遠すぎて見えない競馬:ドンカスター(イギリス、Doncaster)

初めてのイギリス競馬

私が19歳のとき、初めてイギリスの競馬場に行きました。ドンカスター競馬場へ、競馬学校の仲間と一緒でした。当時、私は日本の大学を辞めて、ドンカスターにある競馬学校の厩務員養成コースに通っていました。

その日のレースに1マイル(=約1600メートル)の競走がありました。

スタート地点はスタンドから見て左手の奥。本当に、奥。奥すぎて見えないところでした。なぜなら、ゴール板から1マイル左に行った先がゲート。そう、直線競馬だったのです。


イギリス競馬の重要拠点

ドンカスターは、もはや形骸化しているイギリス3冠の最終戦、セントレジャーの開催地として、日本でもその名を知る人もいるでしょう。

ヨークシャー南部にある街で、競馬場は街の外れにあります。

平地だけでなく障害競馬も行われ、さらに馬のセリも開催される、イギリス競馬では重要な場所です。競馬学校もあるぐらいですからね。


分からないスタート〜あっけないゴール

みなさん1.6キロメートル先を見つたことありますか?

1マイル先からスタートする馬たち。見えても本当に米粒ほどです。

彼らはたいてい、どちらかのラチ沿いに集団を形成します。内外に二分することもあります。

周回コースなら先頭からシンガリまでが可視化されやすいですが、直線コースでは横の広がりはわかっても奥行きはつかめません。場内映像も正面から撮っているので、やはり遠くて見づらいです。

当時は全く英語が聞き取れなかった私。場内の実況がわかるはずもありません。

そうこうするうちに残り2ハロンほど。ようやく見慣れた距離まで迫ってきます。どの馬が先頭なのか、ゼッケン番号を必死で凝視してたらすでにゴール。100秒があっけなく終わります。


観客向けの工夫が欲しい

ヨーロッパの競馬場では、たくさんの直線競馬が行われています。10年以上前、日本調教馬として2週連続でフランスで勝利を挙げたシーキングザパールとタイキシャトル。彼らが勝ったレースも、それぞれ1300メートルと1600メートルの直線競馬でした。

日本でも新潟競馬場が改装され、直線競馬が行えるようになりました。それから日本の関係者も、直線コースと周回コースは得意な馬が違うと気づいたようです。

今、新潟芝1000メートルのレースを見ると、この条件ばかり使われている馬やずっとダートを走ってきた馬を結構見かけます。

レースのバリエーションを増やすという意味で、同じ距離でも直線だけと周回の競馬があるのは大事なことです。

ただ、1600メートル彼方から走ってくる馬を見るのは、あまり楽しめないんですよ。映像やテクノロジーの力で、もっとエキサイティングにならないものですかねえ。

いただいたサポートを励みに、これからも世界各地の競馬場に足を運びたいと思います!