あなたにも浮き輪あげたい 聞こえない/暮田真名

シリーズ・現代川柳と短文NEO/237

 もう何年も連絡をとっていない親戚に、やたらと他人にものをあげてしまう者がいた。本や服ならまだわかるが、それにとどまらなかった。聞けば、この人になにかあげたい、と思うときがあるのだという。あげたい人、がいるのではなく、あげたいとき、があるのだと。こどものころその親戚に連れられプールに行った。ものをもらったわけではないが、浮き輪を膨らませてくれた。親戚の息が吹き込まれた浮き輪は水面に浮いた。

【きょうの現代川柳】
あなたにも浮き輪あげたい 聞こえない
/暮田真名

▼出典



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