見出し画像

第74回 朝日杯FSのみどころ


明日は、阪神競馬場で朝日杯フューチュリティステークスが行われます。

今年のメンバーをパッと見渡すと、上位人気になりそうな各馬はどこかしらにウィークポイントを抱えている印象がありますし、全体的なレベルとしても、先週の阪神ジュベナイルフィリーズをやや下回るくらいのイメージになるでしょうか。


さらに人気上位馬の脚質が、「前に行ってスピードで押し切りたいタイプと、馬の後ろに入れて脚を溜め、最後の直線で爆発させたいタイプ」にはっきりと分かれている点も、非常に興味深いですね。

よって、脚質的な有利不利はもちろんですが、各馬が理想とする位置でストレスなく道中をやり過ごすことができるのか、というところが、最終的に勝負を分ける決め手となる。そんな気がしています。

また、トラックバイアスに関しては、土曜のレース中に雨が降っても、極端に外有利な傾向とはなっていません。インにこだわる必要はないですけど、やはり道中でコースロスをつくってしまうと、そのロスが最後まで響く馬場であることは間違いなさそうですね。


それでは、早速、レースのみどころについて、簡単に解説していくことにしましょう。


阪神11R 朝日杯フューチュリティステークス


ということで、今週も各ステップレースのレベル評価からスタートしたいと思います。

まず、上位人気を形成するのは、サウジアラビアロイヤルカップ組とデイリー杯2歳ステークス組。そこに京王杯2歳ステークス組のほか、条件戦や新馬戦を勝ち上がってきた馬たちが続くという構図に今年はなりました。


個人的な評価では、サウジアラビアロイヤルカップとデイリー杯2歳ステークスは概ね標準的なレベルで、両レースに出走してそれぞれ3,4着と健闘したシルヴァーデュークを"ものさし"にすると、この2つのレースレベルはほぼ同等程度と見ていいでしょう。

ただし、サウジアラビアロイヤルカップは前に行った3頭による単調な決着でしたし、デイリー杯2歳ステークスも後方から鋭い脚を使って2着に突っ込んできたダノンタッチダウンを除けば、結局は前に行った3頭で1,3,4着という決着でしたから、どちらのレースも中身が濃かったとまでは言えないような気がしています。


そうすると、サウジアラビアロイヤルカップ組とデイリー杯2歳ステークス組の力がやや上という感じはありつつも、展開面が前走とは激変する可能性もある今回、各馬ともステップレースと同じパフォーマンスを見せられる保障はどこにもない。そう言っていいのではないでしょうか。

特にスンナリと先行したい馬たちにとっては、前走ほど楽な展開にはならないでしょうから、「前走からさらなる上積みがあった」とか「差しに回って新たな一面を出せた」みたいなひと押しがないと、おそらく簡単な競馬にはならないんじゃないのかな、と。


次に、その展開面ですね。

ここは、人気上位馬に先行流れ込みタイプの馬が多いですから、序盤のペースがどうなるのかはもちろんのこと、左右前後の馬も並びの部分も、非常に重要になってくると考えています。

個人的には、逃げて結果が出ているグラニットがここも徹底先行策を採ってくると思いますが、テンのスピードだけならウメムスビのほうが速いでしょうし、こちらもできれば逃げたいオールパルフェが、はたしてどんな戦略でレースを組み立ててくるのか……など、ちょっと考えただけでも不透明の部分が多いことは間違いありません。

この3頭にドルチェモア、フロムダスク、スズカダブルを加えた先行勢6頭が、はたしてどんな並びでレースを進めることになるのか、そこらへんの読みが、このレースの予想を組み立てる上でとても大事になってくる。全体像としては、ひとまずそんな見立てになるのかな、と。


それではここから、先週と同様に全頭評価をやっておきたいと思います。

阪神ジュベナイルフィリーズのレースを振り返ってみてもわかるとおり、2歳GⅠは基本的に振れ幅の大きいレースになりがちですから、「ちょっと足りないかな」と感じる馬に関しても、一応の注意は払わないといけない。そこは必ず意識しておきたいポイントになりますからね。


①キョウエイブリッサ
パッと見、地味な印象しかないこの馬だが、芝OK、距離延長OK、荒れ馬場OK、馬群の中OKと、意外に条件面はフィットしている印象もある。勝ち負けに持ち込むには、やはり一定の幸運が必要になるだろうが、箸にも棒にも掛からぬ存在として最初から無視するのはちょっと危険かもしれない。

②ドルチェモア
この馬にとっての課題は、とにもかくにも道中の並びとなりそう。少なくとも、単騎逃げやスンナリと番手外……とはならない中で、この馬自身の力を出し切れるのかどうか、そこがすべてと言ってもいいだろう。ポテンシャルの比較だけなら、上位争いは必至なのだが、、、

③オールパルフェ
こちらも、道中の位置取りがカギになる馬。ハイペースになるのを覚悟でハナにこだわる競馬をしてくるのか、それとも他馬の動きによっては無理せず控えるのか。いずれにしても、この馬の理想の形に持ち込める可能性が低い中で、今までは見せることがなかった別の一面を見せられるのかどうか、そこにこの馬の命運がかかっている。

④ドンデンガエシ
こちらはハナにこだわない競馬ができるタイプなので、この鞍上ならインのポケットで脚を溜めるレースを選択してきそう。持ち時計の比較だけで言えば人気馬と大差はないので、道中の立ち回り次第では、この馬が上位に顔を出す可能性も否定はできない。

⑤バグラダス
レースセンスのいいこの馬だが、現状は千四の距離がベストか。控える競馬で脚を溜めれば、一瞬伸びかかるシーンはつくれそうだが、そこからのひと押しが利くかどうかはまた別の話だろう。

⑥ミシェラドラータ
現状は千二の差し馬。レース条件、相手関係、そのどれをとっても、残念ながらここで一気に躍進する絵面は想像しづらい。

⑦オオバンブルマイ
この馬の武器は、いい位置で脚を上手に溜めることができるレースセンスの良さ。鞍上にルメールJを迎えたとなれば、おそらく見せ場くらいはつくってきそうな気もする。ただ、器用さだけでは克服できない阪神のマイルという舞台で、はたしてどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。今回は、ひとまずお手並み拝見と言ったところだろう。

⑧グラニット
この馬に関しては、逃げたほうが力をより発揮できることは明らか。鞍上強化でペース配分を工夫してくるようだと、再びアッと言わせるシーンをつくってきても驚きはしない。ただし、ガチンコ勝負では明らかに足りない印象もあるので、後続を幻惑するようなマイペースの逃げを打てるかどうか。そこがすべてだろう。

⑨ニシノベストワン
この馬の武器は、馬群の中でも脚を上手に溜められる従順さ。どんな競馬になっても大崩れするシーンは考えづらいので、最低限、人気よりは数字の小さい着順で入線することになるだろう。そこから先のひと押しは、前走からの上積み次第か。

⑩ウメムスビ
この馬の現状は、スプリンターという見立てでよさそう。GⅠ初騎乗となる角田大河Jが、はたしてどんな作戦を立ててレースに臨んでくるのか。作戦次第では、レース結果に大きな影響を及ぼすことになりそうなので、ゲートを出てからのこの馬の動きからは目が離せない。

⑪ティニア
ここまでは地味な戦績ながら、今年のメンバーなら一発があっても驚けないくらいの力を秘めている。1ハロンの距離延長をプラスに変えてしまう完璧な立ち回りができた時、低評価を覆す瞬間がやってくるのかもしれない。

⑫ダノンタッチダウン
この馬の課題は、ある程度の位置を取りに行った時に、そこから今までのような鋭い決め手を繰り出せるのかどうか、その一点だけと言ってもいい。ただし、最後方でジッとしていて勝ち切れるレースではないだけに、リスクを負って勝ちに行く競馬をするのは妥当な判断。そこから先どうなるかは、私たち競馬ファンの想像力に委ねられる。

⑬スズカダブル
地味な臨戦過程をたどるこの馬だが、マイルの距離で折り合う競馬をしたら、意外や意外、ここでも勝負圏内に絡んできそうな予感も……。時計のかかる馬場、コース取りに無駄のない鞍上と、条件は揃った印象もあるので、人気薄の一発を狙うなら、この馬に最も魅力を感じる。

⑭レイベリング
前走は圧巻の末脚を繰り出しての快勝。全体時計はひと息でも、終いの切れ味だけの比較なら、このメンバーが相手でも十分に通用するだろう。あとは、関西への輸送と、2戦目で気性面が悪いほうに転ばないかどうか。その意味では、やはりパドックの気配は確認必須とみる。

⑮フロムダスク
ここまで逃げて好結果を残しているこの馬だが、この枠の並びでこの鞍上では、「好位の外を追走してあっさりと失速」という姿がどうしても目に浮かんでしまう。万一、単騎逃げが叶うことがあったとしても、それでもなおポテンシャル面で足りないような……。

⑯コーパスクリスティ
この馬にとっては、この条件でうまく脚が溜まるのかどうか、そこがすべてと言ってもいいだろう。ポテンシャル面の比較だけなら、ここでも通用する可能性を感じさせるが、ガツンとハミを取って行くタイプの馬だけに、外回りのマイル戦で外枠を引いてしまっては、さすがに厳しいと言わざるを得ない。もしも一縷の望みがあるとすれば、クセ馬を御す技術はしっかりしている鞍上に期待というところか。

⑰エンファサイズ
この馬の武器は、レースセンスの良さ。2戦目となるここで大幅な体調面の上積みがあるようなら、力的に通用してもおかしくはないが、この馬の長所を最大限に生かそうとするなら、やはりこの大外枠はプラスにならない。望みがあるとすれば、立ち回り上手な鞍上の手腕か。


ということで、ダノンタッチダウン最後に個人的な結論を。


中心には、⑫ダノンタッチダウンを推します。

各ステップレースの中で、最も中身のあるレースをしてきたのは間違いなくこの馬。過度に位置取りを気にせず、中団やや後方から馬の行く気に任せてレースを進めれば、少なくともオールパルフェは楽々と逆転してくるのではないでしょうか。

一点、この馬の課題が序盤の位置取りにあることは衆目一致しているところですが、現状、追走力の担保がない中で、序盤から意識的に位置を取りに行った時に何が起こるのか。そこに不透明な部分が残るのは事実でしょう。

ただこうした課題を考慮に入れたとしても、先週のラヴェルのような競馬にはおそらくならないと思いますし、リバティアイランドほどの完璧なレースはできなくとも、なんだかんだ最後は力の違いで他馬をねじ伏せてしまう可能性が高い。最後はそう判断しました。


2番手は、⑬スズカダブル

ここは序盤の激しい位置取り争いが見込まれる一方、差し・差し決着になると決め打てるような外有利なトラックバイアスでもありませんから、先行馬群の後ろあたりで上手に流れに乗れて、そこからひと脚使える馬をどうしてもケアしておきたくなるのですよね。

ただ、いい位置にいるだけではダメで、そこから泥臭くひと伸びできる馬、ということになると、やはりこの馬に食指が動くことになります。ガチンコ勝負では明らかに足りないと思いますが、これくらいのメンバー構成なら、この馬の器用さと鞍上のズル賢さで上位争いに持ち込める公算は大。そう決め打ってみようと思います。


3番手は、⑭レイベリング

日頃から私は、「GⅠで一戦一勝馬を狙うのはあまりにリスクが大きすぎる」と考えているのですが、この馬に関しては例外扱いしてもいい。それくらいの素質馬だと思うのですよね。

一般的には、前走の勝ちっぷりや血統面ばかりにフォーカスする向きもありますが、個人的に高く評価しているのは、前走の向正面で内から外に弾かれる大きな不利がありながら、その後、馬の後ろに入れて我慢強く走ることができたその精神力の強さ。

皆さんにも、是非、前走のパトロールは観てほしいのですけれど、新馬戦であれほどの致命的な不利を受けながら、最後の直線で爆発的な脚を使える馬に出会うなんてことは滅多にないですからね。

まあ、鹿戸厩舎の馬で関西への輸送がどうかとか、フランケル産駒の2戦目で暴発しないかなど、課題を挙げたらキリがありませんけど、それらに目を瞑ってでも上位に評価したい馬。そんな見解となります。


4番手は、②ドルチェモア

この馬に関しては、見た目以上に高い素質を秘めている可能性があると考えています。よって、これまでにストレスのない競馬しか経験していない点を大幅に割り引くとしても、これ以上評価を下げるのは妥当性を欠く。そう判断しました。

多少ハイペースを追いかける形になっても、鞍上が坂井瑠Jなら中途半端な競馬にはならないでしょうから、厳しい展開にさらされることが予想される先行勢の中で、もしも好走する馬が現れるとすれば、この馬以外はちょっと想像しづらい。そんな評価となります。


最後に、「今よりもっともっと競馬力を磨きたい」とお考えの競馬ファンの方へのご案内です。

私がCAMPFIRE コミュニティで運営する「競馬なんでも相談室 ~あなたに必要な処方箋、ここにあります~」では、競馬をこよなく愛する皆さまのご参加を大歓迎しております!

おススメは、メンバーの皆さんから寄せられた競馬に関するご質問等に一件一件丁寧にお答えする「スタンダートプラン」ですが、月額1,000円で参加が可能で、毎週、GⅠ以外の注目レースに関する詳しい解説が読める「エントリープラン」へのエントリーも、併せてお待ちしております。

サポートは任意です。 この記事があなたのお役に立てた時だけでかまいませんので、サポートしてもらえたら励みになります!