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③カヌー旅、一難去ってまた一難
いやー、地上にいるとは自由がある。
さわやかな朝を迎えた私は背伸びをした。
やはり水の上にいるというのは、
危険と隣り合わせなのだ。
これからは陸地が存在することに感謝していこう。
そんな陸地への感謝とともに、
昨日のプチ遭難を乗り越えた私たちは、
いっそう団結力を高めていた。
プチ遭難のエッセイはこちらから↓
だが今日も風が強い。
大きく波打っている。
このままでは昨日のような状況になりかねない。
私がみんなより小さく体重が軽く、
カヌーが安定しないので、
今日はがたいが大きいアリと
ペアーを組むこととなった。
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荷物をカヌーに乗せ、
早速私たちは出発した。
私とアリを乗せたカヌーが先頭をきった。
アリが前方に座り舵をきってくれる。
アリが私たち4人の中で、
1番カヌーの経験があった。
カヌーが重くなったことで安定感もあり、
この荒波の中でもどんどん進んでいく。
アリよ、君こそが私のパートナーだ。
新しく得たパートナーと
打ち寄せる波を次々と乗り越えていく。
私たちはまぎれもなく波乗り野郎だ!
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しばらくしてからGPSで現在地を確認した。
そして既に目的地としていた
Sea Gull Lake(シーガル湖)の上にいることが分かった。
今夜過ごす予定の島はもうすぐそこだ。
一行はそれぞれのカヌーを島に引き上げ、
強風の中でテントを張った。
木々が激しく揺れている。
まるでダンスをしているようだ。
まだ昼過ぎだったので、
私たちは各々昼食をとったり
ハンモックで昼寝をしたり
湖の水を専用フィルターでこして
飲み水を用意したりした。
昼寝のあとは
湾になっていた場所で泳ぎ始めた。
私たちは既に4日間、
シャワーを浴びていなかった。
日中の気温は平均して21度ほどで
決して暑くはないのだが、
さすが4日間もシャワーを浴びていないと
あらゆるところが痒いのである。
自然保護区のため
シャンプーやソープを使用できないのだが、
水シャンくらいはできる。
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へレーナとアリは素っ裸になり、
次々に水に飛び込んでいった。
人の裸を見るが恥ずかしい私は、
なるべく彼らの裸体を見ないように努めた。
私とステフは
ショートパンツとトップスを着て泳ぎ始めた。
裸組は湾の一番奥の岩場に泳ぎ着いていた。
私は泳ぐのは好きだが得意ではない。
ゆっくり泳いでいると、
かなり深い場所にいることに気が付いた。
私は恐怖を感じ地上に戻ることにした。
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だがすでに体力の限界だったのだろう。
体が沈み始めたのである。
ショートパンツ・Tシャツ・ウォーターシューズの
重みも災いしたに違いない。
まずいと思った私は、
体を仰向けにして泳ぎ始めた。
顔を水面から出して
必死で空気を吸い込もうとした。
足をバタつかせていると、
最悪な事に右足がつった。
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私は友人3人の前で溺れ始めたのだ。
だがそれに気づく者は誰一人いない。
私はつった足で必死に泳いだ。
死ぬ!
死ぬ!!
死ぬ!!!
必死に泳いだ結果
ついに足の着く場所にたどり着いた。
こうして九死に一生を得たのだ。
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その後、私は何事もなかったかのように
友人3人に接した。
だがこの経験がトラウマとなり、
このカヌーの旅以降も
足がつく深さでしか水遊びをしなくなった。
このエッセイの冒頭にも述べたが、
私は残りの人生も
地上に感謝して生き続けていくことだろう。
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