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#181 信用クレジットを貯める仕事スタンス 24/5/25
みなさん、こんにちは。
今日は、仕事のスタンスと信用を考えます。
(実例を基に編集しています)
先日、ある課長Aさんから相談を受けました。担当しているチームメンバーBさんのマネージメントに苦慮しているとの背景です。紐解くには、採用時にまで遡ってミスコミュニケーションがあるようです。少し背景説明が長くなります。
Bさんの主訴
「自分が任されている仕事範囲は、等級定義に照らすと(現在の格付けの)2つ以上上の等級定義に当てはまります上長にリードされることなく、むしろお客様に対する提案を主導しています」
「面接時には、新しい技術やサービスを扱えるように支援・指導してもらえると聞いて入社してを決めた。支援、指導もしてもらえていない。指導については自分のほうが知見があるくらい」
「前の上長やプロジェクトマネージャーは、その2つ以上上の等級です。しかし提案がお客様に通らないこともあれば、失注もしています」
「課長、部長層は、この分野のことを学んでいない。理解していない。お客様にもそう言われている」
「この5月から、現場責任者を任されることになったが、前期評価では等級の昇格はなかった」
以上から「評価や経緯についても納得ができない」と言われて、会話を重ねてきました。そして当人は、「この会社は自分に合っていない」と批判と退職を示唆しているようです。
相談してくれた課長Aさんは、4月から当該組織の管掌を引き継ぎ、提案云々の上長は前任の課長CさんとプロジェクトマネージャーDさんです。
課長からの相談と時を同じくして、この当人から人事部も宛に訴えが入りました。内容は、上記のとおり、課長Aさんが経緯を共有してくれたものとほぼ同じです。
この事案自体のあれこれは少し置きますが、この事案の構造を見てみます。そのドメインで必要とされる、いわゆるテクニカルスキルは十分に持っている。クライアントへの顧客目線もある。一方、モノの捉え方や考え方に偏りがある。そんなプロファイルでしょうか。
以前#104でこんな記事をエントリーしました。
自社に、どんな人材を採用し、どんな人材を社内に増やすか、を考えるフレームワークです。
人間性が良い 人間性が悪い
仕事ができる A:みんながほしい B:現実の利に目を瞑る
仕事ができない D:変化なければ排除 C:避けたい
今回相談の従業員は、Bタイプと思われます(注:人間性が悪いわけではありません)。このタイプは、仕事はできるため、管理職から見ると、目先の利益や現実的な組織事情を考慮し、ついつい痛みの伴う決断や判断を先送りしてしまうインセンティブが働いてしまう人材群です。
課長Aさん、その上長の部長には、現場責任者を任せるのかどうか、再考の決断が必要かもしれません。
一方、従業員Bさんが気づけるかどうか、の課題があります。それは、自分に信用クレジットが貯まっているのかどうか、自分の行動が信用クレジットを積み上げる行為なのか、です。
評価に対して不満を言うことは構わないと考えています。職種に求められるテクニカルスキル要件と、実際に任されている仕事からすると、おそらくはBさんは今の格付けの1つか2つ上の等級に該当するのだと想像できます。
一方、お客様に価値を提供する当社チームとしては、Bさんも、課長Aさんも、前任のCさん、Dさんも同じチームであり、サービサーです。その相手を批判・非難するだけでは、信用クレジットを集めることには至りにくいと考えています。
現在の益々サービスやそこで求められる専門性に遠心力が働き、その技術的な分野は細分化が進んでいると考えます。ですから、管理職だからといって、チームメンバーよりすべての面で知見を持っていることはあり得ません。
上意下達で、管理職が背中を見せて教える仕事のスタイルではなくなっています。プロジェクト型の仕事で、それぞれが持っている得意技を終結させて、仕事にあたるスタイルがますます求められます。
ですから、健全な批判とセットで解決策が求められます。塀の向こう側から石ころを投げつけている行為をしていては、信用クレジットは増えません。リーダーシップの発揮の仕方としても、適切とは思えません。
ですから、まず自分が信用クレジットをどのくらい相手に積み上げているか、をそれぞれが足元を見つめることが1つです。そして、特に不足していると自覚した場合は、相手に信用クレジットをもらうためにはどんな行動ができるか、これもそれぞれが自分を見つめてアクションを取ることだと考えます。
つまり、その仕事ができるだけでは、あくまでも自分資本=人的資本があるだけで、社会関係資本にはなりえていないわけです。等級の格付け評価が上がる、役職任用されるとは、人的資本の価値で見ているのではなく、その人が積み上げた社会関係資本≒信用クレジットに基づくものだと考えます。
そのことを、このケースの課長Aさん、当事者Bさんもきづけるとよいと考えます。わたしたち人事部門も、このことを示唆し、助力できればと考えています。
みなさんは、今の仕事で信用クレジットをどのくらい積み上げていると自覚できていらっしゃいますか。
それでは、また。