ぬすまれた自転車だった(んだわたし)/今田健太郎
シリーズ・現代川柳と短文NEO/162
天啓と呼ぶほどおおげさではなく、しかし思いつきと呼ぶほどどうでもでもよくはないことだった。道を歩いていて、ある横断歩道にさしかかったときに頭をよぎった、あるひとつのこと。といっても、その横断歩道とはなんの関係もない内容だった。たまたまだよ。すべてはたまたまそうなっているだけなんだ。わたしは、あのとき盗まれた自転車だったんだ。
【きょうの現代川柳】
ぬすまれた自転車だった(んだわたし)
/今田健太郎
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