あきらかに豆腐の角によろめいて/暮田真名

シリーズ・現代川柳と短文NEO/213

 まず、豆腐の角に頭をぶつけて死ね、という言いまわしがあり、その時点では虚構はまだ虚構として扱われていたが、豆腐の角に、それも「あきらかに」よろめく者の登場は、その虚構に足をとられることが可能であるかのように感じさせたものだ、と教授が言ったとき、そのよろめく者とは教授ご自身ではないのですか、と質問しなかったことをいまでもわたしは悔やんでいて、豆腐を見るたびため息をつく。この国では豆腐は年じゅう食卓に上るんですね、教授。

【きょうの現代川柳】
あきらかに豆腐の角によろめいて
/暮田真名

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