二言目にはトリニダード・トバゴ/栫伸太郎
シリーズ・現代川柳と短文NEO/309
こちらに猟銃を向けたままで男はしゃべりつづけた。たとえ馬鹿のひとつ覚えだとしても夢中になれるものがあるのはいいことだ。男は、その国にはトリニダード島とトバゴ島があるという地理を、あるいはその国がヨーロッパの国々に代わる代わる支配されてきたという歴史を、なによりその国が青山テルマの祖父の出身地であるという秘話を、しゃべりつづけた。わたしたちはただ聞きつづけるしかなかった。怯えているのか寒さからなのか、テルマは震えていた。おれは親鳥が卵をあたためるときのようにその手をにぎった。
【きょうの現代川柳】
二言目にはトリニダード・トバゴ
/栫伸太郎
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