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#232 心理的事実が社会資本に影響を与える 24/8/21
みなさん、こんにちは。
今日は、キャリア形成における社会資本を考えます。
(実例を基に編集しています)
先日、ある管理部門の課長Aさんと1on1をさせてもらいました。そこでA課長はもやもやを話してくれました。Aさんは、2つの事業部門の経営企画・管理を兼務し、課長としての職務を担っていました。わたしも仕事上絡むことが少なからずありますが、大変そうですが任されている仕事の成果・職務を果たしているように見えています。
そんなAさんが、今年度4月を迎えるタイミングで、一方の事業担当から兼務を解かれ、もう一方の事業のみを担当することに変わりました。そのことについて、もやもやを消化できずに、人事のわたしに1on1を依頼されたそうです。
何がもやもやとしているか、です。
Aさん自身も「自分は任されている職務を果たし、その成果や貢献を果たしてきた」と自覚し、良い意味の自己信頼をもっていました。しかしながら、4月のタイミングで一方の事業から「外れる」ことになったこと、その背景や理由について、「納得感を持てていない」様子でした。
というのも、もう一方の事業には、Aさんの後任課長には、経営管理の経験がない方が着任されたからです。前職で管理部門経験はあるが、経営管理そのものの経験はなく、品質を落とすバッファーがあまりない業務特性において、「なぜなのか」いまだ消化できない様子でした。
さらに話を聞いていくと、Aさん自身は、自身の上長であった事業部門長に、「なぜこのタイミングで、業務品質が落ちることが明白な、業務未経験者を就けるのか。(Aさん)自身に、何か問題があるなら指摘してほしい」と率直に、疑問を投げかけたそうです。
事業部門長からは「もちろん品質が落ちることはほぼ間違いなくあると考えている。Aさん自身が業務面ではもちろん、事業経営を俯瞰した観点から問うてくれたり、示唆を与えてくれたり、貢献してくれていることも認めている。一方、2つの事業を担当していることで、『もっとやってほしい』要望を控えてしまうことがあるし、部長陣も同様の意見を持っている。これから、一層の成長路線を進む事業において、専任担当を確立して、事業運営をしたい」との回答を受けたようです。
これ自体は至極真っ当な考えで、わたしもそうだな、と思います。Aさんもそのこと自体には一定の理解はあると仰っていました。一方、「もっとやってほしい」要望については、やや「腹落ちできない」とAさんは吐露してくれました。Aさんと部長、Aさんと事業部門長との定期的な1on1の中でも、折々で要望や経営管理に関する課題を聞いていたものの、「特段のものはない」と言われることが多かったようです。一方、相手が忖度して、あえて要望を言うのを抑制していたことも考えられます。
Aさん自身は、「結局、信頼関係が十分でなかったんでしょうね」とわたしとの1on1で、今この時点の振り返りと結論に帰着していることを話してくれました。
つきつめていえば、わたしもAさんの結論には同意します。しかしながら、上意下達の、顧客(この場合、事業部門長と部長陣)優位の、Master-Slaveの関係性に基づくような、Aさんの信頼構築が不足している、と結論付けるのは、一方的でありすぎるのではないか、と客観的な立場から、わたしは考えるに至りました。
感情的にも、経営管理経験のない課長を後任に据えることも、わたしがAさんの立場であれば、同じように「なぜ?」と疑問を持つだろうな、と感じます。
お題に戻ると、社会関係資本は、成果貢献をしている客観的事実があったとしても、寄り添いのような情緒的な心理的事実が物を言うことが往々にしてあるな、と考えます。
キャリアを形成していくには、成果を提供する、成果を出すためのスキル・経験がある、との客観的事実よりも、権限・権力のある人の心理的事実に基づく信頼関係資本を得ておくことが重視されることがこのAさんの話から、改めて理解するに至りました。
なお、Aさんが不足していた、瑕疵があるとは思っていません。其の時点の時間軸では、かみ合わせの悪さが決定的になったのだろう、と思料します。
Aさんの話は、他山の石として、わたし自身もよくよく学びがありました。
さて、みなさんは社会関係資本の下になる信頼関係を積み上げていらっしゃいますか。
それでは、また。