天皇賞(秋)の回顧


ゴール前、先にスコーンと抜け出したアーモンドアイに、外からクロノジェネシスとフィエールマンが並んで迫ってくるという手に汗握る素晴らしいレースになりましたね。

展開的には、戦前に予想したとおり、⑪ダノンプレミアムがハナを主張してマイペースに持ち込みました。ラップ的には、前後半で約3秒も差がある完全な決め脚勝負になりましたから、これも事前に予想したとおり、ある程度、前目で受けて、直線で速い脚を使った馬が勝つという順当な結果になりました。

ここで、一旦、レース全体を俯瞰してみると、勝ったアーモンドアイと4着ダノンプレミアムの着差は、昨年とほとんど変わっていないことに気づきます。要するに、昨年と比べて力関係に大きな変化がなかった2頭の間に、フィエールマンとクロノジェネシスが割って入ってきたというわかりやすい構図になっているということ。この点は、今後に向けて重要な気づきになるんじゃないでしょうか。


勝ったアーモンドアイは、パドックでも非常に落ち着いていて、馬体の張りも素晴らしかったですね。精神的に落ち着いていた分、ゲートの中でもじっとしていました。その結果、好スタートを切って絶好のポジションを確保できたことが、この勝利に直結したと断言してもいいでしょう。

ただ、別の視点で見ると、すべてがうまく運んでこの着差ですから、今のアーモンドアイは、確かに強いけど別格の存在とまでは言えないという見方もできます。次走、どこを使ってくるのかはわかりませんが、今回の勝利でやっぱり圧倒的に強い馬なんだと捉えるのは、個人的にはちょっと違うのかなとも思います。


2着フィエールマンは、レースの上がり4ハロンが11.7 - 10.9 - 11.1 - 11.6という流れの中、後方から猛然と差を詰めてきたのですから、究極の切れ味を発揮してきたと言えるでしょう。半年ぶりでも、仕上がりはむしろ前走の天皇賞(春)以上に映りましたが、それ以上に、この馬は本来、ステイヤーなどではなく生粋の中距離馬だからこそ、こんな圧巻のレースを披露することができたのだと思います。

そう考えると、スタート直後にクロノジェネシスに寄られて下がったのは本当に痛かったですね。それがなければ、おそらくこの馬が勝っていたんじゃないかと思うだけに、引退後の処遇まで考えるとちょっとかわいそうな結果になってしまったと言えるかもしれません。


3着クロノジェネシスは、ゲート内で落ち着きがなく、左にもたれた状態のままスタート切ったことで、やや立ち遅れてしまいました。本来ならアーモンドアイよりも前の位置を取りたかったはずですが、北村友Jの思惑どおりに運ぶことができず、結果として、かなり苦しい競馬を強いられる形になってしまいました。

それでも、もともと2歳時からハイレベルの切れ味を併せ持つこの馬だからこそ、終いは地力で差を詰めてきました。もしこの馬が普通の力馬だったら、こんな芸当ができるわけもありませんから、事前にキレ負けすると指摘していた予想家たちにひと泡吹かせる走りは、なんとか見せつけられたのかなとも思います。いずれにしても、今日のところは上手くいかなかっただけ。この馬の成長力の凄さは、間違いなくホンモノだということでしょう。


4着ダノンプレミアムは、自分のレースはしっかりとできましたが、結果は完敗。もうこれは、完全に力の差としか言いようがありません。

5着キセキは、好スタート切ったことで、逆にやや中途半端なレースになってしまった印象もあります。じっくりと溜めたとしても、おそらく4着までだったとは思いますが、今日はこの馬の器用貧乏的なキャラクターが前面に出てしまった印象が強いですね。

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