第55回阪神ジュベナイルフィリーズ(2003年) [競馬ヒストリー研究(33)]
先々週に引き続き、ラストウィークの2月最終週となる今週も引退調教師の勝利したレースを振り返ろう。しかしながら、7名とも今週開催の重賞には優勝歴がないため、全獲得タイトルの中から特に印象的なレースをピックアップさせていただいた。今回は、浅見秀一調教師が2003年に優勝した阪神ジュヴェナイルフィリーズを取り上げていきたい。
浅見秀一の父浅見国一は騎手として八大競走3勝や2度の関西リーディングを獲得。調教師としてはヤマピットとケイキロクでオークスを2勝し、坂路コースの導入やエアロフォームの勝負服、馬運車による当日輸送など、様々な先進的な試みを取り入れたことで知られる。
その父の厩舎で騎手候補生、調教助手を経て1991年に調教師となり、翌92年に自身の厩舎を開業した浅見。3年目の94年にマチカネアレグロでアルゼンチン共和国杯を制し重賞初制覇を飾り、定年引退した父の管理馬を引き継いだ97年からは成績が向上。その中の1頭メジロブライトで98年の天皇賞春を優勝しGI制覇も成し遂げた。
「ヤマニン」の冠名で知られるオーナーブリーダー土井肇氏との繋がりは浅見の父と先代オーナーの時代から深く、2002年にはヤマニンセラフィムで京成杯、ヤマニンリスペクトで函館記念を勝つなどヤマニン軍団の所有馬で重賞を2勝。その翌年には同氏所有の良血牝馬が新たに浅見の厩舎へ入厩した。
まずは祖母にケンタッキーオークス馬ティファニーラスを持つトウカイテイオー産駒ヤマニンシュクル。期待馬のデビュー地として選ぶことの多かった函館で7月にデビュー勝ちし、3戦目にコスモス賞を勝利。札幌2歳Sで3着した後暮れの阪神JFへ駒を進めた。
その後にデビューしたもう1頭が、95年の阪神3歳牝馬Sで父国一に最後となるGI勝利をもたらしたヤマニンパラダイスの仔で、ヤマニンセラフィムの妹となるヤマニンアルシオン。こちらは11月の京都で芝1200mの新馬戦を5馬身差で逃げ切る鮮烈なデビューを飾り、1勝馬の身ながら同じく阪神JF出走にこぎ着けた。
ファンタジーSを勝ったスイープトウショウが1番人気に推され、8枠16番に入った四位洋文騎乗のヤマニンシュクルは6番人気、隣の17番枠で染分け帽を着用した当時兵庫所属の岩田康誠が手綱を取るヤマニンアルシオンは10番人気でレースを迎えた。
ヤマニンアルシオンが外からハナを主張し、そのままマイペースの逃げに持ち込む。ヤマニンシュクルは中団馬群の後ろからレースを進めた。馬群が一団に固まって直線を迎えると、岩田のヤマニンアルシオンは手応えに余裕がありまだ余力十分。四位のヤマニンシュクルは大外に出して懸命に追った。
人気のスイープトウショウは直線半ばを過ぎても中団でもがき、残り100mの地点では逃げ切り態勢かと思われた次の瞬間、坂を登りきってから一気の切れ味を発揮したヤマニンシュクルが猛然とゴールに飛び込み、一瞬にして差し切った。ヤマニンアルシオンもそのまま2着に粘り込み、なんとGIでは史上初となる同厩舎・同馬主で同枠の2頭によるワンツーという決着であった。
浅見はその後もソングオブウインドで菊花賞、レジネッタで桜花賞、レインボーラインで天皇賞春を制するなど数々の実績を積み上げたが、何よりGIタイトルが全て牝馬限定戦及び3000m以上の長距離戦というのがその確かな馬づくりを証明しているのではないだろうか。近年でも若駒の時期には短い距離を使っていたサングレーザーやレインボーラインを距離延長に対応させたことからも同じことが伺える。
今年の引退調教師の中では唯一栗東所属の浅見師。1000勝調教師の藤沢和雄師ら6名が引退する関東も含めて、その最後の競馬を目に焼きつけたい。
中山芝1800mは上り坂の途中からスタートし、すぐ1コーナーに入るためテンが緩く入れます。それに加え中山記念はAコースで開幕週でもあり完全にスピード優勢、先行有利のレース。
近年だけでもシルポートやマルターズアポジーなど、その時代を代表する逃げ馬が人気薄で好走してきましたが、彼らに匹敵するインパクトを昨秋残したパンサラッサはそれ以上の結果を残すことが出来るか注目です。
引退調教師が送り出す高橋祥師のカラテや藤沢和師のコントラチェックもマイル以下に実績のあるスピード馬。同じくマイル戦から臨むダノンザキッドあたりと合わせて押さえたいです。
阪急杯は差し脚堅実で、阪神コースで復調の兆しも見えるタイセイビジョンから狙いたいと思っています。
それではー