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狐と狸の化かし合い

日本のとある小さな森の中

ここにはたくさんの動物が住んでいます。

中でも珍しいのはこの2匹

キツネのコン(♀)とタヌキのポン(♂)です。

この2匹は結婚して一緒に暮らしています。

キツネとタヌキが結婚?なぜ?と思うでしょうね。その真相はこの物語を読んでのお楽しみ🎵




時は2ヶ月前に遡ります。

キツネのコンには5匹の子供がいました。子供たちはまだ自分では狩りをできない年頃です。
子供が生まれてから、父親は来る日も来る日も餌探しに森中を駆けまわっていました。しかしここは小さな森の中。日が経つごとに、集められる餌は減っていきました。

ある日、父親は「ちょっと遠くの方まで餌を探してくる」と言い、走っていきました。

それっきり、父親は帰ってこなかったのです。

父親に何があったかは誰にも分かりません。

コンは昔、森のはずれ、人間が住んでいる近くに餌を探しに行ったことがあります。その時、四角い箱に仲間が入って出られなくなったのを思い出しました。

「きっとパパもあの箱に入ってしまったんだ」

コンはそう感じていました。

ですがコンには悲しみに暮れている暇はなかったのです。子供たちがお腹を空かせて待っているから。

「何としてでも餌を集めて来なければ」

コンは必死でした。


その頃、タヌキのポンは森のど真ん中で日向ぼっこをしていました。

ポンはずる賢く、ガタイが良く、力も強いです。そのため、たった一人で森の半分以上を縄張りとしていて、餌場には困らず悠々と暮らしていました。

ですが、そんなポンにも悩みはありました。それはしばらく木の実しか食べていないこと。

ポンはタヌキの中では珍しく、肉が大好物なのです。

森の住人たちはポンの縄張りには決して入りません。入ればたちまちポンに捕まって食べられてしまうと分かっていたからです。

ポンは優れた才能の持ち主でしたが、怠け癖が酷く、 決して縄張りから出て狩りをしたりはしませんでした。

「はあ、今日も木の実を集めるか 」

ポンがそう呟きました。


そんな時でした。
ポンの前にコンが現れたのは。


ポンは目の前にいるコンを全力で追いかければ捕まえられると確信していました。でもしませんでした。

ポンは昔、コンが子供を連れて歩いているところを偶然見かけていました。だから、コンの巣に自分の「大好物」がたくさんあることを知っていたのです。
ここでコンを食べてしまえば、コンの巣の場所が分からないまま。
いずれ「大好物」が成熟したらコンの後をつけ、 見つけて食べてやろう。そんなことを考えていました。

一方、コンもすぐさま逃げようとはしませんでした。ポンという名の、 お肉が大好きな大タヌキが目の前にいるにも関わらず...。

実はコンにも考えがありました。

コンは巣で待っている子供たちに餌を与えてやりたかったのです。
だからポンを利用しようとして、 近づいたのです。

「あなたの妻になり、 あなたの大好きなお肉を毎日たくさん持ってきます。だから縄張りに入れてもらえませんか?」

これがコンの考えでした。 縄張りに入れてもらいさえすれば、木の実を集めて子供たちに届けられます。

ポンはコンの話を受け、心の中でほくそ笑みました。
(ふふふ、これでいつでもコンの巣を探しだせるぞ)

「コンよ、その提案を受けよう。明後日、我々の結婚式を行う。 そのために肉をたくさん用意しておくのだ。」

「はい、わかりました。」

こうしてコンはポンへの貢ぎ物を探しに森を駆け巡ることになりました。

コンは持ち前の機敏さを活かして、 スルスルと木に登っては鳥を捕まえました。

“ポンは「俺はウサギの肉が一番好きだ」とかなんとか言っていたけれど、知ったことではないわ。なんでもいいから肉を用意しなくちゃ”と必死でした。

結婚式当日、コンは 10羽以上の鳥といくらかの虫を集め、ポンに差し出しました。

そして二人の結婚式が行われました。

その夜、ポンは久しぶりのごちそうを堪能し、 熟睡していました。

ようやくなわばりに住むことが許されたコンは、すぐさま木の実を集め、子どもたちの元へ駆けました。

子どもたちは大層お腹を空かせていましたが、近くにあった僅かな木の実や穴を掘って出てきたミミズを食べて飢えを凌いでいたようでした。

「坊やたち、随分待たせてごめんね。食べ物、たくさん持ってきたよ」

子供たちが餌を食べ始めると同時に、コンは再び木の実を探しに行きました。

...


それからというものの、 コンは毎日きっちりとポンのもとへ肉を持って行きました。

ポンは肉さえ食べられれば、 コンが何をしていようがお構い無しでした。

そんな日々が2ヶ月ほど続きました。

「この頃、森に棲む鳥が減ってきているわね。 どうしましょう」

コンはポンへの貢ぎ物を見つけるのに苦戦し、不安を抱えていました。

そんなある日のことでした。とうとう恐れていた事態が起こりました。

夜まで獲物を探しましたが、 捕まえることができなかったのです。
コンはポンのところへ謝りに行きました。

「あなた、ごめんなさい。 今日は鳥を捕まえられなかったの」

するとポンは

「なあに、 1日くらいは構わん。ただし、明日は必ず捕まえてこいよ」

と意外な返事をしてきました。
コンは少し安心しました。

翌日...

残念なことに、 またも獲物が見つかりません。

焦ったコンは必死に地面も木の上も探しましたが、やはり獲物を見つけることはできませんでした。

コンはポンの元に戻りました。何も咥えていないコンを見て、ポンはとうとう怒ってしまいました。

「今日は必ず捕まえてこいと言ったはずだぞ」

「ごめんなさい。どうしても見つからなくて」

ポンは痩れを切らし、コンにこう言い放ちました。

「もういい。お前の子供たちも食べ頃になってきただろうから一匹ずつ食べてやる。 今すぐ案内しろ」

コンは驚きました。
ポンには子供たちのことはばれていないと思っていたのですから。


コンはとっさにロを開きました。

「そうです、あの子たちにも狩りをさせましょう。そうすれば必ず毎日お肉を持ってこれます。」

ポンはイライラしながらも、それを承諾しました。
さすがに6匹で探せば、毎日肉が食べられるだろうと考えたからです。

「ありがとうございます。 では明日、 子供たちを連れてきます。 明日はみんな集まってパーティーをしましょう。必ず、たくさん捕まえてきますから」

「そうだな」

翌日、コンは子供たちと一緒に食べ物を探しました。そして、なんとか3羽の鳥と1匹のネズミを捕まえました。

その夜は予定通りパーティーが開かれました。お肉は全てポンが食べ、コンと子供たちは木の実や虫を食べました。

ポンは上機嫌になり、こう言いました。

「明日からもしっかり肉を集めてくるんだぞ。よろしくな。」

「もちろんです、 あなた♪坊やたちも、自分の食べ物は自分で探せるように頑張りなさいね」

「うん!!(5匹)」

こうしてコンとポンは5匹の子供と共に仲良く暮らすことになりました。

めでたしめでたし。

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その夜、ポンは大好物のお肉をたくさん食べ、 心地よく眠りにつきました。 夢の中でもたくさんのお肉を食べているのかも知れません。
そのすぐ傍では12個の目がギラリと光っていました。
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著者:らー

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