第73回 朝日杯FSの見どころ
明日は、阪神競馬場で朝日杯フューチュリティステークスが開催されます。
今年は、各馬の臨戦過程がバラバラで能力比較が非常に難しくなっていますし、前に行きたい馬が複数いて展開の読みも難しい。そんな中、人気は2頭に集中していますが、はたしてそこまではっきりとした力差があるメンバー構成なのか否か、そこの判断が結果を大きく左右する。そんなレースになりそうです。
では、早速、レースの見どころを解説していくことにしましょう。
阪神11R 朝日杯フューチュリティステークス
今日はまず、各ステップレースのレベル評価からスタートしてみたいと思います。
では最初に、人気の中心になりそうなセリフォスに焦点をあてて、新潟2歳ステークスとデイリー杯2歳ステークスの2レースを検証してみることにことにしましょう。
まずは、新潟2歳ステークスから。
このレースの勝ち時計1:33.8は、前日の古馬3勝クラスのレースの勝ちタイムを上回り、同日古馬2勝クラスのレースで3着だったテンバガーと同タイム。すなわち、この事実だけでも、「古馬2勝クラスと同等のレベルの力があれば、2歳GⅠで十分に勝負になる」という私独自の基準はクリアしています。
ただし、当時の3着オタルエバーが1:34.1、先週中京で行われた低レベルレース、つわぶき賞をギリギリで勝ちきったコムストックロードが1:34.2で走っていることを考えると、ものすごく価値のある時計とまでは言えません。
まあそれでも、少なくとも一定の評価が必要なことだけは、どうやら間違いなさそうですけどね。
次に、デイリー杯2歳ステークス。
ここは、スローからの上がり勝負を、④セリフォスがただ一頭力任せに差し切っただけという形。3着カワキタレブリーが、カジュフェイスが勝ったもみじステークスの5着馬であることも考え合わせると、このレース自体の価値は知れているなというのが率直な評価になるでしょうか。
確かにセリフォスのレース内容は強かったですけど、相手関係がかなり微妙ではあったので、このレースの勝利については特にいいも悪いもない、という評価でいいような気がしています。
今度はもう一頭の人気馬、ジオグリフに焦点をあて、札幌2歳ステークスを振り返ってみることにしましょう。
昨年の1,2着馬はその後GⅠを勝ち、3着馬はGⅡを圧勝と、例年、レースレベルが高くなる傾向が強いこのレースですが、はたして今年はどうだったんでしょうね~。
勝ち時計の1:49.1は、古馬1勝クラス相当。前週に同距離の未勝利戦を勝ったシンティレーションが1:49.2、2着ポッドボレットが1:49.6で、その後シンティレーションはアルテミスステークス6着、ポッドボレットは京都2歳ステークス4着ですから、単純に時計面の比較だけで言うならば、GⅠで即通用と断定できるほどのものではなさそうです。
実際、今年の札幌2歳ステークス組は、3着トーセンヴァンノが東スポ杯で、5着トップキャストが自己条件戦でともに惨敗を喫するなど、かなり低調な成績が続いていますから、レースレベルに関しては、あまり買い被らないほうがいい。個人的には、そう考えています。
ただし、このレースを圧勝したジオグリフだけは、まさに力が違うという圧巻のパフォーマンスを示していましたから、レースレベルが低い中ではあったけれど、その中では完全にモノが違った。少なくとも、それくらいの評価をしておく必要はありそうですね。
このほかのステップレースの中で、時計面ではっきりハイレベルだったと言えるのは、東京スポーツ杯2歳ステークス。
京王杯2歳ステークスがこれに続き、①カジュフェイスが勝ったもみじステークス、⑦ダノンスコーピオンが勝った萩ステークス、⑨ドウデュースが勝ったアイビーステークス、⑪ドーブネが勝ったききょうステークスは、せいぜい古馬1勝クラスと同等までがいいところ。そんな評価でいいように思います。
こうやって見てくると、時計面ではっきりとした裏付けがあるのは、新潟2歳ステークスを勝ったセリフォスだけ。
ただそのセリフォスにしても、当時の3,4着馬のその後のパフォーマンスを見る限りでは、はたしてこのメンバーに入ってそこまで飛び抜けた存在と評価していいのか、という疑問も湧いてくるんですよね。
人気はかなり偏っていますけど、実は意外と伏兵陣にもチャンスのある組み合わせなんじゃないだろうか。個人的には、そんな推論が成り立つと考えています。
次に、展開を見ていくことにしましょう。
ここは、テンにスピードのある①カジュフェイス、二の脚が速い⑥オタルエバーの兼ね合いが付くのかどうかが、スタート後の最初のポイントになりますが、そのほかにもブリンカーを付けてきた⑨プルパレイ、前走の感じだとガツンと行ってしまいそうな⑪ドーブネなどもいますから、少なくとも先週の阪神ジュベナイルFのような、中盤が極端に緩むような展開にはならない。そう考えています。
ならば、道中で馬群が大きく横に広がる形にはならないでしょうから、そこそこバラけて、力さえあれば枠に関係なくどこからでも突っ込んで来られる。そんな感じの、フェアなレースになるんじゃないでしょうかね。
そうすると、必要以上に展開面や通ってくるコースに固執するよりも、能力重視でシンプルに予想を組み立てればいい。そんなアプローチが、このレースには適しているように思います。
ここからは、上位人気の2頭以外の馬について、考察していくことにしましょう。
まずは、3番人気になりそうな⑨ドウデュース。この馬は、現実としてまだ無敗ですし、前に行けて器用なレースができる点は、十分に評価に値すると思います。
ただし、前走で接戦を演じたグランシエロは、馬場傾向に違いがあったとは言え、続く東スポ杯で引っ掛かって暴走したアルナシームすら交わせていませんし、窮屈な競馬を強いられて3着に敗れたアスクビクターモアは、デビュー戦でジオグリフに子ども扱いされていますから、どこをどう見ても、このメンバーで勝ち負けできるという裏付けはないのですよね。
もちろん、未知の魅力はありますから、可能性がゼロとは言いませんけど、少なくともここでこの馬の馬券を買う合理的な理由はない。個人的にはそう理解しています。
続いて、4番人気になりそうな⑦ダノンスコーピオン。この馬も、ドウデュースと同様に2戦2勝。だけど、やはり数字の裏付けに乏しい無敗馬、という位置づけにはなるのでしょう。
ただし、、、です。こちらは、いかに相手のエラーがあったとはいえ、現実としてあの強いキラーアビリティを、持続力を生かして負かしていますからね。その点でこの馬には、数字には表れない確固たる実績がありますから、同じ2戦2勝でも、ドウデュースとは明らかに位置づけが異なる。そうは言えそうです。
5番人気は、⑪ドーブネになるんでしょうか。
この馬、初戦の札幌戦の勝ちっぷりが良くて、世間の注目は別にして、純粋にいい馬だなと思ったんですよね。
ただ、前走で逃げてしまったのは誤算で、はたしてここで折り合いが付くのかどうか。また、前走の相手関係もかなり微妙でしたから、先々はわかりませんが、少なくとも現時点における力関係では、ちょっと足りないんじゃないか、そんな評価でいいような気がします。
ここでは、前日売り6番人気の③アルナシームまで触れておくことにしましょう。
この馬、新馬戦から気性がかなり危なっかしくって、前走の引っ掛かって暴走をあらかじめ予見できたくらいなのですが、それでも残り1ハロンまであの強いメンバー相手に踏ん張っていましたから、スムーズなレースさえできれば、このメンバーに入っても十分に戦える素地はあるように思います。
問題は、そのスムーズなレースができるかどうか、そこをどう考えるかでしょう。乗り替わり、内枠、距離短縮、馬装の工夫、淀みのないペースと、あれこれいい条件が揃っているのは事実ですから、ピンかパーか的な存在ではありますけど、ポテンシャル的にはノーマークにできない馬、そうは言えると思います。
さて、ここからは個人的な見解を。
中心には、持ち時計がなく、追走の担保もないことを承知の上で、⑦ダノンスコーピオンを推すことにします。
人気の2頭が飛び抜けて強いというイメージがない中においては、操縦性に不安がなく、阪神の外回りでキラーアビリティを負かしてきた実績があるこの馬なら、終いはしっかりと脚を使って一気に差を詰めてこられる。そう判断しました。
新馬戦、前走の序盤の行きっぷりを見れば、悪くとも中団やや後ろくらいの位置は取れそうですし、松山Jがその位置からスンナリと外に持ち出せるような形になれば、まず大崩れはしないんじゃないか、と。馬体を併せてしぶといところも、キャリアの浅い面々で争う2歳戦では、ちょっとした強みになるでしょうしね。
あっさりと差し切って当然とまでは言いませんけど、なんだかんだ不安材料を抱える上位人気2頭よりは、こちらのほうが信頼感が上。最終的に、そう判断しました。
そして2番手に、実績を尊重して④セリフォスですね。
こちらは時計面の担保がありますし、馬力で押すタイプだけにC.デムーロJへの乗り替わりも好材料と言えるでしょう。ただし、ダイワメジャー産駒らしく、器用に小脚を使えるタイプではありませんから、勝負どころで前が詰まったりすると、そのまま脚を余して、、、もありそう。展開的にドン詰まりのリスクは小さいと考えますが、何かあった時に崩れるパターンは、少し考えておいたほうがいいのかな、と。
理想は、アドマイヤマーズみたいな競馬ができるといいのですが、そこまで前の位置を取れそうなイメージはありませんし、現状の完成度ではこの馬がNO.1であることを認めつつも、最終的にはこの位置が妥当という判断に至りました。
3番手には、思い切って牝馬の⑩スプリットザシーを取ります。
この馬は、390㎏台の小柄な馬体に似合わない力強いフットワークが魅力。初戦は、勝負どころで苦しい位置に入ってしまって、さすがに届かないか、というところまで一旦下がりながら、そこから一気に盛り返してきたのには、正直、かなり驚かされたのですよね。
スムーズなレースができれば、時計はまだまだ詰まりそうですし、キャリアの浅い牝馬にしては、自爆しそうな雰囲気がないのもいい。こういう時の和田竜Jは、虎視眈々と一発を狙う騎乗をしてきますから、先物買い的な側面はありつつも、狙って面白い存在にはなってくる。そう考えました。
う~ん、4番手は最後の最後まで悩んだんですけど、メイケイエール2世になったら仕方がないと割り切って、③アルナシームをここに置いておくことにします。
正直に言えば、期待よりも不安のほうが大きいのですけれど、この条件でそこそこ上手に走れるようだと、この馬は勝つところまであるような気がするのですよね。今回は人気も控え目ですし、それならリスクを承知でこの位置に置いておいてもいいだろう、最終的にそう判断しました。
上位評価は、この4頭。⑬ジオグリフは、迷いに迷った末、あえて選外の扱いとしました。
この馬の評価を下げた理由は、「ノド鳴り持ち」という情報が陣営から出されているから。その一点に尽きます。
ノド鳴りは、目に見える疾患ではありませんから、私たち競馬ファンにとって、最もたちが悪いんですよね。どんなに強い馬でも、ゼーゼーとノドが鳴ったらからっきし。そんなシーンを過去に何百回と見せられてきた私からすれば、どうしてもこの馬を上位に評価することはできなかったんですよね。
この馬は牡馬で、この時期にわざわざ関西への輸送を経験させておく意味もないのに、なぜホープフルステークスでなくこちらを選んだのか。一説には、「サンデーレーシングの使い分けだ」的な話も出ているようですが、本当のところは、乾燥するこの時期のレースでノドが鳴るのが心配だから、あえて距離の短いこっちを選んできたんじゃないか、と。
これはただの勘ぐりでしかないのですけれど、やっぱりいろいろと考えてしまうわけですよ。まあまあ、ここでも能力は足りる馬だとわかってはいるわけですから、やられたらゴメンナサイしかない。ここは、そう割り切るほかありません。かなりモヤモヤしますけれども、、、
その他、⑫トウシンマカオは、本質は短距離馬で距離延長がマイナス。①カジュフェイスは、この馬が持つ意外性に魅力を感じるものの、展開面と距離延長が課題。⑨ドウデュース、⑪ドーブネは、先に挙げた理由でそれぞれ消しとしました。
なにはさておき、率直に言えばジオグリフに早くノドの手術をしてほしいのですが、そればっかりは私たちにはどうしようもありませんからね~。
う~ん、これでジオグリフに圧勝でもされたら、モヤモヤはMAXに到達してしまうわけですけど、さて、結末はいかに……。
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