陸上無線技術士での教員免許取得
はじめに
前置きが長くなってしまったので、結論を先に言いますと、第一級陸上無線技術士の資格で中学校二種(職業)と高等学校一種(工業)の教員免許が取得できます。
さて、小中高等学校で教鞭をとるには、教員免許が必要です。たいていは、大学の教職課程を履修して取得しますが、例外的に他の資格で取得できる場合があります。
この例外の法律の立てつけはやや複雑で、教職員免許法施行法第二条によって、「免許法第六条第一項の規定による教育職員検定」を経て「免許状の授与を受けることができる」ものとして、陸上無線技術士や海技士が挙げられています。また、取得できる教員免許の教科は「文部科学省令で定める基準に従い、都道府県の教育委員会規則で定める」とされています。神奈川県では「教育職員免許法及び教育職員免許法施行法施行細則」で定められていました。
なお、ここに出てくる教職員免許法施行法と教職員免許法は別の法律です。余談ではありますが、免許権者である県教育委員会からの回答でも、この2つの法律の混同が見られました。また、教育職員検定は教員資格認定試験とは関係のない別の手続きです。
この、教職員免許法施行法第二条による教員免許の取得については、特殊なケースとして、教育委員会等のホームページに掲載されることはまずなく、問い合わせを促すような案内すらありません。そこで、私が教員免許を取得するまでの経過をここに紹介します。
都道府県教育委員会への問い合わせ
前項で述べたように、教員免許の取得手続きが公開されていないので、免許権者である、都道府県の教育委員会に手続きの内容を問い合わせるしかありません。
このときのポイントは「法的根拠」と「所有資格」です。教育委員会の担当者が知らないということはないと思いますが、かなりマイナーな手続きなので、法的根拠を明確にしておくと細かい説明を省略できます。また、所有する資格によって取得できる教員免許の種類や手続き内容も異なってくるので、所有資格をあらかじめ明確にしておくことで、事後のやりとりがスムーズになります。
第一級陸上無線技術士による教員免許の取得なので、「教職員免許法施行法第二条の表の二十の二 ロ に規定する第一級陸上無線技術士により、高等学校第一種(工業)の免許を取得したいので手続きを案内してほしい」旨でと言わせました。
そこで得た回答は次の通りです。
つまり、いきなり申請しても免許を交付できるかわからないので、事前に相談(実質的な審査だが、法的根拠がないので”相談”)してほしい、とのことでした。
したがって、もし、このnoteをご覧いただいた方が私と同じように一陸技で教員免許を取得しようとするのであれば、必ず事前に各都道府県教育委員会の免許担当へ問い合わせしてからにしてください。
県教育委員会への事前相談
事前相談に従って、下記の書類を揃えます。
(1)無線従事者免許証のコピー(表裏両方)
(2)履歴書(任意様式)
取得を希望される免許状の種類もここに記載。
(3)職務経歴書(任意様式)
・勤務した会社名と事業概要
・担当業務とその具体的な内容
「無線通信に関する業務」であることが明確にわかるようにできるだけ具体的、詳細に記載。
(4)勤務した会社や担当業務の説明資料
会社案内やホームページのハードコピーでよいとのことです。
さて、私は6社ほど会社を経験しているので、職務経歴書の書き方が面倒です。職務経歴書を読み取って無線従事者の仕事を抽出し、通算で3年を超えているかを審査するものと思われますので、無線従事者としての仕事を抽出して一覧にしておきました。
同じ理由で(4)の会社や業務の説明資料が面倒です。そもそも私には、無線従事者として仕事と正面切って言えるところが1社か2社しかないし、3年の業務経験があれば十分なので、とりあえず1社に絞りました。審査に関係ないような会社の説明資料が大量にあったところで、見る方も無駄に面倒だと思います。
上記の書類を揃えて、「教職員免許法施行法第二条の表の二十の二 ロ に規定する第一級陸上無線技術士により、教員免許を取得したいので事前相談する」旨を記載した鑑をつけて、郵送しました。
審査には数か月を要するとのことだったので、気長に待ちます。
業務内容の詳細
書類の送付から一週間と経たずに連絡がありました。「無線通信に関する業務」について、詳細な内容を申述してほしいとのことでした。何度かの就職活動で使ってる職務経歴書には「〇〇の監視業務において、無線従事者として無線設備の操作を行った」と書いているのですが、それだけでは不十分だったわけです。
一方で、無線通信に関する業務として挙げた業務のみ、その詳細を説明すればよいわけで、必要十分な1社の業務経験に絞るという作戦は成功しました。
さて、その業務経験の説明ですが、具体的には「何をどのように操作しているのか」と「恒常的かどうか」がポイントとのことでした。何をどのようには、何が「無線設備」でどの動作が「操作」にあたるかを説明すればよいだけですので、あまり難しくはありません。
一方、恒常性は少し難しいです。無線設備に限らずですが、車の運転でもない限り、常時操作しているということはありません。たいていは、「何かあったときに何かのボタンを押す」だけ、ということになってしまいます。
とは言うものの、「何かあったとき」に備えて常時何かをモニタしている、つまり監視しているはずです。ここに言うモニタとは「眼で見る」だけではないです。ほかに作業をしていて音が鳴ったら対応する、という形態でも、耳で「モニタ」しています。ということにして恒常的ということにしました。
正直、監視というキーワードで恒常性を読み取って欲しかったですが、それだけでは説明不足ということです。
なお、取得要件の解釈については、下記の文献に記載があるようです。
教育職員免許法関係解釈事例集
日本現代教育基本文献叢書 平原春好/責任編集
日本図書センター 1998.11
事前相談の結果
事前相談の書類送付から一月足らずで回答が送付されました。「検討した結果を解答します」との事で、下記の事項が記載されていました。
これで書類を揃えて申請すれば、中学校教諭二種免許状(職業)及び高等学校教諭一種免許状(工業)の教員免許が取得できる事が明らかにになりました。次は具体的な申請手続を行います。
申請手続
具体的な申請手続は次の10部の書類を揃えて、教育委員会の申請窓口に持参して行います。書類の書き方や揃え方については、案内の文書が添付されていました。https://www.pref.kanagawa.jp/docs/pi7/menkyo/beppyo5.html
教育職員検定及び普通免許状授与等申請書(第5号様式)
履歴書(第9号様式)
人物に関する証明書(第6号様式)
身体に関する証明書(第8号様式)
技術に関する証明書(第7号様式)
大学の卒業証明書
所有する免許状
第一級陸上無線技術士の免許状
戸籍抄本…各書類に記載の本籍地や氏名が申請時と異なっている場合
教育職員免許状取得相談について(回答)…事前相談の回答文書
様式は神奈川県教育委員会のサイトからもダウンロードが可能だったので助かりました。いちいち手書きするのは辛すぎます。
後日、全ての書類が揃ったので、県教育委員会へ提出しました。提出は窓口への持参のみで、簡単なチェックをして受理されました。
今回申請したのは、高校一種工業のみです。中学一種職業も取得可能ですが、申請書類がもう一揃い必要になります。今後の計画としては、高校一種工業を足掛かりに、他の科目も取得していく予定です。