ファイナンス(企業財務)の基本⑰:「リスクの定量化」について、まとめてみた その3
前回は「リスクの定量化」に関して、「統計学的な観点」も少し交えてご紹介しました。
今回は、「リスクの定量化」のメインディッシュ(のひとつ)となる「ポートフォリオ理論」について、書いていきたいと思います。
まずは、前回のおさらいです。
「ポートフォリオ理論」を理解するための統計学的な予備知識(前回のおさらい)
統計学的な予備知識については、若干ボリュームもあるので、前回記事を引用させていただきます。
「ポートフォリオ理論」とは
手持ちの資金を1つの金融資産や銘柄に集中投資すると、その金融資産や銘柄が値上がりすれば期待どおりのリターンが得られますが、値下がりすると大きな損失を出します。
そこで、リスク(=リターンのばらつき)を極小化するために、複数の金融資産や銘柄に分散して資金を投資し、1 つの金融資産や銘柄が値下がりしても、他の金融資産や銘柄の値上がりで相殺され、全体では大きな損失が出るのを回避しようとするのが、「ポートフォリオ理論」の考え方です。
余談ですが、自分は、この「ポートフォリオ理論」を初めて学んだ時、「ハリーポッターのヴォルデモード卿の分霊箱」を思い浮かべました(分散する、という点だけです)。
例えば、前回の例では、ワイン株あるいはビール株のみに投資するのではなく、「双方に分散して投資することによって、リスクを極力最小化しつつ、最大限のリターンを得ることを目指す」といった考え方をします。
ここから、2つの株式A、Bから成るポートフォリオを考えます。
E (rp) = Wa x E (rA) + Wb x E (rB)
E (rp):ポートフォリオの期待リターン
E (ri) :株式iの期待リターン
Wi :ポートフォリオ構成比 (Wa + Wb = 1)
ポートフォリオの期待リターンは、株式Aの期待リターンと株式Bの期待リターンの間の数値となり、2つの株式の期待リターンの加重平均となります。
また、2つの株式の相関係数を変えて、リスク(標準偏差)とリターンの関係を考えてみると、次のようになります。
相関係数が1の場合、2つの株式はまったく同じ方向に動く(一方が上昇したときは、もう一方も同じ割合上昇する)ので、ポートフォリオの標準偏差は2 つの株式の標準偏差の加重平均となる
-1 < 相関係数 < 1の場合、ポートフォリオの標準偏差は2つの株式の標準偏差の加重平均より小さくなり、相関係数が小さいほど、同一のリターンに対する標準偏差は小さくなる
相関係数が-1の場合、2つの株式はまったく逆の方向に動く(一方が上昇したときは、もう一方は同じ割合下落する)ので、2つの株式をうまく組み合わせれば、ポートフォリオの標準偏差をゼロとすることができる
ここで見てわかるように、ポートフォリオが効いてくるのは、上の2、3の場合となります。株式が2つ以上のポートフォリオについても、同様に捉えることができます。
今回は、ここまでにします。
次回、ワインとビールの例を使って、ポートフォリオの期待リターンを計算してみたいと思います。