「週末は海へ」
小さな会社で働いていて、夏になると恒例の行事がある。一昨年の夏の終わりに入社した僕にとっては、去年が初めての夏であった。
会長が若い時から船を持っており、夏になると、従業員と共に海に出る。カジキマグロを釣る大会に出場する為だ。去年初参加ながら、50隻中2位という大健闘で成功体験を得た僕は、今年の参加も静かに期待していた。
コロナの影響で大会はすべて中止。併せて会長の体調の事もあり、今年は海に出ず終わる。と思っていたが、会長の体調も良くなったようで、オーナーと、内装を担当してくださっている工務店の社長さんと、去年のメンバーで1年ぶりに海に出る事となった。
沖に出ると、海は深い紺色をしている。エンジンスクリューに巻き上げられ、泡立つ水面は一瞬だけ白くなり、また紺に飲み込まれていく。見渡す限りすべて空と海。あの光景は、1年に一度は見たくなる。
大会ではないから気が楽ではある。今年は自分の手で、魚を釣ってみたい。そんな思いを馳せながら、今日もダンベルを握る。