輪唱のように寝るのが遅くなる④/栫伸太郎

シリーズ・現代川柳と短文NEO/194

 きのう眠るのが遅かったのか、ひさしぶりに会った恋人はとても眠そうだった。たしか最後に会ったときはその寝顔にむかって別れを告げたように思う。たしかその前に会ったときも、その前の前に会ったときも、さよならは寝顔に言うものだったから、思えば、そのさよならに返事をもらったことはなかった。と、音が止まった。しばらくして、レコードの針はまた盤面に落ちる。

【きょうの現代川柳】
輪唱のように寝るのが遅くなる
/栫伸太郎

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