ながい目でみればごううのえかきうた/栫伸太郎

シリーズ・現代川柳と短文NEO/147

 西山くん、ほんと雨男だよねえ。着心地がしっくりこないのか、慣れない浴衣をあちこち伸ばすように触れながら雫は言った。花火大会の観衆たちはいま、大輪の花が描かれるはずだった空をうらめしそうに眺めている。傘は、持っている人のほうが少ない。緑の首輪をつけた犬が狂ったように雨と戯れはしゃいでいる。雨男ね。たしかに前にも似たようなことがあった気がする。雫と。浴衣と。花火大会と。雨と。ぼくと。犬と。

【きょうの現代川柳】
ながい目でみればごううのえかきうた
/栫伸太郎

▼出典



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