見出し画像

「流域思考」の聖地へ ~小網代の森 編~

ヤギノリです。先日「小網代の森開園10周年記念シンポジウム」にうかがいました。

小網代の森は、源流から河口までの流域の自然が途切れることなく保全された、
奇跡的な場所です。
詳しくは、ぜひこちらの書籍をご覧ください。


小網代の森を、初めて訪れたのは、2024年4月のことでした。
その頃まだ私は、山にはびこる蔓を採って、
それを活かすクラフト作家として、
もっと成長しなければと思っていました。

そして、山が健やかな状態であるために、
採りすぎず、採らなさすぎないような、
「ほどほどの蔓の採り方とは?」を探るために、
自然保護地区における、蔓の様子を見に、
はるばる神奈川県三浦市の小網代の森までやってきたのでした。

「流域思考」の岸 由二 先生のことや小網代の森のことは、2023年に
YAMMAPの春山慶彦さんと、宮台真司さんの対談をYouTubeで見て知り、
いつか小網代や鶴見川に行ってみたい!と思いをあたためていました。
それがたまたま、去年の4月に真鶴に行くことになったので、
同じく神奈川県の小網代まで、ついでに行ってみようと思ったのでした。

そんな軽い気持ちでの訪問だったのですが、
ここで、人生が変わりました。

この日、たまたま整備のために小網代にいらしていた
特定非営利活動法人 小網代 野外活動調整会議 
代表理事 岸 由二 先生 から受けた質問がきっかけでした。

以下、その時の様子を、野球中継風味で
再現してみたいと思います。

バッター:ヤギノリ(左)と ピッチャー:岸先生(右)2024年4月 小網代の森にて

ピッチャー:岸先生
「あなたはなにがやりたいの?」←剛速球ストレート

バッター:ヤギノリ
「子どもたちが被害に遭わないよう、山を健やかにして、土砂くずれや洪水の災害を減らしたいです」←フルスウィング空振り

ピッチャー:岸先生
「それなら、蔓ばかり見てちゃダメだよ。土砂災害の防災に、表面に生えている植物のことは、あまり重要じゃない。地形の方が問題だから。それも、杭を打って土留めを作ればある程度は防げる」←爆速変化球

バッター:ヤギノリ
「・・・」
土砂災害の原因の主な理由は、森の手入れが不十分であることだと信じて行動してきたため、球がどこから飛んできたか、瞬時に把握できなくて、アホな顔で立ちすくむ。

という、
スピード感あふれるやり取りがありました。

その後、2か月後の6月には、
杭を打って土留めをつくられている様子を拝見するため、
慶應大学日吉キャンパスの「まむし谷」で
「流域思考」をベースとした自然再生・防災減災に取り組んでいる
「日吉丸の会」さんの活動を見学させていただきました。

慶應大学日吉キャンパス「まむし谷」にて 2024年6月撮影

実物を目にし、しくみを教わったことで、
2021年に私自身で家の外構を作ったおりに、斜面に杭を打って土留めをつくったときの経験とむすびつきました。
そして、土砂崩れなどの防災を考える上で、地形に注目する方が重要であることが、ようやく腑に落ちたのでした。

しかしもちろん、表面に生えている植物や土壌環境を整えることも大切なことです。
なので、わが町宇治田原でも、地形を流域視点で把握し、その上で人の手を加えるところと、自然の植生の遷移にまかせるところのグランドデザインを提案できるようになりたいなー
なんていう、野望を抱くようになったのでした。。。


慶應日吉キャンパスにうかがった後、
小網代の森で、ノカンゾウを守るための草刈りにも、少しだけ参加させていただきました。
特定非営利活動法人 小網代 野外活動調整会議で実際に整備活動を行っているメンバーの方々ともお話ができ、とてもとても充実した体験でした。

小網代の森 えのきテラス付近にて2024年6月撮影  
その他の草を刈ってノカンゾウを保護


そして、今回久しぶりに訪れる小網代。
初めて見る小網代の冬景色。
同じ場所を比べると・・・

2024年4月の小網代の森
2025年2月の小網代の森

さすがに、植物は冬枯れていますが、
降水量が少ない時期なのに川の水は、保たれています。

このことについては、シンポジウムの中で、
「ボードウォーク(上記写真のベージュの歩道)は、
川の蓋のような役割をしている。」

と、岸先生が話されていたような工夫があるからのようです。

気候が温暖化すると、地面は乾きやすくなります。
ロサンゼルスの山火事のようなことも、
乾いていると起こりやすくなります。

これからの防災は、
線状降水帯のような、局所的に集中した降水による被害を防ぐこと。
それと同時に、地表の乾きによる火災を防ぐこと。
この両方を考えていかないといけないんだな。。。

このことが、シンポジウムに参加して一番印象に残っていることです。

ほかにも、三浦市のまちづくりの側面で見たときの小網代の森について、
地元の人にとって、ここはアンタッチャブルな存在。というお話が印象に残っています。

国際生態学会議に訪れた、世界中の生態学者たちがこぞって絶賛するような、奇跡の自然空間ですが、
地元の人にはあまりその価値をわかってもらえていなくて、
「小網代が守られたから、開発が遅れたんだ」と考える住民らの存在も否めません。

わたしの人生を「流域探検隊」の方向に変えた、小網代の森。
案外、よそもんの方がその価値を、
そして、三浦の素敵さをわかっているのかもしれないと感じます。

まちのグランドデザインを考えるときには、
経済の充実、自然環境、防災、などなどいろんなことを加味しながらバランスをとる必要があります。
「小網代の森」という世界の至宝の原石を有する三浦市が、
今後、どのようなグランドデザインをされるのか?
これからも宇治田原から注目していきたいと思います。

このシンポジウムについては、今回一緒に参加した、
「朝礼だけの学校」(通称:朝学)教育改革実践家 藤原 和博さん主催のオンラインコミュニティ仲間の方々が、朝学内でブログを書いてくださり、感想を共有しています。

ご興味がある方は、ぜひ朝学にご入学の上、
上記2つの記事もご覧いただけると幸いです。

次回は、シンポジウムの翌日に白ヤギ氏と一緒に参加した、
鶴見川流域センターさんでのイベントについてレポートします。

引き続き、「流域思考」の聖地へ シリーズをお楽しみいただけると幸いです。

最後まで読んでくださりありがとうございました!

流域探検隊うじたわら 言い出しっぺ
アルモンデザイナー ヤギノリでした。


いいなと思ったら応援しよう!