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【文字で味わう】ラジオポトフ句会・1

なんだなんだ

というわけで、Ptf.110にて、現代川柳の句会を開催しました。参加者は現代川柳ど素人のラジオポトフの2名。まったくのてさぐりで行った白帯記録をここに文字でアーカイブさせていただきます。

▲本編はこちらから聴けます。

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いちおうルール

お題は今田が独断で定めた「ガムテープ」「英語」「音楽」の3つ。それぞれについて今田・高澤が1句ずつ持ち寄り、フリートーク形式で解釈を加えました。その再録がいまお読みの記事です。なお、音律は575のみとしました(なにせ初心者すぎるので指針を作るため自由を制限)。使用したビートはこちらのサイトに

開催時点での理解

現代川柳とは「サラリーマン川柳」や「シルバー川柳からもっとも遠い位置にある(主に)575のたくらみ。季語(をはじめとする短詩の教養)が必須でなく、ふざけてよく、句を読むことと同等かそれ以上に「解釈すること」が重要視されている。インターネットを介した表現もさかんで、近年は暮田真名(くれだまな)さんの活躍がめざましい。

という。これが事実の正確な把握という保証はありません。では、やっていきます。

題:ガムテープ

かもめの子接着してよくすりゆび

今田:かもめの子に薬指は無いので、おそらく人間の子が言っている。『小さな恋のメロディ』のイメージ。幼い少年少女の逃避行(観てない)。結婚指輪を交わすように薬指同士をガムテープで接着してくれとかもめに頼んでいる
高澤:ロマンスな解釈
今田:解釈は自分の価値観と向き合う行為。ぼくの場合はどうしてもロマンチストな部分が出る
高澤:リアリストでは?
今田:リアリストはいちばんのロマンチスト
高澤:作者的には、かもめは遠くを飛んでいるイメージ。視点人物とは距離がある
今田:距離の表現。つまり、かもめ=ここではないどこか。あるいは(岩崎)う大さんをかもめの親として、槙尾(ユウスケ)さんがかもめの子ということもあるかもしれない
高澤:ない
今田:ぼくもないと思う
高澤:「ガムテープ」を含んだ句も考えたが……
今田:それこそ「はがした」と。なるほどそういうふうに言えばいいのか。「これは貼ってあったガムテープをはがした句」と。現代川柳の解釈、集中を切らさないようにしたい

ガムテープ由来の罪が後を引く

今田:対して、これはガムテープ貼ったままの句
高澤:時間を経たガムテープが接着面に跡を残すイメージと重なる。古傷が痛むかんじもある
今田:いまのガムテープは粘着力すごいらしい
高澤:(美術の)作品展示でガムテープはあまり使わない。多用するのはクリアテープ?的なあれ
今田:クラフト(紙のガムテープ)は弱い。布ガム(テープ)がいい。手で切れるし。ぼくたち舞台をやりますから、これまでどのくらい布ガムを手で切ったてきたかわからないですね
高澤:貼った跡が取れないというイメージが「罪」と重なる
今田:「はがせないガムテープの跡は、壁にも、ぼくの心にも残ってしまった」みたいな?
高澤:(今田の句は)画が浮かぶ。場面というか
今田:脚本家はシーンを作る仕事なので
高澤:その点、わたしは風景とかイメージが
今田:つまり「未完成」と
高澤:鑑賞者の心の中で完成するもの
今田:つまり「未熟に過ぎる」と
高澤:「味わいがい」がある
今田:どこを着地点に定めるかで評価軸も変わるだろう。味わい方次第。それはあたかもプリズムが自然光を反射するようで(というありふれ表現)

題:英語

ガス漏れを英語で聞いた子供部屋

高澤:タイムリミット感ある
今田:「子供部屋」は、大人からすると立場的にも時間的にも距離を含んだ言葉。そもそも共通概念としての子供部屋ってあるのか
高澤:あたしんち(高澤の実家)は子供だけの子供部屋は無かった
今田:ガス感知のセンサーの機械音声が英語ってことかな。留学時の思い出かも。ホストファミリーのこどもがかつて使ってた狭い部屋に押し込まれ、そこでガスが漏れたとか。となるとつらい思い出

西日さすできたて鰻ざくバイザウェイ

今田:うまくいかなさの象徴としての鰻(う)ざくだと思う。タレと白米で食べたかった鰻が「ざくられていた」ことへの落胆と、そこからの切り替えバイザウェイ。側道にぴったり伸びるうなぎとかいいね。思い出はいつも夕日。朝に失敗することもあるが、朝の出来事として思い返すことは少ない。西日はほのぼのしたイメージが強いのでぼくなら「茜さす」を選ぶ。そのへんロマンチストたるゆえん
高澤:西日は『あたしンち』のイメージ
今田:は?
高澤:ちょっと乱暴か
今田:かなりすっ飛ばした意見だと思う。ただ『あたしンち3D』は飛び出していておもしろかった

題:音楽

黒いあれ垂れているのに聞こえない

今田:四分休符のイメージ
高澤:ピアノを10年やっていたがわからない
今田:嘘をつくな。10年やっていたらわかる
高澤:(検索し)ああこれか
今田:窓についた雨のしずくが「垂れている」みたいに見えませんか。「黒い」し、休符だから「聞こえない」し
高澤:イメージの引きだし方すごい。(解釈が)今田さんのリテラシーありきになってる
今田:やっぱり学歴がものを言いますよね
高澤:ほんとうにそう思っているのか。句会をやってわかったことが「学歴ですね」でいいのか

五線譜についたあだながほぼ未来

今田:楽譜はこれからの演奏の完成予想図
高澤:いや、完成した音の図示
今田:それは音楽をやらない人の意見。起きたことを書き留めたメモだが、これから起きることを書いた未来日記でもある。つまり五線譜=ほぼ未来
高澤:解釈が簡潔すぎる。もっといろいろ分岐した読みがほしいかも
今田:それは味わう側の仕事では?
高澤:ほぼ未来。つまり、読んでいる側にもある程度見えているような未来……え、どういう状態?
今田:「五線譜」がすでにあだなの可能性も
高澤:五線譜さんにつけられたあだな。そのあだなを「未来だね」と言われるまでの一連の時間の流れを表した句?
今田:それは自明。あっ、小学校の算数の時間におふろの水温上昇のグラフを見て気づいたことを問われて「どんどん上がっている」と言ったら「当たり前だ」と切り捨てられたことがフラッシュバックした。あのとき先生がしたことと同じことを高澤さんにしてしまった。でもそれくらい自明
高澤:わたしは「一連のシーンが見えた」と言っている。それを575まで削ぎ落としたのかな、と
今田:要は「撮られていない映画のあらすじのような」575。こういうロマンチックな表現がさらっと出てくるのがロマンチストたるゆえん
高澤:自明だ、ではやはり簡略化が過ぎる。たくさんのイメージを出し、それを言語化するプロセスを楽しみたいので、簡略化して「それはこうだ」と切り捨てるのはちがう気がする
今田:いまは高澤さんの解釈のひとつを「こういうことに過ぎない」と言っただけ。現代川柳の解釈行為じたいを貧しいと言ったのではなく、「なかには貧しい解釈もある」と言っただけだし、こんなギスギスするために現代川柳はあるのか

やってみてわかったこと

お題について

高澤:お題はなぜこの3つに?
今田:てきとう。いちおう具体的なものと抽象的なものなものが3つバラけるようにはした(ガムテープ、英語、音楽)

解釈とは

高澤:自分で詠んだ句にもかかわらず、もう一回改めて解釈しようとしているのがおもしろかった
今田:すばらしい。それを味わってほしくてお集まりいただいた。もっと言うと人の句が自分の句のように思えてきたりもすると思う。解釈とはすなわち自分の価値観と向き合うことで、しぜん自己との対話になってくる。その途上で「自分の句が自分の句じゃないみたいだ!」とか「他人の句が自分の句みたいだ!」と思う瞬間がある。う〜ん、ぼく現代川柳(の解釈、鑑賞)むいてるかも。自分に「うそっぱち家庭教師」みたいな部分があるから。真摯な読み、誠実な読みがあってこそだけど、すくなくともぼくの場合、ふざけとか無意味化とかの(中身が伴わないないはりぼて感をわざと押し出すような)方向に行く。
高澤:でもブレストみたいでいいですよね
今田:そうね。ブレストは(最終的には)意味のあることを目指していくが、これは、意味の無いブレストと言えますね。言えますかね?
高澤:句から受けたもの、見えた状況、シーンみたいなものをとりあえず出していくみたいなかんじ
今田:てことは、合コンでやるといいね
高澤:おしゃべりを通じて価値観が見えてくるという意味ではありかも
今田:現代川柳は合コンのために生み出された
高澤:そんなことはない
今田:ぼくもないと思う

おわりです。まだでしたらぜひ音声でも聴いてみてください。下記から直接再生できます。各句をビートに乗せて口ずさむ謎のBGMなど、楽しいムードのひとときとなっています。感想もぜひ。



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