映画の感想まとめNo.51~60
観た映画の感想を10本分、箇条書きでまとめています。
No.00051『スポットライト 世紀のスクープ』
2016年上映/トーマス・マッカーシー監督/製作国:アメリカ
鑑賞日:2021/01/25
・この作品がアカデミー賞を取ったとき、確か中継で見てた気がする。WOWOWか何かの。それでずっと気になってた作品。事実を基にした作品を観るブームが自分の中で少し来始めたので鑑賞。
・2002年の年明け、アメリカの新聞ボストングローブがカトリック教会の衝撃的スクープ「数十人の神父による小児への性的虐待とその隠ぺい」を報じた。特集記事「スポットライト」担当記者たちは、教会が性的虐待の温床になっていた事実と数々のタブーをどのように掴んで暴いたのか…という話。
・本当にすごい話だった。なんか、最後の方感情が昂って泣いてしまった。これは本当にすごい。納得のアカデミーだと思う。
・このスクープが世に出るまでに本当にいろんな苦難があるのだが、その中で最も大変なのはやっぱり「誰も口を割りたがらない」ということ。特に教会関係者や弁護士などは本当に口が堅い。「何も言えない」「消される」の一点張りなところに、教会が持つ権力の大きさを感じる。日本の神社やお寺なんかとは比べ物にならないくらい、教会の存在の大きさを感じた。いや、全てをもみ消す「教会」とかいうクソデカ組織怖すぎじゃない?
・話が進めば進むほど、この問題があまりにも大きいことを嫌というほど知らされるのが怖くて仕方なかった。そもそもこれを世に出そうとなったきっかけはたった1人の神父がきっかけだったのに、そこから13人と増え、最後にはその数倍の数になり…。途中で出てくる心理士の言葉も怖い。「これは精神医学的現象だと私は思っている」やっていることは子どもへの性的虐待なのに、もう個人的な問題ではなく教会全体に蔓延る「現象」だと?怖すぎる。
・取材では当時被害に遭った人たちへのインタビューシーンもあって、それがまた色んなものを語っているなと思う。インタビュー的な意味だけではなく。事件から何年経っても当時のことを話すことができない。社会的に成功して、家族を立派に養っている人でも、ひとたびその話をされると泣き出してしまう。それでも被害者側の弁護士からしてみたら「彼らはまだマシな方だった。自殺しないで生きているから」喉に何かがせりあがってくるような感覚がある。胸糞悪すぎる。
・この作品を観たことがある/無しに関係なく、教会や宗教団体に対して何となく「裏で偉い人達は悪いことをしているのではないか」というイメージがあったのは自分だけじゃないと思いたいのだが、それは宗教という清くて閉鎖的な存在から感じているものだとばかり思っていた。でももしかしたらそうじゃなくて、この「過去にスクープされていた」からこそ出来た価値観なのかもしれない。
・途中、偶然的に性的虐待をしていたリストに入っている元神父に一瞬だけ話を聞けるシーンがあるが、これもなかなかサラッと闇の深いことを言っていたな。「自分がしたのはいたずらだ。レイプといたずらは違う。それはわかっている。なぜなら自分もレイプされてきたから」カトリックの闇の深さ。もうズブズブじゃないか。何世紀にわたってこの性的虐待は続いてきたのか?考えただけで恐ろしい。思考が止まる。
・最後、自分が思わず泣いてしまったのは、このシーンが何よりの証拠で全てを裏付けているじゃないか、と思ったから。ネタバレしてしまうと、新聞を読んだたくさんの被害者から電話が殺到するというもの。これが何よりの証拠じゃないか。言わなかったんじゃなく、言えなかったんだろうな、ずっと。罪悪感と、羞恥心と、恐怖と、言ってももみ消されるという事実で。スポットライトの人たちがいかに大きな仕事をしたのかを感じた。これは本当に世紀の大スクープだったんだな。
No.00052『ゾディアック』
2007年上映/デヴィッド・フィンチャー監督/製作国:アメリカ
鑑賞日:2021/01/26
・去年あたりにTwitterでフォロワーの人が見たと言っていたのがきっかけで興味を持ったのかな、確か。ゾディアックという名前と記号はクリミナルマインドとか見てたらよく出てくるから何となく知っていたけど何なのかは知らなかったので、事前に「未解決の連続殺人事件である」ということだけは軽く調べてから鑑賞。
・まず、とにもかくにも長かった…。観終わってから157分もあると知った。面白いしのめり込むんだけど、それにしても長すぎる。ミステリ系で頭使うから余計そう感じたのかも…。
・若いカップルが銃で撃たれて1人が死亡するという事件が起きた後、新聞社に「ゾディアック」と名乗る人物から手紙と暗号が届く。新聞社に勤める、暗号やパズルが好きな漫画家や殺人課の刑事たちが奔走する中、ゾディアックからの脅迫文や殺人事件が次々に発生して…という話。
・映像がすごくて、気が休まらないのがすごいと思った。最初の殺害シーンもドキドキするし、途中で若い親子がゾディアックらしき人物の車に乗ってしまうシーンとかも怖かった。電話の音にもいちいちビクついてしまう。極めつけはやっぱり地下室に行くシーン。あんなにも死亡フラグビンビンなことある?
・この作品は、有名すぎるので今更言う必要もないけど実際に起きた未解決事件を基にした作品なので、当たり前だが「犯人はコイツです!」とスッキリ話が終わるわけではない。ほぼクロやん…としか思えないけど明言されることなく話は終わる。歯がゆい。というか、ストーリーが「犯人コイツで間違いないじゃん」と思わせる導き方だな、と思った。それでも、証拠がないとして逮捕ができないのが見ていてものすごく歯がゆかった。
・事件が1960~70年の時代なので、やはりこういう怪しい連続殺人などが起きると犯人像にゲイや小児性愛が絡んでくるんだなと思った。差別的な意味合いではなく。でもそういうことを絡めることで分かりやすくはなるよな、犯人像が。まぁゲイって言ったのはエイブリーだけだけど。
・観終わってから、ゾディアックの最後の暗号が最近解読されたと知って、タイムリーさに驚いた。そうか、解読されたんだ。まだ調べてないけど。ゾディアックのこと全然知らないから知りたいな。作中でほぼクロ扱いされている人も、本当にクロなんだろうか。結局指紋も唾液も一致しなかったのに?未解決事件だから当たり前だけど、この作品では解明されていないことがまだまだある。
No.00053『シン・ゴジラ』
2016年上映/庵野秀明、樋口真嗣監督/製作国:日本
鑑賞日:2021/01/27
・カネゴンや快獣ブースカは昔から好きだがどうにもゴジラやウルトラマン等には興味がなく、公開当時どれだけバズっても映画館に行こうという気にならなかった。つい最近ネットフリックスで観れるということを知り、まぁせっかくだし観るか、と思い鑑賞。
・いや~~~めちゃくちゃ面白いじゃん。映画館で観れば良かった。こんなに面白いと思わなかった。なんで思わなかったんだろう。公開当時あらゆる媒体で面白い面白い言われまくってたのに。
・現代日本の東京湾である日突然水蒸気が噴出してアクアラインが崩落。最初は海底火山の噴火だと思われていたが、その場所から謎の生物の尻尾と思われるものが姿を現す。専門家の予想をことごとく裏切って巨大生物は東京・鎌田に上陸。町を破壊し前進しながら進化していく。巨大生物はその後「ゴジラ」と名付けられ、政府に「巨大不明生物特設災害対策本部」が設置され…という話。
・まずキャストが凄くてびっくりした。いや、すごいというのは公開当時もいっぱい言われてたから何となくは知っていたけど、ここまで名の知れた人たちが1つの作品に集合できるとは思わなかった。密かに昔から好きな光石研さんも出てるとは思わなかったのでそこもビックリ。都知事役だった。
・キャラクターみんなめちゃくちゃ早口で(ゴジラが居るんだから当たり前)何言ってんだか分からないところがたくさんあるけど、細かいところはあんまり気にしなくてもいいのも凄いなと思う。難しい言葉がたくさん出るけど理解できなくてもストーリーに乗り遅れることはない。
・何より石原さとみさんが凄かった。めっちゃアメリカの女だった。ゴジラのことガッジーラって呼んでたな。当時やたらウケてた「ZARAはどこ?」も聞けて良かった。確かに面白い。石原さとみさんだから出来た役だなと思う。中途半端な人がやったらネットで「ポカホンタス女」って呼ばれてしまいそうな危うさがあるキャラだった。
・この映画を「会議映画」と誰かが呼んでいるのを見かけたことがあるが、本当にずっと会議してて面白かった。なんか、日本らしいなと思った。「何言えばいいの?」「今決めるの?」とどこか頼りない総理大臣とか、対応が一発でビシッと決まらないところとか。一番日本っぽいと思ったのは、ゴジラがどんどん進化して東京駅で一度眠りにつくまで、主人公の矢口蘭堂さんを含めた政府の人達は生で一度もゴジラを見ていなくて、自分たちも避難しないといけなくなった時に初めて外で生のゴジラを見るというところ。とにかく日本っぽい。
・元々のゴジラを見たことがないので何も分からないのだが、ゴジラの正体が核のゴミに関するものというところやいろんなシーンで3.11や原発事故を感じさせるのもすごいなと思った。蒲田くん(陸に上がってすぐのブヨッとしたゴジラはそう呼ばれているらしい)が海から川をどんどん上って陸上してくるシーンも、津波の映像を思い出させるような感じがして圧倒された。ゴジラが進化していくところや放射能を出し始めて手が付けられなくなるところは原発事故を思い出させるし、街がどんどん崩れていくところは地震を思い出させる。現代社会でゴジラを撮ると、ゴジラという存在があらゆる天変地異や災害、戦争、人間の罪などを全て含めたメタファーになるんだな、と思ってただただ圧倒された。
・ゴジラを冷却してやっつける作戦「ヤシオリ作戦」。このヤシオリって日本神話でヤマタノオロチやっつけたときのお酒の名前から来てる事にはすぐ気付いたしもう感激してしまった。矢口蘭堂さんはゴジラをヤマタノオロチ的に見ているんだな、と…。かつてのヤマタノオロチも、古来の人達が災害を何とか具現化、可視化して理解しようとして生まれた存在。このゴジラも同じじゃないか。本当に災害のメタファーだ。そんな災害のメタファーに「血液凝固剤」という名の「お酒」を飲ませて立てなくしてやっつけるってワケか。もう神話だ。シンゴジラのシンって「神」ってこと?
・シンゴジラが日本でウケてバズったのも、この映画が良くも悪くもものすごく日本ぽくて、絶対的に「邦画」だったからかなと思う。この感じは洋画では絶対に出せないと思った。政府の動き方や国民の動き方がどこまで行っても「日本」だと思った。洋画だったら、とにかくまず第一に戦うし、そのためにはすごい武器でも何でも湯水のように使うと思う。でも日本では動くために会議を重ねる。国民はスマホを掲げてSNSで中継し、どこまでも現実味が無い。挙動も遅くてしっちゃかめっちゃかになるけど、それでも手を取り合ってなんとか頑張っていく。そこがとても日本らしくて、だからこんなに面白いんだろうなと思った。
・公開当時は数年後コロナで世界がしっちゃかめっちゃかになるなんて想像だにしてなかったけど、今のコロナ禍に似ているところもあるなと思った。特に最後の「我々はゴジラと共存していかなければならない」というセリフとか。withコロナならぬwithゴジラ。一山超えたような雰囲気だけど、最後は少し不穏なところも含めて、めちゃめちゃ面白かった。
No.00054『ゴジラ』
1954年上映/本多猪四郎監督/製作国:日本
鑑賞日:2021/01/30
・前回シンゴジラを観たので、せっかくなら最初のゴジラも観たいなと思い鑑賞。ネットフリックスにあったけど、まさか白黒とはね。これが元祖らしい。
・ある日、小笠原諸島近海で貨物船「栄光丸」がSOSを発信して消息を絶ち、同じく貨物船「備後丸」も消息を絶つ。現場に一番近い島である大戸島で暴風雨と共に巨大な生き物が海から上陸、家屋を破壊し住民と家畜を殺戮する。その後、調査団が島に上陸し、巨大生物が残した足跡を調べたところ、絶滅したはずの三葉虫や放射能汚染を発見。興奮する山根博士だったが、直後に島の鐘が鳴り、山の向こうで巨大生物が頭をもたげて咆哮するのを目撃する。東京に戻った山根博士は、巨大生物を大戸島の言い伝えに則って「ゴジラ」と命名。その後、ゴジラは東京湾に現れ、人々はパニックに陥る…という話。
・まず何よりオープニングがめちゃくちゃカッコいいな。あのゴジラの曲とゴジラの咆哮が鳴り響いてめちゃくちゃシブくてカッコいい。
・やっぱりこの作品が全ての始まりだったんだなと思うと非常に感慨深かったし、面白かった。時代が時代なだけあって、戦争の残り香が各所に漂っていた。ところどころツッコみどころがあったりテンポが遅いなと思うところがあったりするけれど、それも込みで良さかな、と思った。
・ビックリするところも多々ある。シンゴジラの時はゴジラの正体を掴むのさえもあんなに苦戦したのに、「200万年前の白亜紀に生まれた爬虫類の生き残り」と一瞬で予測しちゃう潔さ。しかも白亜紀って200万年前じゃないし。ゴジラ、200万年前の白亜紀に生まれた爬虫類が水爆実験で目覚めて怪獣になったらしいですよ。
・他にもビックリしたのは、死や危険に対する意識が今よりだいぶ浅い感じがするところ。ゴジラは放射能を持っているというのに防護服も全然着ないし素手で調査しちゃうとか。ゴジラが目の前まで来てるのに最期の瞬間までアナウンサーは実況をやめずに最後の言葉は「みなさん!さようなら!さようなら!」とか。そんなのテレビで流れたら一生のトラウマになりそう。
・やはりシンゴジラを観てからのゴジラなので、どうしても比べてしまうなと思った。シンゴジラの特に蒲田くんなんかは、破壊というよりは前進と進化という感じだったのに対し、元祖ゴジラくんはとにかく破壊!破壊!という感じ。大暴れして好き勝手壊しまくるけど、蒲田くんや東京駅くんは前進した結果副次的に壊れちゃった、という感じだったような気がする。また、ゴジラの正体もシンゴジラでは神的存在や災害のメタファーのようなもので一言では言い表せない存在だったが、元祖くんは「水爆大怪獣」これに尽きる。「水爆で怪獣が目覚めちゃった」この一本通しなのが潔く、分かりやすかった。
・全てがシンプルで分かりやすい。ストーリーも、ゴジラに関する情報も、倒し方も。オキシジェンデストロイヤーめっちゃ便利。あんな骨になることある?シンゴジラの世界線の人達にも教えてあげたいくらい分かりやすい。決して馬鹿にしているわけじゃなくて、切ないんだよな、最後も。切なくて、スッと終わっちゃう。そこもまた潔くて分かりやすい。
・でもシンゴジラも元祖ゴジラも、ただ怪獣大暴れ映画ではないところが共通していると思う。科学が進歩しすぎた結果目覚めてしまった災厄のメタファー的存在。1954年元祖のゴジラも、当時の人達に社会問題を問いかける存在だったんだな。なんか、この元祖を踏まえてもう一回シンゴジラが見たくなった。
No.00055『コンスタンティン』
2005年上映/フランシス・ローレンス監督/製作国:アメリカ
鑑賞日:2021/02/06
・初鑑賞ではない。小学校の時、親にWOWOWで見せてもらってからずっと好きな作品。ずっと見たい見たいと騒いでいたらこの度ネットフリックスに入ったので鑑賞。
・人間の姿に偽装して人間界に紛れ込む天使や悪魔(ハーフブリード)の姿を見分けられる力を持って生まれたジョン・コンスタンティン。恐ろしいものが見える力に絶望して若いころ一度自殺を図ったが失敗。生き返ってからは悪魔祓いとして人を救って天国に行けるよう過ごしていた。ある日、悪魔にとりつかれた少女の悪魔祓いをした際、言い知れぬ恐怖を覚える。それを裏付けるようにコンスタンティンの周りでは不気味な出来事の数々が起きる。そんな彼の元へ、自殺した妹の死の真相を探るべく、女性刑事アンジェラが訪れる。…という話。
・とにもかくにもこの映画はコンスタンティン役のキアヌ・リーヴスがカッコいい。記憶が曖昧だが、もしかしたら『スピード』よりもこっちを先に観たかもしれない。幼心に「こんなきれいな顔の人いるんだな」と衝撃を受けたのは覚えている。今見てもやっぱりカッコいいんだよなぁキアヌ。ラーメンとバイクが好きな気さくなおじさんみたいになってるけど、めちゃめちゃ凄い人なんだよ…。ヨレヨレのスーツにタバコ、病気で生命力のない中年キャラ最高。
・今更言う意味もないけれど、久しぶりに観て「こんなに宗教色が強い作品だったんだな~」と改めて思った。カトリックの世界をエンタメにがっつり落とし込んでいて、初っ端からロンギヌスの槍(作中では運命の槍)とか堕天使ルシファーとか、キリストな世界観がたくさん出てくる。出てくるというかずっとそう。日本で生まれ育つとどうしても悪魔や天使、神などはなじみが薄いからところどころ知識不足を感じるけれど、知識が無いと何も分からないというレベルではないので楽しめる。
・天使のガブリエルやサタンもすごい。個々の美しさやカッコよさはもちろんなんだけど、描写の仕方も好き。例えばガブリエルをはじめとした天使の羽が真っ白じゃないところや、逆にサタンは全身真っ白の衣装を着てるとか。普通、天使と言えば純白の羽だしサタンはどす黒い服をイメージするけれど、全然そんなことない。その描写が独特で好き。天使だからって人間に「優しい」わけではないんだな、と思わされる感じ。
・描写と言えば、すごいなと思うのが地獄のシーン。なぜ地獄が「行きたくない場所」なのか、の答えなような気がする。こんな場所だったら絶対行きたくないな、確かに。時が止まっているという描写も良かったし単純に最悪すぎるのも良い。
・ネタバレになるが、地獄から来た存在がコンスタンティンを結果的に生かすことになるというのも大好き。ただただ「良い~」と思う。天使や悪魔の描写の話にもつながるが、この交錯している感じがたまらないんだ。
・久しぶりに観たので、エンドロール後のシーンについてすっかり忘れていた。あれは死後ああなったのか、最初からハーフブリードだったのか…個人的には後者の方がいいな。そっちの方が好き。
・宗教色は強いけど、キリスト教や悪魔などになじみが無くても楽しい。アクションがとにかく爽快なので。悪魔祓いをしているけど、やっていることはメリケンサックやショットガンでボコボコにドツき回すので。最初の悪魔祓いのシーンからもうずっと楽しい。やっぱり大好きだなあ、この作品。
No.00056『20世紀少年 -第1章- 終わりの始まり』
2008年上映/堤幸彦監督/製作国:日本
鑑賞日:2021/02/12
・初鑑賞ではない。これも多分小学生の時に観てからずっと好きな作品。映画館に観に行かなかったのをずっと後悔している。家にDVDがあって、初めて観てからしばらくの間、セリフを全部覚えてしまうくらい、とりつかれたみたいに毎日観続けた。今回、数年ぶりに鑑賞。
・今観てもやっぱり最高だな。この映画、日本で数少ない実写大成功映画だ。原作も全部持ってるけど、主人公からモブキャラまで全員が見事に漫画から飛び出てきたみたいに完璧すぎて、感動してしまう。ここまでピッタシの人材揃えることってできるんだな。
・もう何百回と観たからもちろん最後まで知ってるしともだちの正体も知ってるけど、初めて観た時本当に分からなかった。で、全てを知ってから観返すたびに「なんで分からなかったんだろう!?」とびっくりする。この人しかいないのに。ずっと一人だけおかしいやついるのに。同窓会でケンヂの真後ろで一人で座ってるやつがいるのに。いとも簡単にコイツを仲間に迎え入れたけど、お前らコイツと何の思い出があるんだ!?と、観るたびにすごい気持ちになる。
・数年ぶりに観て思ったのは、結構チープなんだな、ということ。激ハマりしてたときは全然気づかなかったけど、結構造りがチープな作品。でもそこが良いんだよな。良い意味で漫画っぽい。漫画がかなりキーになっている作品だから良い。
・本格科学冒険漫画/映画を名乗るこの作品、本質は科学じゃなくてこの不気味さと残酷な子ども時代の人間関係なのが大好きなポイントの一つ。いじめでも何でも「やった側は憶えていない」「やられた側は忘れられない」という言葉がよく出るけど、それをムチャクチャ誇張したらこの作品になる。子どもの頃が楽しかった人間ほど、子ども時代の記憶なんて憶えてないんだよ。でも「ともだち」にとっては人生全て注いでしまうくらいに憶えてて。今で言うところの陰と陽が痛いくらいしっかり描かれてて。だから自分も子どもの頃この作品に執着していたのかもしれない。
No.00057『20世紀少年 -第2章- 最後の希望』
2009年上映/堤幸彦監督/製作国:日本
鑑賞日:2021/02/13
・第1章の「血の大みそか」から15年後、2015年に舞台は移る。歴史では、2000年の巨大ロボットによる人類滅亡計画は、悪魔のテロリスト「ケンヂ」とその一派が行ったものとされ、「ともだち」が救世主となって阻止したことになっていた。高校生になったケンヂの姪・カンナは「ともだち」が支配する国家に反発するが、問題児と見做され「ともだちランド」で研修を受ける事となる。そして新たに「しんよげんの書」が現れ…という話。
・平愛梨さんのカンナ、すごくない?そのまんまカンナじゃん。それからカンナと行動を共にすることになる小泉も、漫画から飛び出てきたみたいに小泉。
・第1章の終わり、血の大みそかでケンヂは行方不明となってしまい、第2章ではなんと主人公不在のまま話が進んでいく。原作に非常に忠実に作られているため、割と第2章は「中だるみしている」「盛り上がりに欠ける」という声も上がるが、私は第2章も何度観ても好きだ。
・やっぱり一番ドキドキして面白いのはともだちランドの、特にボーナスステージのシーン。普通に考えてムチャクチャなんだよな。ケンヂたちの幼少期に飛ばされるのだが、これってケンヂの関係者じゃないと全く意味分からないのでは?ドンキーの理科室事件とかサダキヨのお面とか、一切事情知らなかったらそこまでたどり着くのにだいぶ時間かかりそう。
・オッチョがすごいことになっててめちゃくちゃカッコいい。オッチョと一緒に漫画家の角田も行動するが、オッチョが角田のことを「漫画家」と呼ぶのは、どうでもいいと思っているのではなくて漫画家という職業に対しての経緯もあるんじゃないかなあと思う。オッチョが考えたマークも少年サンデー由来だし、そもそも「よげんの書」のアイデアのかなりの部分を漫画が好きで頭の良いオッチョが占めている。オッチョと角田の関係、すごく好きなんだよなぁ。
・第2章の世界ではもう「ともだち」が国家を支配してしまっていて、いわばディストピアと化している。私は好きなディストピアの種類として「よく分からんものに支配されて、よく分からんまま虚無な生活を過ごす世界」というのが大好きなんだけど、これまんま「ともだち」国家のことだ。この作品がことごとく自分の好きなものの基盤になっていることに気付いた。
・サダキヨが悲しいなあ。つらい。「ともだち」も悲しい幼少期送ってきたかもしれないけど、サダキヨだって相当つらかったんじゃないのか?あとともだちお前万博行ってねえのかよ!!という衝撃も。お前…マジで何なん…?
・第2章では(原作でもそうだけど)とにかく新しい情報が出てきて、風呂敷が広がり続けているのがすごい。「内容詰め込み過ぎ」という意見もあるけどやっぱり私は好き。ヨシツネに引っ掛かりを覚えるオッチョや新キャラの登場など、ここまで来てもまだまだ伏線が張られ続けるのは最高に面白い。
・それから大好きなのはエンディング。最高にシブい。20th century boyに合わせて幼少期のケンヂたちが力を合わせてヤン坊マー坊をやっつけるというもので、これが次の章に効いてくるわけだけど、こんなカッコいいエンディング、なかなかないな…と思う。ユキジのセリフとか、もう何もかもエモい…。
No.00058『20世紀少年 -第3章- ぼくらの旗』
2009年上映/堤幸彦監督/製作国:日本
鑑賞日:2021/02/13
・「ともだち」復活から2年が経った2017年(ともだち暦3年)。「世界大統領」に君臨したともだちは「8月20日、人類は宇宙人襲来で滅亡する。私を信じる者だけが救われる」と語る。一方、ヨシツネやユキジ、オッチョ、カンナたちはそれぞれに分かれて闘っていた。そんな中、東京を囲む高い壁の向こうから、ギターを背負ってバイクに乗った男が現れ、壁の関所を通過しようとしていた。…という話。
・まず始まりにオッチョと角田が壁を越えて東京に来てから別れるシーン。エモい。やっぱりオッチョは漫画家に敬意を持っていたんだなと分かる。あんな高い壁超えるのは無理すぎでは?と思うけどそのチープさが良い。
・ともだちの作った世界はますますディストピア化していてゾクゾクする。幼少期の街をそのまま再現している狂気が本当に好き。
・今回はヨシツネが切ないな。「僕はよく分かったね。お面の子なら、僕でもサダキヨでも、他の誰でもいじめられたんだ。」のところ。ヨシツネの挙動が怪しく見えてしまうというのが、幼少期の「お面をつけている怪しさ」につながってしまうのがなんとも切ない。
・最終章なのでともだちの正体も分かるわけだけど、この人だけ全く老けていないというのが怖くて良い。楽しかったからなのかな。世界をメチャクチャにしたけど、この人の感覚では血の大みそかよりずっと前の段階からケンヂのことしか見えてなくて、ケンヂと遊んでいる感覚だったのかな。だからずっと若いまま。話し方も挙動も、死ぬ間際までずっと幼くて、それが切なかったり狂気じみてたりして、すごいなあと思う。
・最後、中学時代のともだちのセリフ「中学にロックが鳴り響いた日、僕に初めて『友達』ができた」で終わるけど、「いやサダキヨは!?!?!?」と大ツッコミしてしまった。サダキヨだけじゃない。山根くんだってずっとお前のそばにいたじゃん。第1章の感想で書いたけど、ここでも子ども時代特有の残酷な人間関係が出てるのが良い。こいつにとって友達になりたいのはケンヂとその仲間たち、いわば「原っぱのメンバー」であって、サダキヨや山根くんではない。こいつが「友達になってくれる?」と聞くのは一人ぼっちでさみしいからじゃなくて、ケンヂと友達になりたいからだ。残酷すぎて嫌になるな。
・原作ではロボットとUFO以外にも反陽子ばくだんなども出てくるけど、映画ではそれは省かれている。スッキリしてて良い。
・久しぶりに観たけど、やっぱり面白いな。激ハマりしてた頃とは見方や抱く感想は少し変わってしまっているけど、大好きであるという根底はやはり変わっていなかった。何度も何度も繰り返し観ているうちに、自分の好きなものの基盤となっていた。良い機会だから、原作も読み返そうと思った。
No.00059『空飛ぶタイヤ』
2018年上映/元木克英監督/製作国:日本
鑑賞日:2021/02/21
・ずっと見たいな~と思いながら今日までずるずると来てしまった。ネットフリックスにあったのが意外だった。
・トレーラーの脱輪事故から始まる物語。整備不良を疑われた赤松運送の社長は、車両の欠陥に気付いて製造元のホープ自動車に再調査を依頼するがことごとく断られる。疑問をぬぐえない赤松は、独自に調査を進める。その結果見えた真実は、ホープ自動車の「リコール隠し」であった…という話。
・どんな話なのかはほとんど知らないまま、予告だけ観てから鑑賞した。池井戸潤原作ということで、大企業に立ち向かう勧善懲悪ものなんだろうな~と思いながら観たけど本当に良かった。観てから知ったけど、実話を基にして書かれたものらしく、それもまた衝撃。
・車両の脱輪と死亡事故がきっかけの話なので、本当に重いししんどい。それに加えてなかなか覆らない社会の在り方も描かれているので、キツいな~と思いながら話は進む。本当に残り15分くらいまで何も解決してなくて、それどころか「もう会社はおしまいだ」というところまで落ちてしまう。でも最後の最後で一気に解決したので安心した。
・出てくるおじさんたちがみんなカッコよくて良かった。主演の長瀬さん、悲哀に満ちててすごく良かった。でも何よりすごいなと思ったのは佐々木蔵之介さん。出番はそこまで多くなくて、10分も映ってないくらいなんだけどすごかった。この人やっぱりすごいなと思った。すごいしか言えない。全部持っていったような感じ。こんな短い時間でグッと掴まされる演技をするんだよなあ、この人…。
・財閥企業の闇を中小企業の社長が暴く!!と言ったら聞こえはいいけど、実際はなかなかうまくいかない。さっきも書いたけど残り15分くらいまで全然風向きが良くならない。現実だ…と思ってしまう。真実はなかなか明るみにならないし、大企業が小さな会社の声をなかなか聞いてはくれない。それどころか大企業の中でも反発の芽はことごとく摘まれる。警察には最初から悪者扱いされるし、もちろん被害者遺族の声もごもっともで。そりゃそうだよなぁ、被害者に頭下げながらも無実を訴えるって、被害者からしたら胸糞悪い以外の何物でもないよなぁ。
・ストーリーで雑味が無いなと思ったのは、世間からの心無い言葉がかけられるシーンがほとんどないこと。現実だったらネットで総叩き、社長や整備担当の個人情報流出しまくり、落書きとビラで嫌がらせ、マスコミ昼夜殺到などが絶対起きるけど、そういうシーンがほとんどない(子供がいじめられて掲示板ができるくらい?)だった。なのでストーリーに集中できて見やすいなと思った。けど、モデルになった事件の運送会社は廃業に追い込まれてしまったらしい。
・事件が解決しても、亡くなった人は戻ってこないし、会社的にはヤッタ~かもしれないけど素直に喜べない。虚無感はあるし、めでたしめでたしではない。それでも、何もかも分からず泣き寝入りして同じ事故が起き続けるのも絶対ダメなことで。勧善懲悪でスカッとはするけど複雑な気持ちになった。
・最後の、ディーンさんと長瀬さんが背中向けてそれぞれ歩き出すとこだけちょっとクサいなと思ったけど、それも含めて王道な物語で良かった。サザンの歌も良いんだよな。
No.00060『恋は雨上がりのように』
2018年上映/永井聡監督/製作国:日本
鑑賞日:2021/02/22
・これもずっと見たかったやつ。小松菜奈さんと大泉洋さんで爽やかな恋愛映画というのがなんか良いなと思って気になってた。ただそもそも恋愛映画(特に邦画の)が苦手なので、気になりつつ怯えつつという感じだった。
・小松菜奈さん演じる高校2年生の橘あきらはアキレス腱のケガで陸上の夢を絶たれてしまう。ある日偶然入ったファミレスで雨宿りしていたところ、大泉洋さん演じる店長・近藤に優しく声をかけられる。それがきっかけであきらは近藤のいるファミレスでアルバイトを始める。バツイチ子持ちで年の離れた近藤にあきらは恋心を抱いて、近藤に告白するが…という話。
・私は少しだけひねくれているので、邦画の恋愛映画を観ると「勝手にしろ!!」と思ってしまうし、その恋愛映画が大人と高校生がくっつく系のヤツだと「どさくさに紛れて未成年に手を出すな~~~!」と思ってしまい、どっちにしろストーリーに集中できなくなってしまう性格なのだが、この映画は全くそんなこと思わなくて済んだしとても面白くて、素直に感動出来て良かった。
・まず主演の2人がとにかく爽やかで良い。小松菜奈さんは元々大好きな女優さんの1人なので言わずもがな最高なんだけど、大泉洋さんもすごく良かった。この人こんなに爽やかでカッコいい人だったんだなと思った。役どころとしては「ヘコヘコした冴えないおじさん」なんだけど、冴えないおじさんというよりは、柔和なイケオジという感じ。ここまで「下世話な雰囲気」を消せるおじさんって現実だとほぼいないな、と思った。
・ストーリーは割と王道な感じで、主人公のあきらに近づくチャラい当て馬がいたり激昂してギャーッとなる友人がいたり、やたらと煽ってくるライバル的存在が現れたり、でもあきらは店長しか見えないし…という感じ。普段だったら性格上「もう見たくない」となるはずだが、この作品では素直にスルスル楽しめたのが自分でもビックリだった。
・ネタバレになってしまうけど、多分この作品を素直に楽しめたのは、店長の挙動のおかげだと思う。先程も書いたように私は、たとえそれが少女漫画だとしても、どさくさに紛れて未成年の主人公にくっつこうとする大人が本当に苦手なのだが、店長は絶対にそんなことをしない。あきらがグイグイ行けば行くほど店長は困ってしまう。それが本当に「正しさ」という感じで良かった。くっつかなかったとしても、大人側からの好意みたいなものが見えるだけでも無理なので、店長からはあきらに対して恋愛的な好意が一切見えないのが本当に良かった。そしてそこがますます大泉洋さんをかっこよく魅せるポイントだったとも思う。
・店長とあきらが図書館で会話するシーンもすごく良かった。店長が「こちらから本を勧めすぎるのは良くない。君を呼んでいる本がきっとこの図書館の中にあるはずだ」と言って、2人でいろんな書架を巡るところ。こんな爽やかなおじさん居ないだろ。
・ネタバレになるが、普通だったら失恋の悲しい結末になってしまうところを、最後まで爽やかに希望を抱かせるように終わるのが本当によくできてるなと思った。多分原作が良く出来た作品なんだろうなと思った。最後まであきらはかわいいし、店長は爽やかでカッコいい。いい映画だった。純粋な恋愛映画で初めてここまで楽しめたかもしれない。
今回は以上です。シンゴジラ面白かったな~。コンスタンティンとか20世紀少年も久しぶりに観て最高でした。またいろいろ観ようと思います。そろそろ映画館にも行きたいです。