著作権_ブロックチェーン

著作権 × ブロックチェーン

今日では、インターネットの普及のおかげで、どこでも簡単にネット上に共有されているコンテンツを楽しむことができます。例えば、映画やドラマなどといった動画をはじめ、小説、漫画、イラスト、アニメなど様々な作品を電子機器を用いることで接することが可能になりました。
このように便利な社会になった一方で、著作権に関して懸念の声が高まっています。従来、クリエイターが作った作品はオフラインで取引が行われていたため、万が一不正複製が行われた場合でも物理的な限界があり、今日のように世界中にそのコピーが広まることはやや難しかったのです。
このような状況下で、著作権の保護に関する対策としてブロックチェーン技術の活用が注目を集めています。今回の記事では、ブロックチェーンがどのように著作権を有効に保護できるのかを紹介していきます。

著作権とは、著作物の創作時点で権利が発生するものであると言われています。ところが、この著作物へ法的拘束力を持たせるためには、役所へ届け出を行う等のいわゆる登録手続きが求められます。そのため、必然と手続きにおけるコストが発生することになります。
しかし、ブロックチェーンを利用することにより、役所を訪れる手間がなくなり、前後の著作権登録に関する履歴が自動で更新、管理されます。それで、より速く低コストで安全な(改ざんされない)著作権管理が行われます。
一方で、著作物をブロックチェーンネットワーク上に登録することで、逆に第三者による不正利用に対する懸念の声もあります。しかし、ブロックチェーンの特徴として、システムを利用した全ての人の履歴が記録され、またその記録を誰もが確認することができるため、無断で他人の著作物を利用するというリスクは無くなります。
とはいえ、ブロックチェーン上での著作物履歴管理データに法的拘束力があるわけではありません。しかし、システム内で自動的に管理され、分散型ネットワークで保管されるため、改ざんの恐れがないため従来のシステムより信頼性が高いといえます。

それでは、著作権問題を巡ってブロックチェーン技術がどのように活用されているのか複数の事例をみていきましょう。

CFun

ブロックチェーン技術を活用して著作権の保護を目指すCFun社を紹介します。

「CFun」は、マンガ、イラスト、声優、小説、ゲームなどの二次元コンテンツのアップロードとユーザーとの対話を可能にするプラットフォームです。これにより、クリエイターたちは国際的に作品を展開することができ、作品の発見や拡散、企業との取引など多くの機会を得ることが可能になります。一方で、海外のユーザーは日本のクリエイターの二次元文化に触れることができるようになります。ファンとクリエイターが、お互いに学び合うことができ、アイディアを交換することで新しい分野を開拓することが同社の狙いであリます。

この「CFun」の最大の特徴は、著作権を保護し公正なサポートができるプラットフォームであるということです。なぜならば、情報の改ざんが不可能なブロックチェーン技術とスマートコントラクトを融合させたシステムを駆使して、言語の問題や著作権問題を明確化することが可能になります。
そして、日本の二次元作品のクリエイターや企業の海外進出をサポートする役割も果たしています。

現在、中国では著作権保護に関する法律規制によってIPコンテンツを保護しています。個人が著作権を保護することは非常にハードルが高いことですが、「CFun」ではブロックチェーン技術によって、作品をネットワークに公開した時点で、誰が、いつ、どの作品を公開したかの記録を残し、それぞれの作品の著作権の所在を明らかにすることができます。

さらに、スマートコントラクト技術の融合によって、クリエイターへの仕事の依頼から完了までがスムーズに遂行されるため、クリエイターと企業とのやり取りで生じるストレスを軽減できるというメリットがあります。作品を読んだり、評価、シェアしたりするなどのユーザーの行動がブロックチェーンに記録され、それぞれの行動価値を評価してトークン化されるといった特徴もあります。

日本の二次元作品のクリエイターたちは、「CFun」に登録することで、自分の作品が中国語等に翻訳され、アプリやPCで読めるようになったり、有料掲載が可能になったりします。また、中国のファンから反応やコメントが届き、企業から直接、作品創作の依頼を受けることができるなど、クリエイターとしての可能性を拡げられる仕組みを同社では目指しています。

「CFun」は、現在、日本、シンガポール、韓国、中国にも拠点を持っており、英語・中国語・韓国語・日本語の4ヶ国語に対応しています。今後、事業の拡大に伴い、より多様な地域や言語でサービスを利用できることが期待されています。
(参考:AMP)

Microsoft & EY

マイクロソフトとEYは、ブロックチェーンを活用した著作権への支払いに関する追跡サービスの共同開発へ取り組むことになりました。この2社の共同プロジェクトは、従来の仲介人へ依存してきた著作権の支払いを追跡し収集する現在のプロセスを合理化することを目的としています。

マイクロソフトは大手ゲーム会社であるUbisoftのようなパートナーと協力して、膨大なオンラインゲームシステムにブロックチェーンツールを導入することを予定しており、最終的にはEYとともに設計されたこの技術を、その他のあらゆるクリエイティブ産業にも応用することができるとも考えています。

マイクロソフトとEYは、知的財産や資産が他の当事者にライセンス供与され、ロイヤリティ契約に基づいて対価を支払っている業界にサービスを提供するようにソリューションを設計しました。

このプロジェクトが完全に展開されると、1日に何百万件もの取引を処理できるため、支払いに45日もかかることがあったロイヤリティの流通過程を置き替えることができると期待されています。
このプロセスは、Quorum(クォーラム)と呼ばれるブロックチェーン技術に支えられており、機密のビジネスアレンジを保護するために設計されています。

EYでブロックチェーンのグローバルイノベーションリーダーを務めているPaul Brody氏は、ブロックチェーン技術を採用した理由について「スマートコントラクトと地方分権であり、どちらもネットワークの目的に完全に適合しているからである」と述べています。

これはマイクロソフトとそのビジネスパートナーだけではなく、最終的にはすべての企業がデジタル化された権利とのロイヤルティ契約を他の企業と行うための一般的なツールとなることが意図されています。つまり、集中管理はなく、それぞれの企業は独自の運用プライバシーを保証されています。
(参考:BITTIMES)

SONY

ソニー株式会社、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント、株式会社ソニー・グローバルエデュケーションは、ブロックチェーン技術を応用してデジタルコンテンツの権利情報処理を行うシステムを開発しました。このシステムは、ソニーとソニー・グローバルエデュケーションが開発した「教育データの認証・共有・権限管理システム」をベースに、デジタルコンテンツに関わる権利情報を処理する機能を追加した新システムです。

ブロックチェーンはプログラムや情報の破壊、改ざんが困難なネットワークを作り、自由にデータ・権利を移転する目的に適したその特長を活かし、金融、商流管理、シェアリングエコノミー等幅広いサービスへの適用可能性が見込まれる技術で、今後革新的なサービスの実現が期待されています。現在ビットコインなど仮想通貨をアプリケーションとした、公開型P2P取引ネットワークとしても活用されています。

今日、デジタルコンテンツ制作の技術発展により誰もがコンテンツを発信することができますが、それらの権利情報の管理は、従来通り業界団体等による管理や作者自身によって行われており、効率的な著作物の権利情報の処理や証明も必要とされています。今回開発したシステムは、著作物に関わる権利情報処理に特化し、電子データの作成日時を証明する機能と、ブロックチェーンの特徴である改ざんが困難な形で事実情報を登録する機能、過去に登録済みの著作物を判別する機能を有し、電子データの生成日時と生成者を参加者間で共有・証明することが可能となります。電子データの生成と同時にこのシステムを呼び出すことにより、従来証明や登録が困難であった著作物に関わる権利発生の証明を自動的に実現することも可能です。また、このシステムはデジタル教科書等の教育コンテンツを始めとし、音楽、映画やVRコンテンツ、電子書籍など多様なデジタルコンテンツの権利情報処理に応用可能であり、幅広い分野での活用を検討しています。
(参考:ソニー株式会社)

まとめ

今回は、近年話題となっている著作権保護をめぐる課題をブロックチェーンがどのように解決できるかを説明しました。インターネットの普及と進化とともに、今後著作権問題はより重要な課題として見られるでしょう。
ブロックチェーン技術は、すでに様々な分野で導入されており、その可能性または潜在力が認められ始めています。ブロックチェーン技術の活用とともに、一般ユーザーたちの著作権に関する認識も正しく定着していけばと思います。今後、ブロックチェーン技術のさらなる発展と展開に期待が集められています。