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奥信濃への道 第1走:マツダからの知らせ

突然の出来事だった。
年末に久々に会ったマツダは酒も少々入り気分が良くなった雰囲気の中、迫りくる2022年に向けての目標を突然その口から放った。

「奥信濃トレイルレースに出ませんか?」

奥信濃100、それは長野県でも北部、新潟県との県境近くに鎮座する木島平スキー場を中心とした一帯を舞台にしたトレイルランニングイベントである。
ランニングは多少とも嗜んでいる私の事を知ってか、トレイルランニングを主戦場とするマツダは気軽に誘いの言葉をかけてきたのだ。私は過去に経験のない走行距離50kmという距離に圧倒されその場では「うーん気が向いたら」と正月の甘酒の温度のような煮え切らない酒ならぬお茶を濁し誤魔化したのは私の悪い癖だ、そして年が明けた。

年が明けシクロクロスシーズン真っ只中という事もあり、ランニングにはうつつを抜かしていた私はすっかりと”奥信濃100”の存在を忘れていた。

しかしマツダは忘れていなかった、エントリー終了直前の2/26の18時に一通のLINEが飛んできた。

奥信濃のトレランどうします?

戦慄が走った。完全に失念していた私にとって再び大きく目の前に立ちはだかる壁、それは紛れもなく山の中を50kmも走り回るのは狂気の沙汰だ。そんなものは達人や超人がやる事だという範疇を超えないではないか。
しかし客観的に今の自分を見返してみろ。
自分は最近、会社の立場的にも「挑戦してみろ、チャレンジ精神だ。」なんて口触りの良いが、聞き手は全く理解できないであろう昭和のメンタルの様な事を言う代わりに、自身は挑戦と言う挑戦もしていなければ、目の前にあるものを片付けて満足しているだけじゃないのか?これはマツダから自分に対しての福音ではないのか?
とはいえLINEのTLでは改めて見ても見苦しい私の葛藤リプがマツダに飛んでいるのだが。

やるだけやってダメならダメでしょうがない。という甘い線を自分の中に残しつつ承諾し奥信濃を目指すことしよう。
このテキストを書いている時点で私の脚は完全になまっている、未だ奥信濃に向き合っていないこの身体を3か月でどうにか仕上げていこう。

そして私はそっとエントリーのボタンをクリックしたのであったが次の画面に出てくる”SNSでエントリーしたことをシェアしよう”のボタンは押せなかった。

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