天使にパズル No.3
母は、僕に学校に行きなさいと強要はしない。
父は、滅多に家に帰ってこなくて会わないから分からない。
おかげで僕は、学校に行かないことについて
罪悪感を抱くことなはい。
学校に行く時間が減ると、
家にいる時間が増えるのは当然だ。
その時間は、何も考えずにテレビを観たり、
気が向いたら色んな問題集を解いたり、
絵をかいたり。
最近はよく1人で電車に乗って
遠出するようになった。
補導されたり、
変な人に絡まれたりしないように、
大人っぽい服を着て、
マスクをつけて行く。
知らない場所に行くのは不安だし、
勇気はいるけれど、あの教室に行くよりずっと楽しくて自由だ。
市街地の中心にある大きな広い駅や、
小さな町にある古めかしい無人駅。
どこもそんなに離れてはいないはずなのに、
人の多い町、
少ない町。
お年寄りが多い町、
子ども連れが多い町。
いろんな町があって面白い。
今日は、東の方向に向かって6駅
そこは、どうやら古めかしくレトロな雰囲気の建造物が多く遺されている町で、
観光地としても人気の高い場所らしい。
僕は毎回、新しい町に行くときに
その下見として何が有名なのか、
どんな町なのかを調べてから行く。
もちろん何があるか分からないワクワク感も
大切にしたいけれど、
母に行き先がどんな街なのかを
報告してから行く、
というルールが最近出来てしまったから、
それはできなくなってしまった。
切符を買って、早速電車に乗り込む。
ICカードは何となく嫌で使っていない。
暫くして、電車の扉が閉まり、
ゆっくりと速度を上げながら右へと重たい車体は進んでゆく。
僕は、電車のカタンカタンという
揺れと溶け合うくらいに深く座席に座る。
そして徐々に、
乗ってしまった電車からもう降りることが
出来ないということに少し不安を抱く。
この気持ちからは何度電車に乗っても
逃れることが出来ない。
今日はどんな町が僕を待っているんだろう。
そう思った時にはもう、
僕の心は不安よりも期待の気持ちの方が大きく強くなっていた。
つづく