政治家レイシズムデータベース2022年8月
反レイシズム情報センター(ARIC)です。
ARICでは、政治家はじめ公人によるヘイトスピーチやレイシズムの記録を行い、データベース化しています。
このnoteでの「政治家レイシズムデータベース」では、毎月追加したデータの中から、特に深刻なケースをこのnote記事上でピックアップしていきます。
今月も追加した差別事例から一部を紹介したいと思います。
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今回は、追加した発言の中で特に悪質といえるものを紹介し、その問題点を指摘する。今回取り上げるのは、中野区議会議員の吉田康一郎のTwitter上の投稿だ。
ARICではこれまでも、彼が中野区長選挙に立候補した際にその差別発言と他の極右とのつながりについて問題視していた。ホームページ上に記事を掲載しているので、そちらも参照されたい。
出自に基づく「帰化」者へのレイシズム
故・安倍晋三の国葬をめぐり、メディアを通じてその是非をめぐる議論が交わされたが、吉田康一郎は国葬に反対する著名人をレイシズムによって攻撃していた。
まず7月24日には下記のように投稿している。
ジャーナリストの安田菜津紀氏による国葬に対する否定的な意見に対する非難だ。この是非についてはさておき、これだけであればただの非難にとどまるが、今回取り上げたきっかけは次の投稿にある。
このように安倍晋三の国葬をめぐりもともと自身が非難の対象としていた安田菜津紀氏の出自を暴露する投稿をおこなっていたのだ。まったく関係のない文脈で他者のルーツをもち出しているのであり、明らかに民族的出自を通じたバッシングを図ったものだといえる。
こうしたバッシングが差別と批判されたことで、「公共性のある地上波テレビ局で国政について評論している人物の発言は、社会に大きな影響を及ぼします。その人物がどの様な背景や経歴、経験を有しているのかは、影響を受ける国民にとっても重要な情報です。その人物本人が公表している記事を紹介し、記述する事は、抑圧されるべきではありません。」と投稿して開き直っているが、問題は安田氏本人のコメントを民族的出自と関連づけ、実際に差別を煽動していることにある。
実際に問題の投稿には「なるほど放送内容が半島や大陸に偏向しているのも頷ける。」「いい加減外国人や帰化人を日本のマスメディアに関わらせるのは法律で禁止にしてほしいです。」といった投稿が寄せられており、差別を煽動しているのは明らかだ。
吉田氏は後に自身の投稿について、「このツイに差別を扇動する意図はありません。差別的なコメントはしないで下さい。」(2022年7月28日)と投稿している。一見差別拡散を防止しようと対応しているように見えるかもしれないが、これは実際には差別の責任をとらない形だけのものだ。
というのも、吉田氏は性懲りもなく8月にも帰化した人物を出自と結びつけてバッシングする差別投稿をおこなっているのだ。
8月に映画評論家の町山智浩氏がTwitter上で故・安倍晋三の国葬の実施について「わかった。国葬ただし鳥葬、で手を打とう。」「獣葬でも可」といった投稿をアップしたことで非難が寄せられた。その際にも、吉田氏は一連の町山氏のツイートを引用して下記のように投稿したのだ。
町山氏が在日コリアンにルーツをもち、すでに帰化していることを公言したことを念頭においた投稿であるが、これも7月の投稿と同様にレイシズムである。
「日本人にはない発想」などとあるが、町山氏は日本国籍を取得しているので日本人だ。しかしその「日本人」の枠組みから排除するために「帰化人」として括り、他の民族的出自をもつ町山氏を排除しているのである。町山氏の元の投稿の是非はここでは全く関係なく、その主張を民族的なルーツと結びつけ、それを通じてバッシングしている点がレイシズムとして問題とされるべきなのだ(これはもちろん仮に対象者が日本国籍保持者でなくとも同様)。
驚くべきことに、こうしたあからさまなレイシズム発言をおこなう吉田氏は現職の中野区議会議員だ。出自による差別を煽動する上記の吉田氏の投稿は、人種差別撤廃条約第4条本文と条項(c)が禁止する人種差別の正当化、および国・地方の当局または機関による人種差別の助長・煽動に該当している。中野区議会は過去の吉田氏の投稿を検証し、レイシズムに対する批判を表明し、その責任を取らせるべきだろう。
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*新聞・雑誌記事、動画、書籍等でレイシズムの疑いがある公人による発言を見かけた場合は、ARICのHPから通報フォームにてご連絡ください。Twitterで「#政治家レイシズム」のハッシュタグをつけてリツイートしてくださっても結構です。
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