#189 人事の三層機能と、にわか人事 24/6/2
みなさん、こんにちは。
今日は、人事部門の仕事や機能について考えます。
人事の仕事は、広範にわたります。
人材のライフサイクル・フローで考えれば、入社・採用、配置、育成、評価、退職の大きく4段階のプロセスがあります。
組織機能的に表現すれば、不変的な機能と可変的な機能です。
前者はさらに、その必然性から、1階・2階に分けることができます。そして後者が3階です。
1階は、家屋でいう基礎です。
労働法順守対応、就業規則など規程・規定の企画と運用、労働時間管理、給与計算・社会保険周り、従業員の人事情報管理あたりの機能です。
2階は、建物の支柱、床・壁などハード面です。
人事基幹制度(等級・報酬・評価)の企画と運用、採用活動、要員計画と管理、人件費管理、労務トラブル対応、労務リスク管理、人事システムの運用、異動・配置、教育研修あたりの機能です。
そして3階は、オプショナルなソフト面と考えられます。流行やトレンドも含まれる施策的な色合いが強い階層です。
タレントマネジメント、後継者育成プラン、キャリアデザイン、公募制度、DI&E、女性活躍推進、人的資本経営、アルムナイ制度、各種の研修、社内大学、社内総会などイベント、サークル活動、ポータルサイト、従業員エンゲージメント、副業制度、SNS発信など広報PR活動、インセンティブ制度、社内表彰制度、ストックオプションなどなどです。
※人的資本経営やDI&Eなどは、基幹的になる可能性がありえますが、現段階では長期でみたら一時的なトレンドと捉えます。
メディアで喧伝されたり、人事をやりたいと言う人に多いのは、圧倒的に3階部分の可変的な機能です。目につきやすい、新しい、メディアでもてはやされるから、そこに目が行くある種自然な構造かもしれません。
しかしながら、会社や従業員を支える基盤は、文字通り1階、2階の基礎・基幹の人事システムです。人事部門の仕事に直接的に携わったことがないと、目立ちませんし、メディアにも取り上げられることはほとんどありません。
仕事の中身も地味です。頻繁に改定などの企画が走るわけではありませんから、趣旨に沿った運用と、運用しながらちょっとずつチューニングを整える保守が中心です。ですが、ここがキモであることは言うまでもありません。わたし自身は、「人事は運用が9割」と言っているくらいです。
(実例を基に編集しています)
わたしの所属会社では、事業部門内に、より事業部門それぞれの課題にフィットさせるべく、事業部の人事ではなく、部門内企画部門が設置されることが増えてきています。主に、幹部の秘書的機能と営業事務機能、そして人事的な機能の3つに分かれます。
ここでわたしが問題意識を感じているのが、人事的な機能組織です。この場合、人事経験はない従業員がスタッフとして配置されます。その機能は、上の機能でいうと3階的な機能を、その事業部門の関心に合わせて提供します。
3階機能は流行と言い換えることもできます。ですから、メディア(ウェブや書籍、他社事例)の露出も豊富ですから、聞きかじりとちょっとしたインプットで、取り入れることができてしまう機能です。蛇口輸入が簡単にできてしまいます。
しかしながら、表層的に導入し、真似ることはできても、その定着、ましてや狙った効果を生み出すには、相当なパワーと専門性、畢竟リーダーシップが必要です。当然、狙った効果に至ることはかなり少なく、「やったよね」の頑張った感と、自己満足感で雲散霧消になる取り組みが多数見られます。
新規事業同様に、多産多死と言えば聞こえはよいですが、その施策の受け手は従業員ですから、そう割り切ることもできないことも多分にあると考えます。ここに、タイトルの、にわか人事に対するアンチテーゼが生まれます。
いろいろなことに取り組む、チャレンジと言えば耳障りはよいのですが、その分野の基礎的なこともない中で、従業員相手の影響の大きいことを仕掛けるには、やや身の丈に合っていないように感じることが強いです。
1階、2階と同様に、基礎があり、骨格があり、とどんな仕事にも基礎をつくり、その上で取り組めるとサービスの受け手である相手にもいい影響をもたらしますし、その職務を専門にしている人たちへの敬意を表すことになるのではないか、と考えます。
さて、みなさんの会社の人事機能と組織は、どのような形態をとられていますか。
それでは、また。