シェア
のうみそ
2018年9月4日 17:04
それは、真夏の日のこと。 やけに蝉が五月蝿く鳴いていた。じわりと汗ばむ暑さで、さらに熱気を感じさせる。生暖かい風が肌をなでて気持ちが悪い。目の前に、影がひとつのびていた。「暑い……」 じりじりと肌を焼き付けるような温度に、不平が漏れる。言葉にすると余計に暑さを感じるが、言わずにはいられないほどの熱気であった。 目を横に動かせば、元気な子供の声や、たくさんの人が海で楽しんでいる姿を遠
2018年9月13日 09:07
「先生、アタシはおかしいのでしょう。誰かは飲み込めるような出来事を、こんなにも、うだうだと嘔吐いているのだから。」 白い箱のような空間に、簡易的な家具が少し。対面に並べられたふたつの椅子の間を隔てる大きな机。勉強机の上に置くような照明と筆記用具が、机の端に寄せられている。コンパクトなカレンダーには、カウンセリングの予約の時間が小さな字で書き込まれている。カラフルな文字であるのは、クライアントご