299は燃えているか
関東甲信越界隈のサイクリストであれば一度は聞いたことがあるであろう、国道299号線。上信越と中央道に挟まれた高速道路・鉄道空白地帯である奥秩父周辺一帯を東西に貫抜いている。
埼玉県入間市から長野県茅野市まで伸びる所謂3桁国道であり、著名な所謂酷道(こくどう)である。
そんな道を「自転車で走破しよう」と単純明快な気持ちで始まった飯能のサイクルショップMIKAMI主催イベントがATTACK!299である。
国道走破というチャレンジは元来擦られきったネタに違いはないが、前述の通り高速・鉄道空白地帯ということで容易に想像できるであろう山岳道路であり、299号線には逃げられない4つの難関峠が存在し詳細は以下の通り。
山伏峠 距離4.3km 獲得標高298m
志賀坂峠 距離6.2km 獲得標高341m
十石峠 距離38.4km 獲得標高1033m
麦草峠 距離26km 獲得標高1342m
この通り尋常ではない峠を備えている屈指の山岳国道なのは言うまでもない。当然、関東圏のサイクリストは一度は脚を運んでいるとは思うのだが、私もついに脚を伸ばした。
深夜2時30分に入間市を出発し雨の降る山伏峠を下り、奥秩父へ脚を踏み入れるわけだがとにかく眠い。
前日に野暮用でバタバタしてしまい仮眠が1時間しか取れない中での挑戦だけに眠気のピークが朝方にやってきてしまったのだ。
しかも淡々と緩斜面が続く志賀坂峠へのアプローチは、当日で一番眠気に襲われ、オーバーナイトライドをデフォで行うブルベライダーの人外感を身を以て体験することになる。
マジで谷底に居眠りで落ちても不思議ではない。
まったくもって登りというのは私には苦手な場所であり、精神修行の場である。しかしながらこの日は3名の仲間とチームで参加していたため、これほど心強いものはない。
距離が国内屈指のヒルクライムコースである乗鞍や美ヶ原に匹敵する距離を携えている道のりでも耐えれるのは、チームメンバーのおかげだ。
容易ではない170km3500mUPの道のりだったが、猛暑になることもなく比較的爽やかな気温の中で走れたこともあり、個人的には最高なライドとなった。
幻想的な靄がかった峠を登り、決して景観が良いわけではないが、登ってきた証拠は脚への乳酸となり自身の体に刻まれていく。
そして幸運にも最後の麦草峠では晴天も垣間見え、これほどまでに気持ち良いライドも久々であった。
距離だけで言ってしまえば私の最長記録は420km/日であるがために、距離的には短いかもしれない、だが知らぬ山岳地を抜けていく感覚は、心細さと期待感が入り混じる、一級国道トレースとは全く違う刺激に満ち溢れていた。
あまり人が立ち寄らない場所に惹かれた道、決して一桁国道や高速道路、鉄道が引かれるような、人が行き来する表ではないのかもしれない。しかし地図に引かれた線は確実に存在する。
点と点が線で繋がる瞬間はいつだって昂ぶるものだ、人力で到達した先にある気持ちはいつだって燃えている。
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