赤子に見られる
自分の話をします。
まずキャラクターっぽい外見をしている。だいたい3頭身で頭も目も大きい。赤子からよく見られるのもそのせいで、きっとアンパンマンとかドラえもんと同じジャンルなんだと思う。
しかも見られるだけではない。
笑われるのだ。
たとえばスーパーの入口でお母さんにおんぶされた赤子と目が合う。十数分後にレジ付近で同じ赤子と目が合う。赤子の目はこう語っている。
「え、またおまえ?」
そして笑いだすのだ。あるいはいままで泣きじゃくっていた赤子がわたしを見たとたん泣き止むことも多い。泣き止んでやはり笑いだすのだ。なんだこれは。一種の才能かもしれない。
ここ2年はその才能が爆発し、電車や街中ですれちがうすべての赤子に見られている。マスクのせいだ。顔が隠れれば赤子にも見られなくなるだろうと思っていたがちがった。マスクで顔の情報量が落ち「フォルム」「目の大きさ」が際立ってむしろこれまで以上に見られる。いや正確な理由はわからないが、少なくとも見られる側の感覚ではそんな気がする。
むろんわたしがどんな気になろうと事態は変わらない。来る日も来る日も赤子に見られ、笑われ続けるだけだ。そしてそれは、誰よりも赤子の笑顔を見ることができる日々とも言える。
幸せなことかもしれない。
赤子のみなさんありがとう。
(赤子に見られる/Rosemary's Baby)