見出し画像

2022 牝馬クラシック戦線近況分析

この週末は、阪神競馬場でチューリップ賞が行われました。

見事、ナミュールが勝利を飾り、暮れの阪神ジュベナイルフィリーズでの悔しい思いを払拭したわけですが、この結果を受けて、今年の牝馬クラシック戦線の構図もかなり鮮明になってきた印象があります。

そこで今日は、前回の牡馬編に引き続きこの世代の牝馬に関しても、現段階で意識しておくべき各馬の力関係について、備忘録的な意味合いを含め、簡単に記事として投稿しておこうと思います。


パラメータホースはスターズオンアースだ!


まず最初に、そのチューリップ賞の結果から振り返っておきましょう。

勝ったナミュール、3着サークルオブライフ、5着ウォーターナビレラの3頭は、ともに暮れの阪神ジュベナイルフィリーズの好走馬ですから、どうやらこの組が、この世代のクラシック戦線を引っ張って行くことは、ほぼ間違いなさそうです。


そしてもうひとつの注目は、勝ったナミュールが赤松賞で、6着ルージュスティリアがデビュー戦で、それぞれスターズオンアースに完勝しているという点でしょう。

ルージュスティリアは、今回の致命的な大出遅れにより桜花賞出走が絶望的な状況となってしまいましたが、内容的にはこの世代のトップを争える実力を備えていることを証明するレースができていましたから、この「スターズオンアースに完勝」というラインが、桜花賞本番で勝ち負けに持ち込めるかどうかの分水嶺になってくるのかな、と。

もちろんスターズオンアース自身が、赤松賞の後に少しずつ力を付けている印象もありますから、ものさしをあまりに単純化しすぎるのは危険ですけど、その点を一定程度考慮に入れたとしても、「スターズオンアースに完勝」というのは、ひとつのわかりやすいハードルとしては使えるような気がしています。

フェアリーSとクイーンCの評価は?


そうすると、フェアリーS勝ちのライラックと、クイーンC勝ちのプレサージュリフトをどの程度評価するべきか、そこの判断が重要になってきます。

現時点での私見にはなりますが、ライラックプレサージュリフトも、「スターズオンアースに完勝」という基準をギリギリクリアしていると評価していい。そう考えます。


ライラックは、勝ち時計こそ遅いものの、大外ブン回しの乱暴な勝ち方でしたし、プレサージュリフトはキャリア2戦目で時計を大幅に詰めての快勝でしたから、ナミュールルージュスティリアほどのインパクトはなくとも、単純なポテンシャル比較だけなら、桜花賞本番でも十分に好勝負に持ち込めるだけの能力を秘めているんじゃないかな、と。

ただし、この2頭に関しては、やはり長距離輸送を無事にクリアできるのかと課題も残っていますから、現時点では、先頭集団のやや後ろ、または2番手集団の前あたりにいると考えるのが妥当なのかもしれないですね。

桜花賞の各有力馬に付け入る隙はあるのか?


先に結論を書いてしまえば、今年は伏兵馬にも十分にチャンスがある。そんな気がします。

結果を見れば、阪神ジュベナイルフィリーズとチューリップ賞の間に一定の再現性は見られたものの、阪神ジュベナイルフィリーズでは2着に伏兵のラブリイユアアイズが喰い込み、チューリップ賞では同じく2着にほぼノーマークの存在だったピンハイが喰い込むという形。もちろん、ラブリイユアアイズもピンハイも、決してフロックで走ったわけではないのですけれど、ただこの2頭でも本番の有力馬に肉薄できるのなら、他にもその可能性を残した馬が少なくないのではないか、と思ったりするのですよね。

チューリップ賞4着のサウンドビバーチェも含め、それほど「強い」という印象を与えない馬たちでも、一線級相手にまともに戦えている。この事実は非常に重いですし、これが「伏兵馬にもチャンスあり」のひとつ目の根拠となります。


もうひとつは、やはり時計面ですね。もう皆さんよくご存じのことと思いますが、チューリップ賞同日の未勝利戦を快勝したサンクフィーユの勝ち時計が1:33.3、2着ハギノモーリス(こちらは牡馬ですが)でも1:33.6と、チューリップ賞でもおそらく上位を賑わすことができたであろうという時計で走っているんです。

サンクフィーユは化け物級の可能性があるので、この馬についてはさておくとしても、1勝クラスを勝てずにいるハイアムズビーチにデビュー戦で子ども扱いされたハギノモーリスが、チューリップ賞5着のウォーターナビレラと同タイムで走ったという事実は、相当に重い。これが「伏兵馬にもチャンスあり」のふたつ目の根拠となります。ラップ的にも、この未勝利戦がチューリップ賞よりも極端に劣るということはありませんでしたし、、、


つまり、これらの客観的な事実が指し示すのは、阪神ジュベナイルフィリーズとチューリップ賞の上位馬は、桜花賞でもおそらく好勝負はしてくるだろうけれど、他路線組との間に決定的な差があるわけではないから、決して安閑としていられるほどの立場にはない、ということなのだと思います。

そうすると、この週末に行われるフィリーズレビュー組やアネモネステークス組を本番で完全無視するのは危険。そんな気がしますね。

他路線組からの要注目馬


ここでは、「スイートスポットは極端に狭いけれど、ハマったらGⅠでも通用しちゃいそう」という2頭を取り上げてみることにしましょう。


一頭目は、今週末のアネモネSにも登録があるウィズグレイス

こちらは、オークスでの逃走劇に期待したいので、アネモネSはスキップしてもらいフローラSで権利を取って本番、というローテーションが理想だとは思いますが、過去2戦で刻んだ道中のラップを見れば、この世代なら、十分にGⅠで通用していい素質を秘めている。そう理解しています。

ただこの馬は、人気先行の傾向が強い国枝厩舎の所属馬ですから、仮に理想の形でオークスに出走してきたとしても、馬券的妙味はあまり感じませんけど。


二頭目は、今週末のフィリーズレビューに登録があるサウンドクレア

こちらは折り合い難がたたって、ここ3戦、まったく力を出し切れずに終わっているのですけれど、デビュー戦がルージュスティリア、スターズオンアースに少し離されたものの、内容的には大きな差無し。

2戦目には素質馬マイシンフォニーを楽々と差し切り、阪神ジュベナイルフィリーズで見せ場たっぷりの8着だったスタティスティクスを子ども扱い。そして3戦目の黄菊賞では、ドスローの厳しい流れの中、ジャスティンパレス、メイショウゲキリン、グランディアという牡馬の強いところを相手に差のない4着ですから、この馬、ポテンシャルの高さだけなら、桜花賞本番でも優に通用するものがあるんじゃないかと思うわけです。

ただ、なにより桜花賞に出走するためには、今週のフィリーズレビューで権利を取らないといけないわけですから、まずはそこに期待ですね。コース形態とこの馬の気性を考えたら、外枠はNG。

内枠を引いて、ドン詰まって、ドン詰まって、最後の最後に抜けてきて本番の権利を奪取。そんな苦しい競馬をして本番に向かってくれると、「フィリーズレビューと桜花賞本番で二度おいしい」なんてシナリオも、あながち夢ではないかもしれません。

2022 牝馬クラシックは大混戦


このように、今年の牝馬クラシック路線は、空前絶後の大混戦。そんな見立てでいいのではないでしょうか。

桜花賞に関しては、ナミュールが頭一つ抜けている印象もありますが、もともとのゲート難や、チューリップ賞がおつりの残る仕上げのようには思えなかったことなど、まったく不安点がないわけではありません。さらにオークスともなれば、距離やコース適性の部分で、序列がガラリと入れ替わる可能性も十分ですからね。

サークルオブライフあたりは、距離延長がよさそうな雰囲気もありますし、前述のルージュスティリアやウィズグレイスも、無事ならワンチャンスあっていい位置にはいるのでしょうから、今年は競馬ファンの予想力がより試される年になりそう。そんな予感がします。


本番直前には臨機応変な対応を


とはいえ、牡馬のケースとまったく同じで、本番のレース直前になれば、枠順や馬場状態、ジョッキーの乗り替わりなど、予期せぬさまざまな状況変化が生じます。

よって上記の見解は、今年の牝馬クラシック戦線を占う上での礎、という位置づけにとどめ、直前に予想を組み立てる際は、さまざまな条件を総合的に考慮していただくよう、皆さんにはお願いしたいですね。

サポートは任意です。 この記事があなたのお役に立てた時だけでかまいませんので、サポートしてもらえたら励みになります!