着地する 毀れるよりもやや早く/栫伸太郎

シリーズ・現代川柳と短文NEO/157

 海外生活の長さを言い訳にしたくはないが、恥ずかしながら漢字の読みがわからないことが多々あり、なにも言わず静かに調べはするが、それでもやはりわからない場合がある。ひとつの漢字に読みが複数あって絞りきれない場合だ。文脈からの推測もむずかしいとき、その句は、わたしの中で、地上七〇センチあたりにふわりと浮かぶように存在するだろう。この漢字、なんなんだ。いったいどう読むんだ。ん、ひょっとして、作者も決めていないのではないか。つまり、決定を保留され、宙づりのままにされた句である。いや、べつにこの句がそうと決めつけたくはない。保留したい。ただ、そうした効果を有効利用した句も存在するはずだ。どこかに。海外とかに。

【きょうの現代川柳】
着地する 毀れるよりもやや早く
/栫伸太郎

▼出典



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