生きがいのない小上がりでしょう/暮田真名
シリーズ・現代川柳と短文NEO/338
小上がりはまさに小さく上がった部分だ。和食系の飲食店でよく見たり、居宅でも、たとえば広めのリビングに設けられたりする。床から何段か上がった一画。まるで舞台のようだ。小上がりにいる本人たちに自覚はないだろうが、かれらはそこにいるあいだ、日常というタイトルの演劇作品を演じる役者である。演劇を限界まで磨き上げると台本がなくなる。ただ、タイトルは残る。
【きょうの現代川柳】
生きがいのない小上がりでしょう
/暮田真名
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