茶運びの人形だった(んだおれは)/今田健太郎
シリーズ・現代川柳と短文NEO/164
ここにきわめて精巧精密なからくり人形があるとして、その人形じたいを褒めるか、その人形の作者を褒めるか。この選択でそれ以降の景色はかなり変わってくる。即決はむり。慎重に慎重に慎重に。むろん長考。と、そこにかたかたと茶運び人形がやってくる。抱えた盆には日本茶の入った湯呑みが。手に取り、飲み干し、盆に戻す。すると茶運び人形は、かたかたと来た道を戻っていった。すごい。だって、江戸のやつなのに。めちゃくちゃすごい。これ、人形がすごいのか、作者がすごいのか。そしてまた長考に入る。かたかたと茶運び人形がやってくる音がする。
【きょうの現代川柳】
茶運びの人形だった(んだおれは)
/今田健太郎
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