星の行方
広い宇宙にぽつんと、青い星が漂っていました。
青い星には、長い年月をかけて様々な生き物が誕生しました。
青い星ではあらゆる生き物が精一杯生きていました。生命力に満ち溢れた温かい星でした。
ある時、とても賢い「ヒト」という生き物が誕生しました。
ヒトは武器を造りだし、力を合わせることで、時には自分よりも一回りも二回りも大きな動物を狩りました。そしてそれを食べ、子孫を繁栄させました。
もちろん、力を合わせたからといって、簡単に獲物を狩れたわけではありません。
時には負傷し、時には仲間が死にました。
ヒトは仲間の死を深く悲しみました。
「これ以上、仲間を死なせたくない。」
そんな想いから、ヒトはより強い武器や便利な道具を造りだしました。
ヒトは安全に狩りをするようになりました。
犠牲になる仲間も少なくなりました。
ヒトは長く生きれるようになりました。
ヒトの数は瞬く間に増えていきました。
今度は目に見えない小さな生き物がヒトを脅かしました。
小さな生き物はヒトを体の内側から蝕んでいきました。
そしてものすごい勢いで増え、ヒトからヒトへ伝染していきました。
小さな生き物に、武器は通用しませんでした。
ヒトは「薬」を造りだしました。
薬は飲むと、体を蝕む小さな生き物を弱めたり殺したりする、素晴らしいものでした。
ヒトは再び、自分たちの命を脅かす存在に立ち向かう術を身につけました。
再び、ヒトの数が増えていきました。
あまりにも数が増えたヒトは、狭苦しさを感じていました。
ヒトは森の木を切って、そこに家を建てました。
ヒトは住む場所が増えて、快適に過ごしていました。
森に住んでいた動物は、住む場所が減りました。
そして餌が採れる場所も減りました。
そこで森の動物は、ヒトの住む場所に足を踏み入れるようになりました。
そこには、ヒトが育てている野菜や食肉になる予定の動物がいました。
森の動物は、自分たちの命をつなぐため、ヒトの育てている食料を食べました。
時にはヒトを襲うこともありました。
ある時から、森の動物はヒトに捕らえられてしまうようになりました。そして殺されました。
ヒトの食料を奪う憎き存在だからです。
ヒトの命を脅かす憎き存在だからです。
森の動物たちは、住む場所が減り、餌も減り、そして数も減っていきました。
ヒトは増え続け、森の動物たちは減り続けました。
気づくと、青い星にはヒトが溢れ返っていました。
気づくと、青い星は「ヒトの星」に変わっていました。
そこには様々な価値観のヒトが存在しました。
自分の価値観とは異なるヒトを攻撃するヒトも現れました。
星の資源や生き物、その多くを犠牲にして繁栄したヒトは、無益な争いまで始めたのです。
ヒトは危機感を覚えました。
「これ以上住む場所は増やせない」
「これ以上食べ物は増やせない」
そこでヒトは思いつきました。
「そうだ、この青い星を捨てて、別の星に行こう」
そう思ってからしばらくの年月が経ちました。
ようやくヒトは青い星を旅立ち、新たな星に住み始めました。
食料となる植物と、食料となる動物を連れて...
ヒトに捨てられた青い星では、一度はずいぶんと数を減らしてしまった生き物達が必死に生き抜いていました。彼らは着実に子孫を残していきました。
植物たちも増え、動物たちも増え、青い星はようやく昔の温かい姿を取り戻しました。
おわり
...
ヒトが新たに住み始めた星は、その後どうなったのでしょうか...
これを読んでるあなた、ぜひ想像してみてください。