第83回凱旋門賞(2004年) [競馬ヒストリー研究(13)]
今週の凱旋門賞に出走するクロノジェネシスの父と言えば勿論バゴだ。今回は彼が制した04年の同レースをご紹介し、娘が挑む大一番へ気分を高めよう。
ギリシャの船舶王スタブロス・ニアルコスが創始した馬主組織ニアルコスファミリーの生産・所有馬であるBago。
2003年の8月のデビューから4戦4勝で制したシーズン終盤の2歳GIクリテリウムアンテルナシオナルで初のGI制覇。
翌2004年は調整の遅れや距離を嫌って有力候補と目されていたクラシック競走に出走せず、仏ダービーと同日開催で1800m(当時)のGIジャンプラ賞で始動し、続く2000m(当時)のGIパリ大賞まで6連勝を決める。
初の国外遠征となった英国のインターナショナルSは3着に敗れたが、その後は凱旋門賞を目指して前哨戦のニエル賞に出走。ここでも3着し、本番を迎えた。
同年の凱旋門賞は単勝1番人気が6.0倍のオッズを付ける大混戦。そのO.ペリエ騎乗で仏ダービーとニエル賞2着のProspect Park以下、2番人気6.5倍の英ダービー馬North Lightや3番人気8倍の愛ダービー馬Grey Swallowに続き、Bagoは8.7倍の4番人気であった。
他にも英愛オークス勝ちの3歳牝馬Ouija Board、日本でGI2勝のタップダンスシチー、前走ドーヴィル大賞勝ちのCherry Mixとニエル賞勝ちのValixirというこの路線の重賞を勝って臨むラガルデールファミリー所有の2頭等が名を連ね、出走馬は19頭。
North Lightとタップダンスシチーの2頭がレースを引っ張り、中団の内目を追走したBago。
直線に向き、失速するタップダンスシチーのすぐ外から好位集団にいたCherry Mixが抜け出すも、直後に同じスペースを突いて猛追したBagoがゴール手前で交わし、半馬身差1着。勝ち時計の2分25秒0はステークスレコードに0秒4迫る好時計であった。
その後翌年にガネー賞を制し、ジャパンC8着を最後に引退し日本で種牡馬となった同馬。そして10シーズン目の種付けで誕生したのがクロノジェネシスということとなる。
凱旋門賞を制した一流馬を種牡馬として輸入し、その産駒が国を代表する有力馬として同じレースへ出走する。
それだけで血の還元とも言うべき見事なサイクルが形作られているわけだが、それが嘗て名血の墓場と揶揄された国から行われていること自体が痛快であり、日本の競馬界にとっては胸を張るべきことである。
そして勝利するようなことがあれば、日本の競馬が世界を制するという半世紀を超えた大いなる大河ドラマが完結する時ということになるだろうか。是非ともクロノジェネシスの勝利を期待したい。
こんなようにクロノジェネシスを応援する文章を書いておきながら、私の海外馬券は常に日本馬を積極的に買わない平松さとしさんスタイルです(笑)
色々と注目するポイントが多い今年の凱旋門賞ですが、ゴドルフィンとクールモアの対抗戦という観点で見てみると、前者は近年英国調教馬の出走がかなり少ないものの、別名義も含め過去3勝。一方のクールモア、特にA.オブライエン師はあれだけの層の厚さを誇りながらロンシャン開催に限れば過去1勝で、他は3着が4回のみ。ここまで走らないとなると適性に疑問符がつくような・・・?
日本関連のトピックが多過ぎて見落とされている気もしますが、Adayarは今回勝てば95年のLammtarra以来となる欧州三大レースの制覇となります。前走下したMishriffはインターナショナルSを6馬身差で圧勝。単純に負かしてきた相手ではこの馬が一番ではないでしょうか。久々登場の強い英国ダービー馬として期待したいところです。
僚馬のHurricane Laneも劣ってはいません。距離短縮ローテは分が悪く、92年に2着したUser Friendly以来好走のないセントレジャー組ですが、同馬と以降の同組で4,5着に走ったKingston HillやMilanとは、いずれも平坦で直線の伸びが活かせるヨークやドンカスターで前走以前に重賞勝ちがあったという共通点はあります。パリ大賞を制していますし、道悪や脚を溜めて終いの脚を伸ばすフランス競馬への適性は同馬の方が上手かもしれません。
手薄を通り越して心配してしまうボリュームの地元勢ですが、年々全体の層が薄くなる中でも近2年は意地を見せています。ロンシャン開催で地元馬が1頭も3着以内に来なかった年は確認できる限りないと思われますし、近10年程を見ても穴を出すのは殆ど遠征馬より地元馬。無理矢理にでも押さえておいた方が良さそうです。
唯一のGI馬Sealiwayはぶっつけ本番が不安ですが、ジョッケクルブ賞ではSt Mark's Basilicaの2着ですから地力は侮れません。Raabihahは昨年C.デムーロ騎手が優勝したSottsassとの間で迷ったほど評価していた馬ですし、この2頭は狙ってみたいと思います。
それではー