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はじめてでもわかるウクライナ情勢

なぜ、ロシアはウクライナに侵攻をしたのか?そして、なぜプーチン大統領はこれだけ国際社会から非難を浴びてしまうことになったのか?

連日メディアではロシアによるウクライナ情勢の話題が占めています。

それだけ世界での、日本での注目が高く、私たちのこれからの生活に大きく関わってくるからです。

今後ロシアは国際社会から孤立していき、今までロシアと世界が行ってきた貿易関係は見直されていくはずです。

石油産出国なので、エネルギーを巡る奪い合いは起こるでしょうし、小麦や海産物の輸出も多い国。それらが限定され、別の供給ルートを各国は確保していく必要がでてくるのです。

さらにグローバルに展開している企業の撤退も続いています。

マクドナルド、スターバックス、トヨタ、アップル、グーグル・・・。

彼らにとっては世界の中でロシア地域の事業がまるまる無くなることを意味するので、その影響の大きさは想像に難しくありません。

今、歴史的転換点にいるのです。

ロシアのよるウクライナ侵攻は、それぐらい大きな出来事なのです。

そんな歴史的な出来事であれば、なぜ起こったのか、ちゃんと理解しておきたいものです。

しかし、歴史的な背景も入り混じっているので、なかなか理解しづらいのも事実。

今日は、そんなウクライナ情勢について、「はじめてでもわかる」シリーズとしてお話ししていきたいと思います。

実際ロシアがウクライナ侵攻することはないと見ていた有識者たち

有識者たちからすれば、今回のロシアによるウクライナ侵攻は「驚く展開の連続」だったそうです。

ロシアは2021年からウクライナ国境周辺に軍を集結させていました。

威嚇のためです。

10万~15万人ほどの兵を集めていたといいます。(ロシア軍は全体でも100万人前後と言われています。その中でも陸上の軍は36万人程度)

つまり、15万人の兵をウクライナ国境周辺に集めているというのは最大限の威嚇をしてきたということです。36万のうち15万を動かしてきてるわけですからね!

そんな状況だったので、周りもざわざわし始めていたわけです。

「ロシアはウクライナ侵攻するのか?しないのか?」

「戦争をしかけるのか?しかけないのか?」

2021年末ごろからこの議論されてきましたが、「実際の侵攻はない」という見方が優勢でした。

なぜか?

侵攻してもロシアにメリットがないからです。侵攻をしない方がむしろロシアは外交的メリットを多く享受できていたはずだったからです。

それにも関わらず、2月21日にウクライナ東部のドネツク・ルガンスクの独立承認を行い、その3日後の2月24日にウクライナ侵攻を始めてしまいました。

日経新聞

ドネツク・ルガンスクというのはウクライナの東側にある州です。ウクライナの東側の地方ですね。

ウクライナ国内なのですが、ロシアが一方的に「そこは独立国です!」と認めてしまったんですね。日本でいうと、アメリカがいきなり「沖縄はアメリカの領土の一部です!」と言ってくるようなものですね。

そして、その3日後にはウクライナの首都キエフを陥落させるために侵攻をし、そこから戦闘状態が1ヵ月以上も続くことになりました。

では、なぜこのロシアによるウクライナ侵攻が始まってしまったのか、紐解いていきたいと思います。

なぜ、ロシアによるウクライナ侵攻は始まったのか?

ロシアの勢力圏の維持のためです。旧ソ連はロシアのチームでしょ?という考え方です。

これまでロシアはウクライナのことを自国の「勢力圏」の一部とみなしてきました。しかし、ウクライナはEUへの加盟やNATO(北大西洋条約機構)への加盟を希望するようになりました。

それに"NO"を突き付けたのが今回の侵攻です。西側には行かせないよ、ということです。

ロシアはウクライナと別の国なのになぜ「勢力圏」の一部とみなしてきたか?それがまさに今回の侵攻の根幹です。

それは、旧ソ連で同じ国だったからです。

ソ連崩壊が1991年12月25日。去年の年末でちょうどソ連崩壊30周年です。

ウクライナにとっては独立30周年ということですね。

これが旧ソ連の領土です。

ブログ塩はうまくてまずいですから

ロシア的にはこの旧ソ連の国々はロシアと同じチームだ!という認識なのです。

ウクライナやベラルーシもそうですし、その北側のバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)も旧ソ連ですね。

ソ連崩壊を契機に、旧ソ連の国々は独立をしましたが、ロシアはこれらの国々に対して政治力を使って影響力を与え続けてきました

ロシアからすると旧ソ連領域の国々は同じチームという認識で、そのチームのリーダーはロシアなのだ、という考えているのです。

ところが、ウクライナがそのチームを抜けると言い出したのです。

それは許せん!と、いうのが、今回のウクライナへの侵攻の理由です。

では、もう一つのチームとは?

アメリカ・ヨーロッパを中心とした西側諸国です。

キーワードしてよく出てくるNATOは、西側諸国がつくった軍事機構です。NATOに加盟している国が攻撃されたらNATO全体で反撃するぜ!という軍事同盟、それがNATOです。

NATOはアメリカとロシアの冷戦が激化していた1949年に作られました。

はじめはアメリカ・カナダ+ヨーロッパの資本主義国が加盟して12か国でした。

ところが、それからどんどん東側に拡大してきた歴史があります。

上の図を見てくださいね。もともと始めの加盟国が茶色で、そのあとピンク、そして赤とどんどん東側に迫ってますね。

2004年には、旧ソ連だったバルト三国(エストニア・ラトビア・リトアニア)がNATOに加盟しています。

この時点でプーチン大統領としては「西側諸国チームがどんどん勢力拡大してるやんけ!」とブチ切れだったに違いありません。

今回のウクライナはロシアにとって重要な地域なのでどうしても譲れなかった側面があります。ウクライナは土がよく「欧州のパンかご」と言われるぐらいの穀倉地で、ヨーロッパとロシアとを繋ぐちょうど中間地点の場所に位置しているからです。

ウクライナがNATOに加盟してしまえばロシアにとっては大きな脅威になるのです。

ロシアのハイブリッド戦争

ソ連崩壊後に、ロシアが勢力を維持できたのはハイブリッド戦争のおかげといわれています。

ハイブリッド戦争とは、軍事的なアプローチと非軍事的なアプローチを組み合わせた戦争のことです。

軍事的なアプローチは戦車や戦闘機でドンパチする方法での攻撃です。

ブーーーン、ドーーーン、バーーーン!です。

では、非軍事的なアプローチとは?

非軍事的なアプローチは情報戦のことです。サイバー攻撃や偽情報をばら撒いて心理戦を行ったりするものです。特にこの非軍事的なアプローチは頭が良くないとできません。インテリヤクザの手口です。

ロシアは、インテリヤクザ的な戦争が得意なのです。

これを組み合わせることで、軍事費を安くに抑えながら、それでいて効果を最大化させることができるのです。しかもサイバー攻撃は誰がやったかをしばらく隠せるという利点もあります。ロシアはこれを巧みに活用してきたのです。

ロシアは軍事費がアメリカの8%程度しかないため、その中で効果を最大化する工夫を行ってきたともいえると思います。

ロシアが旧ソ連を抑えていた交渉材料

ロシアが旧ソ連国への影響力を維持するために使っていたポイントは3つあるといわれています。

1つが経済、2つ目がエネルギー、3つ目が未承認国家のコントロールです。

【経済】ロシアは旧ソ連内ではもちろん第1国の大国です。立地的にも面してるので関わりの深い国々です。その中で、様々な輸入禁止の措置を強いたり、関税を引き上げるなどを使って影響力を維持します。

【エネルギー】ロシアはエネルギー大国なので、友好国にはエネルギーを安く売り、非友好国にはエネルギーを売らない、或いは高く売るという手法も使ってきました。

【未承認国家】旧ソ連内には紛争をしている国も多くあり、国家として認められてないけどそこで自治があるという状態の地域がいくつかあります。ロシアはその未承認国家を抑えることで本国に影響を与える手段を巧みに使っています。

【未承認国家】
台湾なんかも未承認国家の位置づけですね。国際的には中国の一部とされていて、台湾としてひとつの国としてはまだ認められていない状況です。日本も台湾を正式に国としては認めていません。(中国に配慮して)

旧ソ連内の未承認国家は、
・ジョージアのアブハジア・南オセチア
・アゼルバイジャンのナゴルノカラバフ
・モルドバの沿ドニエストル
・ウクライナのドネツク・ルガンスク
があります。

これらの未承認国家は紛争を続けている国々です。「独立したーい!」と戦い続けている地域なのです。

そんな未承認国家はロシアにとって便利な地域でした。

なぜ、ロシアにとって便利なのか?

未承認国家がある国は、要はそこで独立戦争を行っているってことになります。そうすると当たり前ですが、紛争地を抱えた不安定な国ということです。

そんな状態ではNATOに入ることはできないし、EUに入ることもできません。つまり、西側への接近が難しくなるのです。

たしかにその状態はロシアにとっては好都合ですね。

実際に未承認国家を抱える国はアゼルバイジャンを除き、ジョージア、ウクライナ、モルドバのすべてがEUへの加盟を希望しています。さらにジョージア、ウクライナについてはNATOへの加盟も希望しています。

これらの国々は西側諸国入りを希望してるので反ロシア的な国とくくることもできます。

実際に頭文字を取ってGUAM(グアム)といっています。つまり、ジョージアのG、ウクライナのU、アゼルバイジャンのA、モルドバのMです。これらを併せてGUAMです。

当たり前ですが、アメリカのグアムとは関係はありません。

このGUAMは、反ロシア的な組織を作り、西側諸国に接近してきた経緯があります。

実は、これらの未承認国家のほとんどはロシアと緊密な関係を築いています。未承認国家が本国の動きを留める作用を起こしているのです。ロシアはこれまで未承認国家を実質支配下にして、本国に揺さぶりを入れる、ということをしてきたのです。

つまり、本国は西側諸国に入りたいけれど未承認国家がそれを阻止する、という構図です。未承認国家は実質的にロシアにコントロールされてしまってるのです。

例えば、ウクライナは国としてEUやNATOに入りたいけど、ロシアの息がかかった未承認国家のドネツク・ルガンスク(親ロシア)がそれを猛反対すればウクライナ全体でEUやNATOに入ることができなくなる。そんなイメージですね。

ロシアは、西側諸国への接近を働く国々に対して未承認国家を利用してそれを阻止するという使い方をしていたのです。

そうすると、この論理でいけば未承認国家は独立させずにその国に留めたまま、ロシアが影響力だけ行使できる状況がロシアにとって一番外交方針にとって望ましいはずです。

そんな未承認国家ですが、プーチン大統領がブチ切れして独立承認をするという出来事が2008年に起きてしまいます。ジョージアのアブアジア・南オセチアを国家承認するのです。

そして、今回の2022年ドネツク・ルガンスクも独立承認しました。

2008年にはロシアジョージア戦争を行っていますし、今回もウクライナへの侵攻を行っています。

プーチン大統領の恨み

ロシアのウクライナ侵攻の背景として、プーチン大統領の西側に対する警戒感と恨み。特にプーチン大統領はこれまで自分が受けてきた西側の政策の数々を全て自分への攻撃と捉え、恨みを蓄積して、常に被害者意識を募らせてきた経緯があるといわれています。

彼の恨みが始まった経緯は、冷戦時代に東西ドイツが統一したときに、西ドイツでKBG(ソ連の政治警察)の職員として働いていたときに遡ります。

目の前で共産主義が崩壊し西側の自由な風が一気に来てしまうのが恐ろしく感じたと言っています。

それから30年。

この30年を振り返ると、それ以後の西側がロシアに対して行ってきたことはほぼ全て敵対的な行為でした。

ロシアを敵対視し、ロシアを抑えるための政策をずーーーっと展開してるのです。

プーチン大統領からすれば、ずっと西側諸国にはやられ続けてきたという感情が積みあがってきていたのではないか、といわれています。

NATOはどんどん東に拡大していき、旧ソ連の一部であったバルト三国がNATO・EUに加盟したが2004年。

プーチン大統領は、自分がトップにいる時代に旧ソ連領域が失われていった意識をもったはずです。

そして旧ソ連内の諸国で起こる西側諸国側へ近づく動き。

2003年ジョージアのバラ革命、2004年のウクライナのオレンジ革命、2014年のウクライナのユーロマイダン革命。これらは各国が豊かな西側諸国をみて、自分たちの国もそんな風になりたい!と思っての行動だと思います。

しかし、これらすべてがプーチン大統領にとっては西側諸国がロシアに対して仕掛けてきている戦略的な攻撃だという認識をもっていたのです。

そんな西側にずっと敵対されてきた思いが募って今に至るのではないかといわれています。

また、プーチン大統領は健康問題も噂されています。

プーチン大統領は69歳です。ロシアの平均寿命が68歳前後ということを考えると自分の死期を考えたのかもしれません。

自分の人生は長くないかもしれない。自分の22年の政治生命の中でロシアの多くのものが失われてきた。

ここで旧ソ連の領域をしっかり固めて失われたものを取り戻していかなければ自分の名前が歴史に名を残せない!のように考えたのかもしれません。

図解実情データ

また、バイデン大統領の誕生にも焦りを感じたのかもしれません。

なぜなら、トランプ大統領は「アメリカファースト」を掲げ、アメリカが関係する条約や同盟をどんどん弱体化させていく動きがありました。同盟で仲良くやっていくのではなくて、アメリカ単体で各国と交渉するよ、と。ある種、強いアメリカをどんどん自ら孤立させていく動きです。

それが、バイデン大統領が就任してからは世界との協調を重視し、同盟を復活させる動きを強めていきました。NATOとの関係再構築ということも熱心に進めていきました。

トランプ大統領がつくる世界情勢はアメリカをリーダーとした世界構造になるので、プーチン大統領はそれはまずいと考えた可能性が高いと思います。

そんな中で、ウクライナのゼレンスキー大統領はアメリカへの接近を進め、NATO加盟についても積極的に進める動きを見せていました。

それもプーチン大統領にとっては望ましくない行動に映ったに違いありません。

そんな中で去年8月に、アメリカがアフガニスタンを撤退するという事件が起きました。

撤退については、ロシアも中国もアメリカの外交的ミスと捉えていました。アフガニスタンを救うことができずにアメリカは撤退したのです。

それをみたロシアはウクライナに対してプロパガンダしたと言われています。つまり、アメリカがアフガニスタンを最後まで救わずに撤退したように、アメリカを信じて接近してもいつか同じように捨てられる運命を辿るかもしれませんよ、と。

アフガニスタンの失敗を見て、今のタイミングならいけるという感覚があったのかもしれません。

いずれにしてもロシアによるウクライナ侵攻は合理的な点が少ないことから、プーチン大統領による長年の恨みとこれまでの西側諸国の制裁の弱さを背景に強行されたのではないか、という見方が強いようです。

予想外の展開

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