#あちこちのすずさん に思うこと
2021/8に「あちこちのすずさん」と題したNHK放送があった。感覚的には「ポスト火垂るの墓」だったのだろうと思うのだが、少し残念に思っている自分がいた。「火垂るの墓」は今より社会的に戦争が近かった時代、そういう受容構造で成立する「昭和だからこそ描ける戦争映画」だったし、「この世界の片隅に」、は戦争世代が辛うじて残る中、戦争という題材を「概念の消費」して仕立て上げることを許さず、しかし主観性を失いかけているからこそ客観的に主観を描き出すことに成功した、「平成だからこそ描ける戦争映画」だという印象が強かったからだ。令和になって「戦争を知っている人間に受け入れられる作風」が必要でなくなってからは、もっと戦争が概念化した消費対象になる可能性はある。このバランスに価値を感じていた私は、「この世界の片隅に」を安直に反戦性と結びつけることが作品の良さを損なうことのように思えて強い抵抗感を持ったのである。
しかしこれはそもそも視聴する世代によって異なる見解ではあるだろうし、これについて私が強く主張できることはあまりない。最近の作品の中では作品の戦争イメージが鮮明に焼き付く映画だったことは確かだし、戦争体験話は世界の片隅にとリンクさせていることで受け入れやすくなっただろう。一方で、作品に対して戦争のイメージが侵食を起こして私ですら今まで通りの「この世界の片隅に」は見れなくなることに対して一抹の寂しさを覚えてしまうことは、戦争を知らない世代の我儘だろうか。