【ウィキペディア】2024/10/25 都内某所でのウィキペディアの勉強会
「第64回東京名物神田古本まつり」の喧騒をすり抜け、やってまいりました大きなビル。
今回はここで、ある企業の有志の方々に対してウィキペディアについてのお話をし、編集を少し体験していただくイベントを行います。
コーディネートしてくださったSさんは、これは私の勝手な想像なのですが、自身の業界に大きな変化が訪れていることから、個々のスキルに昇華できるような勉強会を開催したいという意欲があったと思うのです。
そんな中で日常的によく使ったり目にするけれど、なんだかよくわからないウィキペディアのことを知ることで、例えば「組織」「業務指示」「善意」といった要素、ふつうの社会人が常識的に持っているものとは違う視点で考えるきっかけになると思っていただけるよう、またところどころで業界に関する事例をお話しすることで、何らかのヒントを持って帰ってもらえたらなと思いながら、講師を務めました。
基本的に、業種や社名などは公開しません。
ただ、このレポートを読んだ方が想像するのは自由です。
私の目論見
まず、今日のイベントでの体験で終わり、という風になりにくくするために、ガイドページを作りました。
今後ウィキペディアの編集を続けていただけるならば、きっと役に立つであろうというポイントのリンク集です
ウィキペディアの記事を執筆するにあたって必要な要素の一つに、リサーチ力があります。自分自身が物知りである必要はありません。特にビジネスにおいてはクライアントまたは見込み客という相手が必ず存在しますから、相手のニーズや業界についてあらかじめ多くの知識を持っているケースのほうが少ないことも充分考えられます。
このリンク集では、私が記事を執筆するにあたって参考にする情報へのアクセスの手立てについて載せてあります。
また、ウィキペディアの記事の書き方そのものや方針、あるいは評価が高い記事を参考にすることについて、単にそこに道があるということだけでなく
「一つの事物に対してどれだけフラットで多角的な視点を持ち、情報を裏打ちができるか」
というためのものでもあるのです。
ウィキペディアについて
オンライン百科事典
ウィキメディア財団が運営(非営利)
300以上の言語版
日本語版(2001年~)の記事数 約143万
143万÷23年÷365日≒170/dayのペースで新規記事が増えている計算になる(つまり商用プロジェクトでは量的な部分で難しい)
日本語版は1日に3500万~4000万アクセス
ウィキペディア全体では世界で7番目にアクセスが多いサイト
作業指示系統なし
宣伝は不可
誰でも編集ができる
編集履歴が残る
無料で閲覧ができる
(ライセンス条件を満たせば)コンテンツの再利用が可能
広告がない/寄付で運営されている 2023/6 寄付238億円
コンテンツの再利用について、実際の再利用例と、なぜそういうシステムになっているのかの説明のひとつとして、「ウィキペディアの記事で他人が書いた記述(著作物)をいじるにあたって、誰での改変可能であるというライセンスでないと立ちいかないという理由もある」と説明しました。
2023年の寄付額は約238億円。これはヴィレッジ・ヴァンガードの年間売り上げとあまり変わらない、と補足しました。
内部リンク
記事中で、文字列が青いのはウィキペディア内のほかの記事に飛ぶためのリンクがあるということ。赤い文字列はその文字列のタイトルでは記事がないということを説明。記事がなければ読者には情報は届かないが、逆に言えば編集者にとっては新規記事を書くための宝の山でもあると補足。
参加者にとってなじみのある、ある企業の社名をグーグル検索すると検索結果のトップにはその企業の公式サイトが出るが、右側にウィキペディアへのサイトが表示されることを、プロジェクタに映して確認。
公式サイトの凝った演出がなされたWebページと、ウィキペディアの武骨な情報の表示では、検索した人が得たい情報としてどちらが適切なのか。
またこの企業のウィキペディアページはアクセスがどれくらいあり、その傾向から想像できるアクセスしている人たちはどんな人たちなのかについても、個人的な見解を披露しました。
ウィキペディアの信頼性
業種に沿った形で、ウィキペディアに掲載されている情報の信頼性の話をしました。通常の書籍の信頼性、ティラノザウルスの姿の変遷、などからウィキペディアが目指していること、ウィキペディアにおける記述の信頼性の担保の仕方について説明しました。
まともな社会人ならば、いきなりウィキペディアの編集をバンバンやっていくことに対して、抵抗があるはずです。
間違ったことを書いてはいけない、編集を失敗したらどうしよう、誰かが書いたことをいじっていいものだろうか。
当然の反応です。ですが、ウィキペディアの編集には指示系統や義務がないこと、誰かが物理的に怪我をするなんて結果にならないことなどを説明し、そのベクトルで考えるのではなく、書いたことによって誰かの役に立つのだという善意が先に来ると話しました。
編集方針や、出典についての細かい説明をした後、編集デモを行いました。
題材に選んだのは、この週のベストセラーランキングに入っていた、星野源さんの著書の情報です。
書籍のタイトルと発行年度、出版社がたんに書かれているだけだったので、そこに出典情報を加えることで、記述の信頼性が増すことを確認していただきました。
限られた時間でしたが、参加者の方々に実際の編集をしていただきました。
これは勉強会なので、編集体験は確かに大事なのですが、このミッションをこなしたからOKというのが本来の目的ではありません。
編集することにより、自分の書いた記述が多くの読者にとってのとっかかりの情報として採用される、あるいは参考にされます。仮に自分が全く知らないジャンルであっても(私が大して好きでもないアジフライやプッチンプリンの記事を書いてみた例も出しつつ)、リサーチ力があれば誰かに情報を届けられること。その際の先入観を抑えたアプローチや、なじみのない情報の発見など、個々のスキルとして持ち帰れることのフラグメントがいろいろあるのですよと。
トップ画像は、素敵な勉強会会場にあったボードゲームです。