれが頼り。
エイドを出て少しばかりのアスファルトの下り、その先には最後のトレイルが待っている。平坦貴重と軽い登りの組み合わせなので、下りで崩壊した脚には優しいのがせめてもの救いである。
少し前を走るランナーの背中に光る尾灯に吸い寄せられるように、自身も足元を照らす白い光を頼りに先を急ぐ。辺りの日は落ち木々の間から空を見れば濃いグレー、足元は真っ暗。行きと同じ道を通っているはずなのだがもはや別世界で周りの景色もよく見えない。

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同じようなトレイルに着いた轍が、右へ左へ先に伸びているのを眺めながら走っていると、一定のペース、一定の息遣い、一定のリズムになり感覚が段々とボヤけてくる。「無」である。
同じところをグルグルと回っている錯覚に陥りながらも少しずつゴールに向かっている事は腕につけたGARMINの数字だけが教えてくれる。
残り1kmの看板を過ぎると突如目の前がパッと開けスキーのジャンプ台が現れる。行きに見た覚えのある景色と一致すると一気に意識の解像度が上がり、感覚が鮮明になってくる。
スキーゲレンデの下まで行くとゴール地点が煌々と夜空をバックに輝いて遠くにmcの声が響いてくる

還ってきた。

安堵と達成感が自身を包み、しばらくの間は辛かった部分の記憶は飛び、安堵が全てを支配した。

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ゴールへの景色を写真に収めようと立ち止まり、スマホを取り出しシャッターを切る。その隙に1人に抜かれたがタイムや順位はどうでも良い、自分に科した課題に対しやり遂げれたと言う気持ちが全てだった。

拍手とmcにゼッケンを読み上げられゲートをくぐる。感動というよりは安堵と達成感、ここ最近味わった事が覚えがないぐらいには久しい感覚だった。
ここ数か月取り組んできた自分にとっては少し未知な領域への挑戦、絶えず不安が付き纏い怪我や不調もあったけど終わってみればあっという間、楽しい機会になった。

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今年の奥信濃の道はこれでゴールだが、まだ道は続いていく。

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