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【#16】国境を越えて響く中波放送は、まだまだ現役!(その1)

こんにちは、ラジオと地理です。
ところで、ラジオ好きの方でしたら中波(AM/MW)放送が世界的に減少傾向であることは、どこかで見聞きされたと思います。

確かに減ってはいるけど・・・

実際に欧州では全廃した国があって、中波帯は何も聞こえないことが「珍事」ではなくなり、「いつもの光景」となりつつありますね。
しかしながら、中波局はきれいサッパリ無くなるのか?と言うと(縮小は続きますが)そんなことはありません。
かなり地域差があって欧州は前述の通りですが、その一方でアジアや南北アメリカ大陸では、まだまだ多くの局がオンエアしています。
何を言いたい(書きたい)のか?と申しますと、情報が断片的に伝わっては来るものの、単発のニュースだけで「コリャ全廃されるぞ!」とか「氷山の一角だな!」と考えるのは、早計だと感じるのです。
大きな流れから俯瞰して「実際はどうなの?」「将来どうなるの?」といった、いわば大局観に基づいた言及が(特に日本語で)少ない気がしてならないのです。
そこで今後、何回かこの辺を取り上げて参ります。

国内でも中波局の停波は始まっている

ちなみに国内は昨年(2024年)から「AM局の運用休止に係る特例措置」として、国内民放中波47社のうち、13社が全部または一部の中波送信を止める「実証実験」を行っています。
(参考 総務省の関連するサイト)

(参考 山口放送の中波停止に関しての記事)

今年の9月からは第二回目の実験が予定されており、一回目より多くの民放中波各社の参加、送信局が停波する可能性があります。

中波が既に無い国は?

中波の世界的な状況を語るには、やはり欧州を避けて話は進められませんので、まずは国ごとに整理してみましょう。
調べてみましたが、国営/公営局が中波から撤退し、それ以外の局が僅かに残っている or 撤退している国と、時期、人口規模を列挙すると次のようですが、いわゆる小国は含めていません。

<国名、およその時期、ざっくりの人口規模> 14か国
フィンランド(2005年) 560万人
オーストリア(2008年) 900万人
スイス   (2010年) 870万人
アイルランド(2012年) 515万人
アイスランド(2012年) 35万人
リトアニア (2013年) 280万人
ドイツ   (2015年) 8300万人
フランス  (2015年) 6600万人
スウェーデン(2015年) 1050万人
ベラルーシ (2016年) 950万人
ルクセンブルク(2016年) 64万人
アルバニア (2017年) 750万人
ノルウェー (2017年) 540万人
ベルギー  (2018年) 1170万人

ドイツとフランスを除き、人口が1千万人前後以下の国が多いようですね。
逆に僅かでもまだ残っているのは、次の通りでした。(24か国)
英国、スペイン、ポルトガル、オランダ、イタリア、スロバキア、デンマーク、チェコ、ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、ギリシャ、エストニア、ラトビア、ウクライナ、モルドバ、ロシア、だいたいの旧ユーゴスラビア各国(7か国)

毎年英国で刊行されている「Radio Listener's Guide (最新版)」を参考としました

主たる理由は?

教科書的ではありますが、背景として次の点が出てきました。
【デジタル化の進展】
放送技術がデジタル化(DAB、衛星、ネット)へ移行する中、中波放送の必要性が相対的に下がった。
(とは言え、既にDABも本放送開始から30年が経過し、既に設計思想が古いとの指摘は多いのですが・・・)
【特に若い世代の聴取率の低下】
ポッドキャストやストリーミングといった、新形式のメディア利用が増加し、結果中波の聴取者が減少し、放送局の運営にかかるコストが合わない。
【コストの問題】
(日本も同じですが)中波の送信機やインフラ整備に多額の費用が必要で、消費電力も大きいため維持費も高い。
【国策による支援が減少】
国策により、アナログ放送に対する当局の支援が打ち切られた。

なお、DABについては次の記事をご参照下さい

まずは欧州の概略について書いて参りましたが、次回はもう一段階踏み込んで、他の背景について考えてみたいと思います。




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