政治家レイシズムデータベース2022年9月
反レイシズム情報センター（ARIC）です。
ARICでは、政治家はじめ公人によるヘイトスピーチやレイシズムの記録を行い、データベース化しています。
このnoteでの「政治家レイシズムデータベース」では、毎月追加したデータの中から、特に深刻なケースをこのnote記事上でピックアップしていきます。
今月も追加した差別事例から一部を紹介したいと思います。
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9月に追加した分のデータでは、（1）関東大震災時の朝鮮人虐殺に関する歴史否定、（2）沖縄県知事選に際するヘイトデマ、（3）「外国人生活保護」バッシングが特に注目すべきものとして挙げられる。
（1）関東大震災時朝鮮人虐殺否定
2017年以降小池百合子東京都知事は、墨田区で毎年開催されている関東大震災時朝鮮人虐殺追悼慰霊祭に対して追悼文を送らないことで当時の民族差別に基づく殺害を矮小化しつづけており、その結果、極右団体による追悼慰霊祭妨害が毎年続いている。
その追悼妨害に参加している極右の1人が元葛飾区議会議員・鈴木信行であり、今年も下記のような虐殺否定のブログを投稿していた。
「関東大震災で朝鮮人6600人虐殺って嘘だ！韓国反日団体を入国禁止とせよ！ #葛飾区」（鈴木信行 公式ブログ、https://ameblo.jp/ishinsya/entry-12760988638.html）
鈴木信行の投稿内容は、関東大震災時の朝鮮人虐殺「6000人」という数は誤りであり、一部の朝鮮人が殺害されたのは当時朝鮮人の「暴動」があったためだとする使い古された歴史否定だ。これについては昨年もnoteで批判しているため、詳しくはこちらを参照されたい。
「政治家レイシズムデータベース2021年9月」（note）
（2）沖縄県知事選関連ヘイト
9月に沖縄県知事選の投票が行われ、現職の玉城デニー氏が再選することになったが、それに関連づけられたヘイトスピーチが多数発生していた。
これまでも選挙などの際にネット上で拡散されるヘイトスピーチを監視してきた市民団体・「沖縄カウンターズ」の調査によれば、8月25日の告示後から沖縄の人々に対する下記のようなヘイトスピーチが記録されている。
〔以下、沖縄タイムス記事より抜粋〕
「沖縄土人に選挙権は早かったね」「沖縄人、日本から出ていけ！」「令和の琉球処分が必要だ」など、差別、排斥、制度的な暴力を扇動するものがあった。
「お前らは中国人と同じや」「沖縄の土人達（たち）は在日が沢山（たくさん）いるようです」など、外国人差別と重ね合わせた書き込みも放置されていた。米国人を父に持つ玉城知事に対して「日本人もどき」などの差別発言や、「帰化人」などのデマも飛んだ。
沖縄タイムス、2022/9/15
この調査からは、「中国人」「在日」、そして「沖縄の土人」などのルーツに基づくレイシズムがあからさまにネット上に出回っているのがわかる。
さらに補足すべきは、こうしたヘイトスピーチを正当化するような公人の発言もあったということだ。その象徴的な事例として、大阪府泉南市議会議員の添田詩織の投稿を紹介する。
沖縄を中国の属国にしたいデニー候補。
ウイグル・モンゴル・チベットのように日本民族も強制収容所に入れられ民族浄化(虐殺)されます。
全日本人で全力阻止すべき！！！
https://twitter.com/soedashiori/status/1564181545594003456
https://twitter.com/soedashiori/status/1564182354494898178
このように、玉木デニー氏に対するバッシングが中国脅威論と関連づけながら展開されている。
「オール沖縄」を掲げる沖縄県知事に対して、中国との関係を絡めてバッシングするという極右の手法は翁長雄志前知事の時代から行われてきており*1、それが問題化されずに放置され続けたことで今回の県知事選の際にも多数のヘイトスピーチが発生したといえる。
（3）外国人生活保護バッシング
安倍晋三前首相の国葬に対して批判的な意見が多く出たことを受け、Twitter上で「#国葬反対より外国人生活保護反対」というハッシュタグが出回り、あろうことか政治家がそれを追認するような投稿を続発させていた。
このハッシュタグは、元をたどれば海乱鬼（nipponkairagi）と名乗る極右インフルエンサーの投稿に由来する。
国葬に税金が使われることが批判されていることを受けて、「外国人」への生活保護による税金の「垂れ流し」を対置するという発想のようだ。人の命がかかわり、人権の観点から補償されるべき生活保護と国葬を同等に並べられるという発想が根本から間違っているが、これを受けて普段から外国人生活保護バッシングを繰り返している政治家が便乗していいたのだ。
自民党神戸市議会議員・上畠寛弘
国葬に16億6000万円
外国人生活保護に神戸市だけで年間５９億円
国会の審議もなく厚生省通達により行政措置で外国人生活保護として皆様の血税が垂れ流されている
それどころか中国政府🇨🇳は中国人の生活保護を神戸市に押しつけています。これこそ廃止すべきです！
#国葬反対より外国人生活保護反対
https://twitter.com/NorihiroUehata/status/1567388183633215489
外国人生活保護バッシングの問題については昨年の記事で述べており、その繰り返しになるが、生活保護からの排除を訴えることは「外国人」を「死んでいい人間」として規定するレイシズムである。
「政治家レイシズムデータベース2021年10月」（note）
ハッシュタグを通じて差別がいつでも拡散するような、差別規制のないプラットフォームのもとで、政治家が支持を集めるためにレイシズムを利用し、それにお墨付きを与えるという構造ができあがっているのである。「最後のセーフティネット」としての役割そのものを破壊する生活保護バッシングとレイシズムの危険に対して、SNS上の差別煽動規制などの実効的な対策を求めていく必要がある。
*1 「政治家レイシズムデータベース」からは下記のような記録が挙げられる。
自民党参議院議員・山田宏
https://antiracism-info.com/database/130066/
元東京都知事選立候補者・田母神俊雄
https://antiracism-info.com/database/125573/
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＊新聞・雑誌記事、動画、書籍等でレイシズムの疑いがある公人による発言を見かけた場合は、ARICのHPから通報フォームにてご連絡ください。Twitterで「＃政治家レイシズム」のハッシュタグをつけてリツイートしてくださっても結構です。
[1] 自民党参議院議員・山田宏
https://antiracism-info.com/database/130066/
元東京都知事選立候補者・田母神俊雄
https://antiracism-info.com/database/125573/