菊花賞の見どころ


明日は、京都競馬場で菊花賞が行われます。競馬ファンのみならず、一般の人々も巻き込んでコントレイルの3冠なるかに注目が集まっていますが、ここでは先週の秋華賞同様、レース全体を俯瞰した上で、しっかりとレースをシミュレーションしながら見どころを解説していくことにしましょう。

もともと京都の3,000mは、圧倒的に内枠が有利なコース。その理由は、スタートから1周目の3コーナーまでの距離が短いため、外枠から積極的に出して行くのは、折り合い面を考えるとあまりにリスクが大きくなるからです。

過去10年を振り返ると、意外と外枠の馬が善戦している印象もあるのですが、好走しているのはソロリとゲートを出した差し馬ばかり。外枠の先行馬で馬券圏内に好走したのは、2015年3着のリアファルだけという惨状なんですよね。今年は馬場の内側が荒れていて、土曜日も先週ほど極端ではないまでも、やや外目有利のバイアスになっていたわけですが、前半、多少馬場の悪いところを走らされたとしても、内枠有利は絶対に揺るがないと考えていいと思います。

それともうひとつ、今年の京都の芝コースは、比較的時計が出ている外回りのレースでも、それなりに力が要る馬場になっていることは、是非、頭に入れておきたいところです。例年の軽い馬場なら距離をこなせる馬であっても、今の馬場だと、最後の追い比べで伸び切れない。そんな、シーンも想像しておく必要があるかなと。やはり、最低限のスタミナの裏付けはほしいところですね。


展開的には、スタート直後は⑪バビットが先行する形になるでしょうが、イメージとしては、大外から⑰キメラヴェリテが押して押して強引にハナを取り切る形を想像しています。そうなった時、まず最初に問題となるのは、⑪バビットが離れた2番手でスンナリ折り合えるかというところですね。ここをどう読むかで、予想の組み立ては大きく変わってくると思います。

ただいずれにしても、18頭が団子状態のまま正面スタンド前になだれ込んでくる画は想像しづらく、ポツン(⑰キメラヴェリテ)、ポツン(⑪バビット)、グチャ(その他の馬)という形になる可能性が高いでしょう。そういう意味では、やはり1周目の3~4コーナーを前に馬を置いていかにリズム良く回ってこられるかが、このレース序盤の最も重要な見どころになります。おそらく1周目のゴール板を通過する頃には、勝負に参加できる馬がかなり絞られていると考えていいのではないでしょうか。


ではここから、これらの極めて重要な前提条件を踏まえつつ、出走各馬について評価していきます。なお今回は、特に各ステップレースのレベルや、そこでの各馬のレースぶりにフォーカスしながら、ある程度、有力馬を絞り込んだ上で解説を加えていくスタイルを採用することにしようと思います。


では、コントレイルが勝った神戸新聞杯から。このレース、コントレイルをはじめとして、春のクラシック戦線を戦ってきた馬が多数出走していたわけですが、正直なところ、走破時計を見てもレースレベルが高いようには思えませんでした。

楽勝だったコントレイルと、枠順や調整過程などさまざまな悪条件が重なった中で2着したヴェルトライゼンデはともかくとしても、2着と僅差の3着が1勝馬のロバートソンキーですから、4着以下の馬に関しては、どう考えても高い評価などできるわけがありません。もしこの組から勝ち負けする馬が出てくるとすれば、コントレイルとヴェルトライゼンデだけ。そんな素直な評価でいいと思います。


次に、バビットが勝ったセントライト記念を振り返っておきましょう。実はこのレースも、見るべきものがあったとは言い難いのですよね。自分でレースをつくって勝ち切ったバビット、長く脚を使って2着したサトノフラッグ、ジリジリと最後まで脚を使っていた5着ヴァルコスには、それなりに見るべきものがあったと評価することもできますが、その3頭にしても、特筆するほどの走りを見せたとまでは言えません。

ヴァルコスあたりは、舞台が京都の3,000mに替わるのはプラスでしょうが、それでもここで勝ち負けに加わることは簡単ではないでしょう。そうなると、セントライト記念組は全滅も普通にあり得るかなと思います。


こうして2つの主要なトライアルレースを振り返ると、実はどちらもさほどレベルが高くはなかったことに気づきます。そこで、俄然注目となるのが、条件戦を勝ち上がってきた組。ここでは、アリストテレスが勝った小牧特別とダノングロワールが勝った九十九里特別を振り返っておこうと思います。

まずは、小牧特別。多少の馬場差があったとは言え、単純な勝ち時計の比較でも神戸新聞杯を軽く上回っていますし、ラップの推移もこちらのほうが優秀。このレースで2着のフライライクバードは、ディープボンドを1勝クラスのレースでひとひねりしていますし、3着ヒートオンビートも春はディアマンミノルをまったく寄せ付けませんでしたから、相手関係を見ても単なる2勝クラスのレースではなかったと言えるでしょう。そう考えると、単なるレースレベルの比較からだけでも、アリストテレスは菊花賞でも十分に勝負に計算が成り立ちますね。

次に、九十九里特別。当時の馬場が水分を含んでいたこともあって、時計の評価は難しいところもあるのですが、2着が3歳牝馬のウインキートスであることを考えると、こちらは普通の2勝クラスのレースだったと見ていいでしょう。ただ、ジリジリと脚を伸ばしてゴール前でギリギリ差し切ったダノングロワールのしぶとさは、時計以上の評価ができるのも事実なので、その点は、少し頭の片隅に入れておいたほうがいいかもしれません。


一旦、まとめると、主にレースレベルの比較から、コントレイル、ヴェルトライゼンデ、アリストテレスの3頭が能力的には上位で、そこにダノングロワールを加えた4頭が走破圏と見ることができると思います。もちろん、レース条件が特殊なため、他の馬にもチャンスはあると思いますが、そこまでは拾いきれないと割り切ることも大切でしょう。

ここで少しだけ心情的な話をしておくと、もちろんコントレイルに3冠を達成してもらいたい気持ちはありますし、ナカヤマフェスタ産駒のバビットに光が当たるシーンも観てみたい。でも、それが現実になるかというと、僕はちょっと懐疑的に見ているのですよね。

たしかにコントレイルのこれまでのレースぶりは、ケチのつけようがないものに違いはないのですが、ハミの取り方がマイラーのそれであることや、母馬も兄弟馬もスプリンターである血筋をも考慮すると、今の力の要る京都の馬場で、これまでのように悠々と差し切って楽勝というシーンがどうしても想像できないのです。内枠を引いたことで多少は3冠達成の確率が上がったとは思いますが、僕の評価では、これまでまったく寄せ付けなかったヴェルトライゼンデにも逆転される可能性があるんじゃないかと見ています。

コントレイルとヴェルトライゼンデの関係性は、昔でいうところのミホノブルボンとライスシャワーの関係性に近い気がするんです。コントレイルも、圧倒的なポテンシャルの高さで大敗はしないだろうけど、やっぱり最後の最後で詰めを欠くんじゃないかと。


では、最後に結論を。時計面でも相手関係的にもしっかりとした裏付けがあって、この距離もむしろ歓迎。枠の並びも手ごろで、しかも先行してしぶとい脚が使え、さらに鞍上はルメールJ。え~と~、ここまで条件が揃っていれば、本命はアリストテレスでいいでしょう。

2番手には、この条件なら実はこっちなんじゃないのと思えるレースをしてきたヴェルトライゼンデを抜擢。そして差のない3番手が、コントレイル。最後4番手に、自分の脚はしっかりと使ってきそうなダノングロワールという評価にしておきます。

まあ、こんな僕の評価を覆してコントレイルが3冠を達成してくれたら、それはそれでうれしいのですけれど、さてさて、いったいどんなレースになることやら。今から、ゲートが開く瞬間を楽しみにしていようと思います。

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